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第3章〜川越少年刑務所編 第3犯〜工場での時間はけっこう楽しい

前回の記事で分類後期に凸してって話を書きましたが、ここから先は他の囚人との絡みが増えていくのでその辺をちょっと書いていきたいと思う。

まず受刑者の中でも新米は「サラ」と呼ばれる。「真っさら」の略だ。
サラは基本的に先輩受刑者の奴隷みたいなもんだ。
しかし分類は全員が同期なのでそんな心配は要らない。
歳は違えどみんなシャバの同級生みたいなノリで会話する。
なんせほんの数ヶ月前までシャバにいたのだ。共通の知り合いだって普通にいる。境遇がおんなじだと囚人といえど普通に仲良くなってしまう。

前回センター生のお守り作成業務を書いたが、今回は休憩やランチタイム、そして入浴なんかについて書きたいと思う。

まずはランチだ。
平日は工場作業があるから工場にある食堂でランチを摂る
食事は炊場工場というところで一気に作られ、それが各工場や舎房に送られてくる。
センター工場ではここの掃夫が人数分取り分けてオヤジのチェックを経て俺らが食べるという流れだ。

ランチの時間になるとチャイムが鳴る。オヤジが「作業辞め!」と怒鳴り声を上げるので、全員ピタッと作業を辞める。
オヤジが各テーブル毎にウガイ手洗いに行かせたのち食堂の自分の席につく。
全員が着席したらオヤジの「頂きます!」の号令と共に一斉に食べ始める。

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食事は概ねこんな感じである。

ここで懲役ルールをひとつ
【全速力で食べろ】
ハッキリ言ってバカかと思うくらい全力で食べる。何が彼らをそうさせたのか分からないが、これは拘置所でもそうだったらしい。
俺は独居だったから分からないけど、雑居だった奴が言っていた。
とにかくみんな何かに取り憑かれたように食べてる。
そんな速度で食べるものだから5分程度で全員完食している。

全員が食べ終わったのをオヤジが確認し、「頂きました!」の号令で談笑時間が始まる。
注意点なのだが、決して「ごちそうさま」ではない。
で、ここからの10分は休憩時間ということでテレビがついている。この時はタモさんを見ることができていたので、みんな仲良くウキウキウォッチングしていたし、同じテーブルにいる6人とだけ自由に話していい時間なのだ。
たった10分だけど「人と話ができる」という時間にとんでもない喜びを感じた。
みんな初めましてなんだけど、みんなさすが受刑者というかなんというか、全然気遣いなしで罪状とか質問してくる。
俺がそのテーブル内で一番長い7年だったから、みんな自分で質問しといて勝手に結構気まずい感じになりやがった。
でもまあ馬鹿話に花が咲くのはみんな不安をどうにかして忘れたいんだと思った。
それだけ刑務所って普段触れてこなかったから先の想像ができないのよ。

そんな10分なんてあっという間に終わってまた退屈な作業に舞い戻るという毎日の繰り返し。

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しかしそんな1週間の内2回だけ入浴できる日がある。
冬季期間中の刑務所は尋常じゃないくらい寒いから、入浴のように体が温まる機会なんて滅多にない。
週に二回だけだったが、これには本当に助かった感がある。
まず入浴日は火曜日と金曜日である。工場で作業をしているとオヤジの「作業辞め!」の号令で全員作業を中断する。
オヤジの号令で順番に入浴準備のためにシャンプーなどを取りに行く。
入浴場は作業場のすぐ隣にあるので、その中の脱衣場で素っ裸になる。
そして入浴場内に入り、椅子と洗面器を持って空いているシャワー前に陣取る。髭を剃りたい奴は担当台が設けられているので、そこに行って自分の番号が書いてある髭剃りを入手する。
席に着いてもまだシャワーなどを出してはいけない。オヤジの号令があるまでジッと待機である。
入浴担当のオヤジの「入浴開始!」の号令でシャワーを出し、全身を素早く洗う。みんな驚くほどのスピードで全身を泡だてていく。どう洗ったら一番効率がいいか分かっているようだ。
そして我先に熱々の湯船に突っ込んでいく。
ちなみに入浴時は全員無言なのは当たり前で、顔もオヤジの方を向けていないといけない
ここからはオヤジの「3分前!」の号令がかかるまでジッと体を温めることに専念する。号令がかかったら湯船から出て体を拭き、椅子と洗面器を元の場所に戻して脱衣所に戻り着ていた服を着て整列する。

そして点呼を取ったのち、また作業に戻るわけである。

こんな毎日を2週間続けると、このセンター工場での分類後期が終わる。
いよいよ懲役として過ごす刑務所が決定するわけだ。

今回もお読み頂きありがとうございます。
次回からは川越少年刑務所での懲役生活に突入していきますので、良かったら引き続きお読み頂ければと思います。

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