悠星 Yusei

心打たれる絶景や自然の風景を求めて山を彷徨っている者です。 1974年生まれ♂。幼い…

悠星 Yusei

心打たれる絶景や自然の風景を求めて山を彷徨っている者です。 1974年生まれ♂。幼いときは東京都民の心のオアシス高尾山のお膝元で育ち、その後は海外で長年暮らしたのち、現在は東京に住んでいます。ホームマウンテンの高尾山に、南北アルプスを縦走するための体力維持も兼ねて通っています。

マガジン

  • 高尾山ノスタルジア

    東京都南西の端、神奈川県にその境を接し、東京都心の程近くにありながら多くの自然が残されている高尾山。いにしえより人の往来があったことから、様々な資料が残されています。記録に残る古き良き高尾を辿ります。

  • 高尾歳時記

    東京近郊にありながら自然が残され、悠久の歴史の痕跡とロマンが随所にあふれる、憩いの空間高尾山。その年間登山者数は世界一。世界一には世界一の理由があります。その一年を綴ります。

  • 山岳縦走シリーズ

    登山には様々なジャンルがありますが、その中でも、峰々をつないでいく縦走登山は総合力が求められる、挑戦的なジャンル。しかし、剥き出しの自然に生身で飛び込み、地球と一体になる体験は、他では得難いもの。非日常の世界を綴ります。

最近の記事

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自己紹介 Who I am

心打たれる絶景、山に咲く花々、野鳥や森の動物との出会い、そして何よりも下山後の温泉とビールを求めて山を彷徨っている者です。 I am in love with mountaineering, questing for magnificent views, scenery and flowers that strike my mind, also enjoying encounters with birds and little animals in forests as w

    • 高尾山ノスタルジア No.16:高尾山薬王院(1/2)

      一礼し、四天王門をくぐるといよいよ薬王院の境内へと足を踏み入れます。 安政2年(1855)の髙松勘四郎による「武州髙尾山畧繪圖」(資料①)ならびに「八王子名勝志」に描かれた当時の伽藍の絵図(資料②)をよくみると、山門を過ぎて進んだところ左手に、五重塔が描かれています。以下、「八王子名勝志」にある説明(資料③)を引きます。 (表示できない文字は現代文字に置き換え) :-:-:-:-:-:-:-:-:-:-: 宝篋五重印塔 空輪まで二丈四方高欄附四隅に四天王の立像あり文化九

      • 高尾歳時記 2024年4月20日

        西山峠のニリンソウの大群落が開花のピークを迎えています。 ニリンソウはその名のとおり、一株に二輪の花をつけます。花期をできるだけ長くして受粉の確率をあげるため、まず一輪目が開花し、そのあと遅れて二輪目が開花します。そして、二輪目が終わりを迎えると葉は急速に朽ちていき、一ヶ月もするとニリンソウは跡形もなく地上から消えてしまいます。 現在ほとんどの株が二輪をつけていて、一部は一輪目が終わっており、葉が朽ち始めている株もありますので、ピークを過ぎ終息に向かいつつあるところです。

        • 高尾山ノスタルジア No.15:浄心門から薬王院へ

          日本の町の成り立ちには城下町や宿場町などいくつかのパターンがありますが、そのうちのひとつに、門前町があります。門前町は、伽藍の門前につながる表参道沿いに参拝者を迎えもてなす宿場や商業地が発達することで形成されます。お伊勢さんや金毘羅さんがそうですね。薬王院有喜寺においては、表参道(1号路)の起点である清滝周辺にまず門前町が形成されましたが、近代、高尾山ケーブルカーの開業に伴い霞台も商業開発されます。そしてその先浄心門までは高尾山サル園などの施設が続き、世俗的な雰囲気です。

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        • 高尾山ノスタルジア
          16本
        • 高尾歳時記
          63本
        • 山岳縦走シリーズ
          13本

