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高尾歳時記 2024年3月2日

本日の天気予報によると、日本列島は西高東低の気圧配置となり、真冬に戻ったような天気、すなわち北陸や東北の日本海側では降雪、関東の平野部はカラッとした晴天、という概況でした。

たしかに概ねそのような傾向だったのですが、関東平野部に関しては、朝早い時間は真冬らしい抜けるような晴天になったものの、正午ぐらいから空は徐々に雲に覆われ、そのあとはずっと曇り空になりました。

私は気象予報士などの有資格者ではないどころか、体系的に教育を受けたこともなければ職業に関係することも全くない、要はただのシロウトですが、山に行く人間として気象には興味津々で、毎日天気図を眺めては予報と実績をにらめっこするのを趣味にしています。趣味とはいえ、アルプス縦走など、高い山に行く時は自分の安全に直結するので、それなりに真剣に考えています。

今日は予想が難しい日でした。天気はやればやるほどわからないことがどんどん出てきますが、そのうちのひとつが「気圧の谷」というやつです。これが本当に厄介で、「今日はピーカンのはず!」と意気揚々と出かけたのに、空はドーンと厚い曇り空、みたいな残念な日があるときは、かなり高い確率でこの気圧の谷が関係しているんですね。

今日はその典型でした。早朝は抜けるような青空。往路の電車からは雲ひとつない完璧な富士山の眺望を拝むことができたのですが、山頂に到着したころには雲が湧いてきて、最後のピークである高尾山に達した時には、富士山は雲に隠れて見えなくなっていました。

本日正午の天気図です。西高東低の気圧配置ですが、関東南部に気圧の谷がかかっています。

本日(2024年3月2日)の天気図。(注1)

いきなりそんなこといわれてもわかりませんよね。谷の位置を書き入れてみました。紫色の線で示してみましたが、この領域をよく見ると、東の方にある低気圧を中心として波紋のような丸い円を描いている等圧線が向きを変えて、西の方に張り出しています。つまり、この領域は低気圧が高気圧域に張り出し、雲が流れ込みやすくなっています。

紫色の線は筆者による。(注1)

同時刻の、気象衛星ひまわりからの映像です。北海道の太平洋沖に天気図にある移動性低気圧の中心が、台風の目のように黒い丸として見えます。この低気圧の目から太平洋南の海上に寒冷前線が伸びて、それに伴う雲がたなびいています。この雲の北側に気圧の谷があり、そこに流れ込んだ雲が南関東にかかっているのがわかります。

本日(2024年3月2日)正午の、気象衛星ひまわりからの雲の映像(注1)。北海道の太平洋沖に天気図にある移動性低気圧の中心、台風の目のようなぽっかりとした黒い丸があり、そこから前線に沿って雲がたなびいている。その低気圧に伴う太平洋南の海上に伸びている寒冷前線に沿って発生した雲の北側に気圧の谷があり、流れ込んだ雲が南関東にかかっている。

同じ西高東低でも、このように等圧線がまっすぐで気圧の谷がない日、南関東は文句なしの晴天になります。

2024年1月16日午前9時の天気図(注1)。本州にかかる等圧線がまっすぐで、気圧の「谷」がない。事実この日は終日抜けるような青空の晴天でした。

天気って本当に難しい。

高尾では、着実に春の足音が聞こえてきています。日影沢では、スミレの仲間では一番に咲くアオイスミレが開花していました。世界で最初に高尾のスミレの開花を見つけてしまったのではないかと(何の証拠もありません)小躍りしてしまいました。そのほか、ネコノメソウ各種、そして、キクザキイチゲもお目覚めです。

お花の多いところを巡ってきました。

高尾の梅はピークを迎えつつあります。
様々な色の梅が揃って見事です。
早朝の高尾は晴れ。青空に白い梅花が映えます。
紅色の梅花も青空に映えます。いいですね。
小仏関所跡のサンシュユは満開。こちらも青空に映えます。
小仏川の河原を歩いていたら、あっ!
可愛らしいコジュケイのつがいが仲睦まじく行進中。慌ててカメラを取り出して撮影したのですが、思いっきり逆光でダメでした…。
ジャノヒゲの実。美しいラピスラズリブルー。
これはニリンソウの葉。高尾には大規模なニリンソウの群生地が日影沢と西山峠の二ヶ所にあり、それはそれは見事です。今年も楽しみ。
春の高尾では一番乗りに咲く花のひとつ、ヤマネコノメ。
こちらも、高尾では一番乗りのひとつ、ヨゴレネコノメ。
あっ!見つけてしまいました。今年お初のスミレ。高尾では一番最初に咲くスミレの仲間、アオイスミレです。
嬉しいです!高尾山は日本有数のスミレの生息地。スミレの山といっても過言ではありません。今年も楽しみ!
日影林道から、相模湾方面。雲が徐々に増えてきました。
江ノ島のシルエットは綺麗に見えました。
(小仏)城山の山頂に到着。往路の電車の車窓からは雲ひとつない青空でしたが、徐々に雲が増えてきました。


城山山頂から、都心方面。雲は若干多めでしたが、都心のビル群や房総半島ははっきりと見えました。
一丁平の展望台から、富士山方面。先ほどより雲が増えてきています。
高尾山山頂に到着。富士山は雲に完全に覆われて、見えなくなってしまいました。
おなじく高尾山山頂から、丹沢主脈方面の眺望。雲は多めですが、うっすらと雪が積もった丹沢主脈と空の雲の紋様が、景色を彩ってくれました。
同じく高尾山山頂から。西の方は気圧の谷の影響がなく、冠雪した南アルプスの稜線がはっきりと見えました。
高尾山6号路のハナネコノメが開花していました。
(本日の写真ではありません)
ハナネコノメは、春の高尾を代表する花。その可愛い姿で大人気です。昨年3月中旬撮影。
ユリワサビも高尾に春の訪れを告げる花。
あっ!キクザキイチゲが開花していますね!
キクザキイチゲの見頃は短い。おそらく向こう二週間ほどでしょう。
下山後高尾山口駅に向かって歩いていたら、石垣にタチツボスミレが咲いていました。
植物は自ら動くことはないのに、なぜこのように石垣の途中から芽吹くのでしょう。
スミレの種はアリが好む糖に包まれています。アリは種を見つけると、甘いところをなめながら移動し、糖がなくなったところでポイっと種を捨てます。捨てたところがこういう石垣の隙間だったりすると、スミレはそこから芽吹きます。これはスミレの戦略で、こういうところは他にライバルがいないので水分や太陽光を独占することで、子孫を残す確率があがるのだそうです。


(注1)
気象庁HP 利用規約に基づく表示

出典:気象庁HP 各種データ・資料 過去の天気図

出典:気象庁HP 防災情報 気象衛星ひまわり


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