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【エッセイ】好きな文章のこと



まず、大学で日本文学を専攻しました


私が「好きな作家」と認識できるほど読み込んだ作家さんは少ないのですが、大学時代にうっかり日本文学を専攻したこと、研究室に源氏物語の権威の先生がいたことから、卒業論文のテーマには(なぜか)枕草子を選びました。

その時の記憶が曖昧なのですが、枕草子に書かれている価値観は「意外と共感できるかも」と思うことが多かったです。あれいいよね、これいいよね、そうだよね、の繰り返し。

※普段大河ドラマは見ませんが、今年は「光る君へ」を頑張ってみています。(まだ一回だけだけど)。


読書は世界を旅する方法だと思う

山本文緒さんのこと

その頃、何気なく手に取った作品は、のちの直木賞作家「山本文緒」さんの「みんないってしまう」。短編集で、一つひとつの話はパッと見た感じとてもカジュアルなのに、深く、痛みを伴いながらもじんわりと心を満たす作品ばかり。

それから取り憑かれたように「きっと、君は泣く」とか、「あなたには帰る家がある」(少し前にドラマ化)とか、「群青の夜の羽毛布」だとかを買って読み漁りました。2021年に亡くなる直前、出版された「ばにら様」まで、だいたい全てを読んだのですが、そんなふうに触れ続けた作家さんはあまりいないです。

難しい表現は使わないし、でも誰でも書ける文章ではないし、深い思慮の奥に潜む澱のようなものをベールで隠しながら明るく語るその先に、かすかな希望。

そのスタンスがとても好きでした。

つい最近も、「自転しながら公転する」という作品がドラマ化されていました(観ていないのですが)。今も存在が続いていることが嬉しいです。

秋に咲いていた金木犀

女性作家を読む

思い返すと、女性作家さんの本を好んで読んでいました。

私が手に取った記憶があるのは、江國香織さん、山田詠美さん、恩田陸さん、角田光代さん、村山由佳さん、などなど。

文章を読みながら、息継ぎのタイミングがわからないなんてことがなく、するするとお腹に落ちていく価値観に触れるたびに心地よい。

そんな感覚で本を読む楽しさを教えてもらった記憶があります。

多分、今自分が文字を連ねる基本はその読書から学んだはず。どの表現がどこから来たのかはまったくわかりませんが。

江國香織さんの「神様のボート」を読みながら「静かな狂気」という価値観を覚え、山田詠美さんの「ぼくは勉強ができない」だとか「ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー」だとかを読んで気怠い雰囲気の中の色気を想像していた。ような気がします。たぶん。


かりんの実

男性作家も読みました


10代の頃、読書家な友人は村上龍だとか村上春樹だとか、その辺を読んでいたので、真似して私も村上龍の「半島を出よ」とか「コインロッカー・ベイビーズ」だとかを読み、村上春樹の「国境の南 太陽の西」や「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」などに触れました。

「ねじまき鳥クロニクル」を読んで、ノモンハン事件かなにかのシーンが鮮烈すぎて、気持ちが悪くなったような。

でも男性作家さんで一番たくさん触れたのは、時代を遡って太宰治でした。「富嶽百景」というエッセイが高校の教科書に載っていて、そこから「人間失格」と「斜陽」の世界に入り、処女作の「晩年」から読めそうなものを選んでいった記憶。

あとは、本をよく読む人が手にしているものを盗み見ては、色々なものに手を出しました。

宮本輝の川三部作とか、東ヨーロッパに関する小説、宮部みゆきのあれこれ、小野不由美の十二国記。伊坂幸太郎の死神の精度とかオーデュポンの祈りとか。

傾向も何もなく、その時目についたあれこれを。


これは調べて書く仕事のために一生懸命読んだ資料

何が言いたいかというと

子どもを産み、自由な時間が限りなく削られてから、読書量が激減してきました。

そろそろ、補給が必要です。

言葉を紡ぐためには材料が必要。

この人の文章がいいな、ずっと読んでいたいなと思える人のテキストを読んで、心を震わせ、吸収し、価値観を育てる作業が足りていない。

授乳しながらスマホでブログを読んでいた数年前、まだブログが生きていたので、ブログがきっかけで好きになったライターさんが何人かいました。でも今その人たちは主戦場をインスタやWEBメディアに移してしまって、編集長とかまで出世しちゃって「あの頃、プライベートのネタも混ぜながら長文で語ってくれた、面白おかしい人生の1ページ」を書かなくなってしまったので。

なんかこう、価値観を学びながら息をするように読めるもの。

それを探しています。ライターの一田憲子さんの著書はいくつか、エッセイストの平松洋子さんの食エッセイ(取材の深度がやばい)もいくつか、それらは手軽に読めて勉強になるので手に取ることが多いです。

あとはライターの大先輩から「藤岡陽子さんがおすすめ」と聞いて小説を買い。

やっぱり昔の人の書いたものを読まなきゃと奮い立ち、幸田露伴と幸田文親子の何かを読みかけ(短編一個ずつで放置)、突然小林秀雄の全集を読もうとして無理で「考えるヒント」を借りて一冊読み(でも全然意味がわからない)、あれこれ試しては挫折しての繰り返し。


20歳の頃のように、脳に水が染み込むみたいに読むのとはちょっと違う感覚になってきましたが。

好きな文章を探して、今も、アンテナを貼り続けています。





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