見出し画像

「生きものがいる開発」が当たり前の社会へ〈後編〉 #11環境共生型賃貸住宅「鈴森village」

こんにちは。鈴森villageすずもりヴィレッジ広報チームです。
今回は、ランドスケープアーキテクトでスタジオテラ代表の石井秀幸さんのインタビューの後編をお届けします。

〈前編〉はこちらから。



「LEEDの思想に合っているか」が共通の判断基準


――鈴森villageの大きな特徴は、「LEED認証」の取得を目指してつくられたことです。ランドスケープをデザインする上で、どんな影響がありましたか?

石井 一番よかったのは、お施主さんとわれわれ設計者側が、LEEDによって目線を合わせられることでした。例えば植物でも、LEEDには「できるかぎり、在来種で地域に元からあった種を選びましょう」ということがうたわれています。

何を植えるか相談するときも、「LEEDに合っているかどうか」を共通の判断基準にして決められるので、お施主さんに受け入れられやすい。目線が合っていることは、とても大切なポイントだと思っています。設計時だけでなく、将来的にわれわれの手を離れて、お施主さんが管理するようになったとしても、同じ判断ができるからです。

スタジオテラ代表の石井秀幸さん。
新刊『地域を変えるランドスケープ はみだしの設計思考』(オーム社)が好評発売中

――雨水を植栽に行き渡らせる「雨水灌水うすいかんすいシステム」を導入したのも、LEED案件だったからですか?

石井 「環境共生」といったときに、何ができるのかな、とは前から考えていました。緑の普及はいいことだけれど、例えば「屋上緑化」では大量の水と電気を使うし、果たしてそれが健全なのか。僕の中でそれはまだ解決していない問題でした。どこかで、もう少し自然の力を借りながら循環したり、成長したりできるのではないか、という思いがあったのです。

今回、屋根の水を行き渡らせて緑を育てるというのは、「LEEDの思想に合った環境共生住宅をつくろう」という鈴森さんの強い思いがあったからこそ提案し、実現できたことでした。普通の不動産オーナーは、そこまで環境共生の意義を理解し、投資をして、社会へメッセージを発信しようとは思わないでしょう。

鈴森villageでは、竣工後の今も雨水灌水システムのチューニングを続けていますが、それも「きちんと維持管理しよう」というオーナーさんの覚悟があるからこそ、僕らも一緒に関わっていけるんです。

――竣工後も維持管理に関与しているんですね。

石井 幸い、3年間で契約をいただいているので、オーナーさんや造園屋さんとも相談しながら様子を見ていきます。想定では、3年後には小径の上空を緑が天蓋てんがいのように覆っているはずです。

ここの敷地は微妙に勾配があるうえ、建物の外構が入り組んでいるので、水と光の条件に応じて東西南北の場所ごとに、細かくグルーピングして植栽を変えています。もっとも、全体の調和を大前提にしていますから、見た目には植物の違いはあまり気づかれないかもしれません。

例えば、水が集まる低いところには水が好きな植物を植えていますが、それでも水が多すぎて弱ってしまったり、光が当たりすぎて蒸れてしまったり、というケースもある。そういう植物の「勝ち負け」を見極めながら、造園屋さんと「ここは少し切りすぎでは?」とか、逆に「ここはもう少し風通しを良くしたいです」と話し合って管理しています。

場所ごとに適した植物が植わっている鈴森village

鳥や蝶がやって来て感受性が豊かになる


――石井さんご自身は、LEEDに挑戦してみてどんな感想をお持ちでしょうか。

石井 プロジェクトを通じて「地域に貢献する」ということに、真正面から取り組めたのは、得難い経験でした。通常は、設計側からの提案に地域貢献を盛り込むことがほとんどですが、今回はオーナーである鈴森さんのほうから先に意思表示をされた形でしたから。

われわれはそれを受けて、「賃貸住宅で、地域にオープンにする形で、どんな地域貢献ができるだろうか」と考えればよかった。「鳥が来て、蝶も飛んで来て、近所の人も出入りして、感受性が豊かになる」というある意味で理想的な計画をやりきれた、という思いです。

これからもし、LEEDや環境共生型住宅に挑戦したいというオーナーさんが現れたら、まずはここに来て体感してほしい。こういう、家の中も外も快適な好事例ができたことが、次のステップにつながる気がしています。

LEEDのいいところは、建物単体ではなく、地域や地球にどう貢献していくかという視点で考えられている点です。だったら、民間の一事業主だけが多大な負担を背負うのではなく、行政や地域のサポートが受けられるような仕組みがあればいいのでは、と思います。

「お施主さんがLEEDを志向したからこそ、地域貢献に真正面から取り組めた」という石井さん

境界や時間の概念を超越した空間


――石井さんがランドスケープアーキテクトになろうと思ったきっかけは?