        記事

          高尾山ノスタルジア No.14:たこスギ

          霞台から山頂方面に1号路を進み、サル園をちょっと過ぎたところ、左手に存在感抜群の杉の巨木があります。 この杉は「樹高約30メートル、目通り約4メートル、樹齢は300年とも500年ともいわれる(*1)」巨木で、「たこスギ」という名が付けられています。 以下、八王子市公式HPの説明文を引きます(*1)。 「たこスギという名前は、露出した根の形がタコの足に似ていることから名付けられました。 どのようにしてこのような形になったのかは明らかになっていませんが、薬王院への参道が今の

          高尾山ノスタルジア No.14:たこスギ

          高尾歳時記 2024年4月11日

          西山峠のニリンソウの大群落が咲きそろってきました。 昨年はニリンソウに限らず花の開花のすすみが例年より早く、去年の今頃には見頃を迎えていましたが、現在の開花状況は七割ほど。ここまで来ると、気温と天候次第にはなりますが、見頃は間近です。 ニリンソウはその名のとおり、一株に二輪の花をつけます。多くの株は、まず最初の花をつけたあと、遅れてもうひとつの花を咲かせます。二輪が同時に開花しているタイミングに運良くあたると、夢のような絶景になります。 ドンピシャのタイミングを予想する

          高尾歳時記 2024年4月11日

          高尾山ノスタルジア No.13:表参道登山口から霞台へ(2/2)

          「八王子名勝志」にある「七曲」の説明を読むと、おもしろいことが書いてあります(資料①)。以下に引きます。 :-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-: 七曲 古瀑布より金毘羅物見䑓迄の坂路をいふ。左に琵琶の瀑布道あり :-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:-: これは、進行方向向かって左の方に琵琶滝への道があるという(つまり、左方向に琵琶滝への道が見えるという……地形を観察するに、七曲から見えたとはとても思えませんが)単なる相対的な位置関係の説明なのか、それとも、七

          高尾山ノスタルジア No.13:表参道登山口から霞台へ(2/2)

          高尾歳時記 2024年4月7日

          先日4月7日木曜日は、二十四節気の清明。二十四節気のなかでは、「啓蟄」と同じぐらい難しいことばです。なにせ、聞いてもピンとこないからです。 この「清明」ですが、季節感の説明においては、天明7年(1787)に出版された太玄斎(松平頼救)著「こよみ便覧」からの引用が多いようです。 国立国会図書館収蔵の「こよみ便覧」から引きます。原文縦書き。踊り字はかなに置き換え(注1)。 万物はつして清浄明潔なれバ此芽は何の草としれる也 そのうえで、「清浄明潔」を略したのが、清明という語

          高尾歳時記 2024年4月7日

          高尾山ノスタルジア No.12:表参道登山口から霞台へ(1/2)

          昭和2年(1927)の高尾山ケーブルカー開業からまもない頃と推定される絵葉書に、ケーブルカー山麓駅(清滝駅)前の当時の様子の写真が残っています(資料①)。 駅前広場には立派な門。頭上には「登山鐵道乗場」と掲げられ、木に隠れて見えませんが別の資料によると左の柱には「髙尾登山鐵道株式會社」、そして、右の柱には「鐵道テハ十分間徒歩テハ一時間」とあります。そして運賃の掲示もあり、「賃金 片道 金 貳十五銭 往復 金 四十五銭」とあります。往復切符を買うと、5銭割引なのですね。 当

          高尾山ノスタルジア No.12:表参道登山口から霞台へ(1/2)

          高尾歳時記 2024年3月30日

          昨日3月29日、東京では桜の開花が発表されました。 NHKの報道によると、今年の東京のサクラの開花発表は平年より5日、統計を取り始めてから最も早かった去年(2023年)より15日それぞれ遅く、また、2013年以降で最も遅いとのことです(*1)。今年は3月に入ってから寒い日が続きましたので、桜の開花はだいぶ遅れました。 高尾山ケーブルカー山麓駅(清滝駅)前のソメイヨシノの木も開花しています。開花状況はまだ咲き始めで、1〜2分咲き程度。 満開まではあと一週間程度と思われます

          高尾歳時記 2024年3月30日

          高尾山ノスタルジア No.11:蛇滝(2/2)

