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DIOと呼ばれた女

4
恋愛観がひどく歪んだ女の話。 それなりに大人な場面もあるのでご注意を。
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DIOと呼ばれた女(4)

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仕事の間、リョータのことが頭から離れなかった。

_あなたに会いたい…_

そう言ったさざ波のような声音が、リサを見つめる星空のような瞳が、幾度も現れては消えた。あんなふうに声をかけられた回数なんて、もう覚えていないほど経験してきたのに、どうして…どうして彼だけが、こんなにも…。

「最上、もう出れるかー?」

「!!」

不意に背後から声をかけられ、リサは思わず肩をビクっとさせて

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DIOと呼ばれた女(3)

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前回の「DIOと呼ばれた女」はこちら

「最上(もがみ)ちゃん、今月も契約件数1位じゃん。これで4か月連続だっけ?」

「ええ、まあ…」

「さっすが、俺が見込んだだけのことはあるよな!ははは!」

がしっと肩を掴んでくるこの上機嫌な上司—藤原シン―の扱いに、リサは手を焼いていた。リサに好意があって女として見ているのは明らかなのに、彼はそんな気などないふりをずっと続けていて、どっち

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DIOと呼ばれた女(2)

1話はこちら

物心つく頃には、何も言わなくても目の前の人間がどんな言葉を欲しているかわかるようになっていた。

リサが3歳のときに両親は離婚し、以降母子家庭で育った。母親は奔放なタイプで、何度も彼氏をつくっては別れ、リサに泣きつくのがお決まりのパターンだった。その経験が、否応なくリサを年齢以上に大人びさせていった。

小学生の頃には、同級生はもちろん教師までも、ほとんどリサの思う通りに動かせるよ

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DIOと呼ばれた女(1)

「お前がいないと…ッ、もう生きていけないんだよ…!」

(またこのセリフか……)

駅前の往来ではばかりもなく泣いてすがりつく男を前に、リサはもう何度目かの既視感を覚えていた。恋の終わりは、いつもこうなる。

俗な好奇心でいっぱいの視線が、ちらちらと遠巻きにふたりを盗み見ていく。いつからだろう。この男のことを愛せなくなっていたのは。強がってるくせに本当は弱くて甘えんぼなところがかわいい、と思ってい

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