石井 空間をつくる仕事に就きたいと思ったのは、中学生の頃ですね。当時、埋立地のきわの団地に住んでいて、近くに地層が露出しているところがありました。それを見て、「地層が刻まれていくように、人工物である団地も、自分と同じスピードで成長しているんだ」と感じたんです。それで、自分も「人が育つのと寄り添うようなまち」をすごくつくりたくなりました。

成長する場ってどういうことだろう? と思いながら、建築の勉強をしていたのですが、そのうちに「もう少しオープンに、建物単体だけではなく面的に、自然やまちにあるいろいろな力を借りたら、まちや建物がもっと魅力的になるんじゃないか」と思うようになりました。じゃあ、その「力」って一体なんだろう? というのが、ずっと関心事だったんです。

――建築からランドスケープデザインへと興味が移っていったんですね。

石井 境界というのは人間がつくったもので、鳥や生きものには関係ない。光や風にも境界はありません。どうやったら、境界や時間を超えた空間をつくれるのか。それを考えるのが、すごく楽しかった。それで、都市計画で有名な、オランダのベルラーヘ・インスティテュートに留学しました。

よく知られているように、オランダは人間が住むために、湾の水を50年もかかって風車で汲み出してまちをつくりました。普通は、諦めるじゃないですか。それをなんとか工夫して、住めるようにしたんです。

大金をかけて機械を入れて、自然を破壊しながら土地の履歴をリセットしちゃう、というやり方ではなくて、自然と向き合い、長い時間をかけて少しずつ変えていく。僕もオランダへ行って、そういう長いスパンでものごとを見られるようになりました。

オランダ留学では、自然と一体となったまちなみを調査しにスペインを訪れたことも

人と生きものを至近距離に近づけたい


――今後、やってみたい仕事はどんなことですか?

石井 やりたいことはたくさんありますが、僕らの仕事は結局、自分が生きているうちにゴールまでは見届けられません。だから近いうちに、手掛けた仕事を次の世代に受け継いでいってくれる人を探さなきゃな、とは思っています。

そのうえで、やってみたいのは、「生きものと人間がごく近い距離感でいられる状況」をつくること。人間は本来、そういう環境にいるべきではないのか、と思っているからです。

例えば東京都心でも、皇居や明治神宮のように、生きものがたくさん棲んでいるスポットがいくつかありますね。そういう場所がもっと身近にあればいいな、と思うんです。

緑や生きものが当たり前にある環境を体験した人は、そうではない環境に違和感を感じるようになります。その感覚を市民の立場でもいいし、お施主さんの立場でもいいからフィードバックしてもらえれば、人が集う公共性のある空間は、今よりずっと良くなるはずです。

「人と生きものの関係が大事だよね」というのが人々の当たり前になって、鳥や虫の視点で話をしながら開発ができる。そういう人を増やすのは、僕の中では、すごくやってみたいこと。もっと何か、チャレンジしたいと思っています。その意味でも、鈴森villageでの経験が、第一歩になると思っています。

緑や生きものが当たり前にある鈴森villageの暮らし

まとめ

施主をはじめ関係者全員がLEEDの指標を共有したことで、人と緑と生きものが身近な環境をつくり出すことができた――。石井さんのお話からは、これまで経済性が優先されがちだった賃貸住宅の開発に、鈴森villageのプロジェクトが新たな価値観を提示したことを感じます。

人が幸せで、地球環境にもいい。長い時間軸で考えたとき、今を生きる私たちの選択は、未来の人々の生活空間のあり方にもつながっているのかもしれません。

鈴森villageについては以下の過去記事でも紹介していますので、ぜひ併せてご覧ください!
#1 間もなく完成! 緑豊かで一年中快適な住まい
#2 本当にいい、住み続けたい賃貸住宅とは?〈前編〉
#3 本当にいい、住み続けたい賃貸住宅とは?〈後編〉
#4 私たちがLEED認証にこだわる理由とその魅力〈前編〉
#5 私たちがLEED認証にこだわる理由とその魅力〈後編〉
#6 絶賛入居者募集中のヴィレッジ内を探検!
#7 池袋へ14分、和光市でゆったり暮らそう!
#8 行政と地主の連携で持続可能なまちづくり〈前編〉
#9 行政と地主の連携で持続可能なまちづくり〈後編〉
#10 「生きものがいる開発」が当たり前の社会へ〈前編〉

【物件および内覧に関するお問い合わせ】
リゾン和光支店
wako@lizon.co.jp
東京R不動産
https://www.realtokyoestate.co.jp/estate.php?n=17060
【本件に関する報道関係者のお問い合わせ】
鈴森village広報チーム
press.svpj2022@gmail.com

#賃貸住宅 #環境共生型 #SDGs #LEED認証 #和光市 #緑 #暮らし #家族 #駅近 #新生活様式