          明治維新に伴い小仏関が廃止され、周辺の通行に制限がなくなったことで旧甲州街道の人の往来が増えると、現在裏高尾と呼ばれる地域はその風光明媚さが知られるようになり、急速に観光開発が進むことになります。 外山徹「高尾山歴史の散歩道」から引きます(原文縦書き)(*1) 「蛇滝口にある峯尾茶屋の宿泊人数の記録によると、記録の残る明治三三年(一九〇〇)以降では、同四四年(一九一〇)の蛇滝青竜堂の建立の年にピークがあり、しばらく後、青竜堂の改修を挟んだ大正六年(一九一七)から昭和二年(一

          高尾山ノスタルジア No.11:蛇滝(2/2)

          高尾歳時記 2024年3月23日

          高尾山では、タカオスミレが開花しています。 タカオスミレは、1928年植物学者中井猛之進博士が高尾山で発見し、ヒカゲスミレの変種として発表。そののち、変種ではなくヒカゲスミレの一品種、すなわち同種の色違いであると再分類されたものです(学名:Viola yezoensis var. yozoensis f.discolor (Nakai) Hiyama ex F. Maek = 「Nakai」は中井猛之進博士、「Hiyama」は桧山庫三氏)。 ヒカゲスミレは、その葉に鮮やか

          高尾歳時記 2024年3月23日

          高尾山ノスタルジア No.10:蛇滝(1/2)

          高尾山の行場としては琵琶滝がよく知られていますが、もう一つ、裏高尾にあるのが蛇滝です。 現在高尾山の表参道となっているのは、高尾橋から表参道商店街を通り1号路を登っていくルートです。高尾山にまつわるさまざまな記録は、この1号路が遅くとも江戸の後期には表参道であったことを前提としています(それより前は蛇滝道そして金毘羅道が表参道であったという仮説がある)。現在は国道20号線が大垂水峠の方へ通じているので違和感がないかもしれませんが、この道路が整備されたのは明治21年(1888

          高尾山ノスタルジア No.10:蛇滝(1/2)

          高尾歳時記 2024年3月17日

          高尾では、待ちに待ったスミレの開花が始まっています。 本日出会ったのは、アオイスミレ、タチツボスミレ、そしてヒナスミレ。 日本全国では、40種以上のスミレが生息していると言われていますが、高尾山ではそのうち少なくとも18種類の生息が記録されているとのこと(*1)。 スミレは同じ種でも姿形にバリエーションがあることと、交雑しやすい特徴があり、タチツボスミレひとつをとっても数種類の品種があります。ですので、数え方によって種類の数は変わってしまうのですが、上述の18は恐らく品

          高尾歳時記 2024年3月17日

          高尾山ノスタルジア No.9:鎮守の森高尾山

          高尾登山電鉄株式会社「高尾登山電鉄復活30年史」に、終戦直後の高尾山がどのような様子だったのかが描写されています。少し長いのですが、長く記憶に留めておきたいことがたくさん書いてあるので、以下に引きます(*1)。 :-:-:-:-:-:-:-:-:-:-:  戦後焼失した家屋の復興には、全国の山林から木材が切り出されているが、高尾山もその例外ではなかった。  地元の多くの人達は、戦時体制下の勤めから解放されたが、職もないまま山林に働く労働者として都会の混乱した生活とは裏腹に活

          高尾山ノスタルジア No.9:鎮守の森高尾山

          高尾歳時記 2024年3月9日

          高尾に春の到来を告げる代表的な花のひとつ、ハナネコノメが開花しました。 ユキノシタ科ネコノメソウ属(Saxifragaceae Chrysosplenium)に分類される植物の花は比較的地味なものが多いのですが、ハナネコノメは、清廉な白い衣に鮮やかに映える濃紅色の雄蕊を添えた、その妖精のような可憐な姿で大人気です。毎年、この花を楽しみにしている高尾山ファンの方々が大勢いらっしゃいます。この花びらのようにみえる白い部分は実は花びらではなく萼裂片で、本当の花はこの基部に潜んでお

          高尾歳時記 2024年3月9日