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【ライターの仕事】取材相手の魅力の掘り下げ方を考える。ただ自分のことはわからん。


住宅会社さんを取材することが多いのですが。

「最近厳しい」という言葉をよく耳にします。コロナ禍から資材価格が跳ね上がり、以前の価格ではもう新築ができません。

総じて300から400万前後は上がる…と聞いてからまた時間が過ぎたので、更なる値上げが始まっているはず。

「住宅ローンが通らない」という話も多く、これから新築は富裕層の特権になるのかも。だからリノベーションというキーワードを頻繁に目にするようになりました。

とはいえ、新築の方が利益率は高いし、リノベより新築を取りたいのが本音だと思います。では、難しい環境の中、新築を取るにはどうしたら? と皆さん悩んでいる最中。

「うちの魅力」は数時間の取材では出てこない難問

そんな最近。

会社紹介ページの打合せをするために、ある会社の社長さんからヒアリングをしていました。

「会社としてはどんな家でも建てられるんだけど、打ち出し方が難しい。うちの魅力は何ですかね?」

こういう話題、よく直面します。

正直、「1時間の取材で出てくる答えではない」ことは確か。

そのために莫大なコストをかけてコンサルを入れ、恐ろしいほど時間をかけてコンセプトづくりをしている人々がいるのだと想像します。


公式サイト、インスタ、動画。技術を駆使する前に考えてほしいこと

うちの魅力ってなんだろう?

そんな状態でありながら、社長さんは自社サイトにスタッフインタビュー動画を載せていました。

パッと見、動画の質はとてもいい。

目線外しの自然光を駆使したカッコいい動画で、声もいいし、喋り方もナチュラル。いいなーと思いつつ、動画を視聴して心が止まる。喋り出しは以下のセリフでした。

「うちの魅力はまず、コストカット。仕入れを工夫しているので(以下続く)」。

いやいやいやいやいや。

いやいやいやいやいやいやいや。

インタビューでも、社長さんは「ローコストは困る、下請けでは儲からないから自社で直接受ける案件を増やしたい」そう語っていたのに、動画として世に出すコンセプト紹介のセリフが「コストカット」では、違うと思うの。


自分を客観視するのは難しい、だから対話を繰り返すしかない


その日はザーっと話を聞いて、あとは私の方でまとめてみますという流れになったのですが。

私なりに感じたのは、

「手段を目的と履き違えてしまう」

ことが多いなということ。

コストカットも、国産材を使うことも、手段であって目的ではありません。

目的は
「誰にどんなメリットを感じてほしいか」
「自分たちが建てた家でどんな風に生きてほしいか」
なのではないかな、と。

そこをノープランにしたまま突き進もうとして、カッコいい動画を撮ってみようとなり、出てきた動画は「どのスタッフ動画も、お施主さんコメント動画も、安い金額で無理を聞いてくれたことだけを話している」という印象でした。

伝えたいのはそこでいいのかどうか。
そもそも伝えたいことを考えないまま進むから、道に迷ってしまうのではないか。


ただ、自分を振り返り。

自分を客観視して、自己の魅力を掘り下げることほど難しいことはないと思います。

あなたはどんな人ですか。
あなたの得意分野はなんですか?
どういう仕事をお願いするといいですか?

さて、それを聞かれて自分の情報を整理して、きちんと答えられる人々を尊敬したい。自分の魅力ほど認知しにくいものはありません。

私の話になりますが、長くライターをやっていることで仕事仲間やクライアントから「私の評価」をたまに聞くことがあり、それを総合して「そうだったのか!」と改めて驚くことばかりです。

自分の仕事に対する評価でいくと、
①丁寧にやってくれる(=時間がかかるという面もある)
②話しやすい聞き方をしてくれる(=たまに早く話を切り上るべき状況ながらウンウン聞いてるから話が終わらない逆境にも遭遇する)
③言葉遣いがユニーク(=これは最近言われたこと。話し言葉も特徴的らしい)
④文字数チェックとかまで細かい(=あまりに修正を入れたがるので嫌がられる節もある)

ということを聞いたことがあり、強みと弱みは表裏一体で、ただの特徴だなと思ったことがあります。

最も嫌いで苦手だったはずの人物インタビューを褒められることが多くなり、「私、もしかして実はインタビューが上手いのかもしれない」という認識を一瞬得たものの、奢りは成長を止めるだけだと感じ、封印。

自分は「できない子」だと思って、下準備を頑張りながら、もがくことを好む性質を持っているようです。

数時間のインタビューでコンセプトをまとめるにあたり


じゃあ、クライアントのことをどう分析すればいいかというと。

対話の中から感じた「私から見た特徴」をほじくり返すしかない。特徴の中からさらに、広告として売り出せる部分を言語化しようと頑張ります。

でもちゃんとコンサルを入れて魅力を捻り出している企業さんや、きちんとマーケティングを勉強されている人と。
自分たちだけでなんとなく突き進んでいる企業さんとでは、見えてくる特徴が違ってしまう。

「なんでもできるよ」はどこも同じで、「なんでもできる中から、どれをやるか?」が多分重要。

※それはライターもきっと同じ。

めちゃくちゃ難しいのですが、でも今ある情報を総動員して、どうにかして手段ではない魅力を捻り出すしかない。

本当は。

自然素材の内装とか、国産材の構造とか、断熱とか気密とかキーワード自体に大きな意味はなく、
「それを使って、あなたがずーっと快適に生きてほしい」とか、
「家にお金を使いすぎず、豊かに暮らしてほしい」とか、
そういう次なる一歩のコンセプトが欲しいところ。

私はインタビューで、ここまでのことを掘り下げられることを次の目標にしたいと感じています。その場で答えがでなくても、「そういうことまで考えたいよね」って思ってもらえるような。

「ところで、あなたの魅力は、なんですか?」




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