Jolyne

思考の海を泳ぐだけのnote。 主に、恋愛・人生・その他思ったことについて語ります。 日頃書いてるブログはこちら▶︎『星見る囚人』(https://www.prisoner-lookinstars.net)

『トンネル』―帰りしな

「…さっきのじーさん、何やってん……」

止まった車のなかで、サトシがつぶやく。みんな思っていることだったが、誰も応えられるはずもない。放心状態だった。

しばらく沈黙が続いた。やがて、ハルが涙声でつぶやく。

「あのトンネル…なんかわからへんけど…やばい気配がいっぱいしてた…トンネル入ったときから、ずっと見られてた……車のなかに入ろうとしてて…」

それ以上は言葉にならないのか、ハルは押し黙って

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『トンネル』―行きし

この季節になるといつも思い出す。
私が大学3年生だったころ、バイトのみんなで行った肝試しのことを。

当時のバイト先で、男女六人で仲が良かった。
私、バンギャのハル、かわいい系のユミ、インテリのケン、野球好きのユウ、お調子者のサトシの六人で過ごすことが多かった。春には花見に行き、夏にはビアガーデン、秋はフットサル、冬はスノボに行くのが恒例。
それ以外にも、仕事終わりにはしょっちゅう飲みに行って、大

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忘れえぬ傷2 少女から悪魔へ

つづき。

そして家を出た

家になるべくいたくなくて、遠くの高校へ進んだ。

高校生になってから、母は彼氏と別れた。お金のことで揉めている様子だったから、きっとそれが原因だろう。関係が切れて、私は一安心だった。

その代わり、私に対する母の拘束は驚くほど強くなった。

深夜に帰宅しようが外泊しようが何も言っていなかったのに、急にそれをひどく咎めるようになった。携帯でGPS追跡されるのはしょっちゅ

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忘れえぬ傷1 こどものころ

傷を癒やすには、傷があること・痛みを感じること自体を自分で認めなければいけない。

長い自分語りになる。

それでも読んでくれるという変わり者のあなたに、愛をこめて。

お嬢から父無し子になった子ども時代

田舎で一番大きな工場の次期社長である父と、武家の血を継ぐ豪農の娘である母との間に、私は生まれた。
小さなころは、それこそ蝶よ花よと育てられ、絵に描いたような幸せ家族だった。

しかし、父と母は

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食べるのが苦手だった頃の話

小さい頃、特に肉を食べた日には必ず決まって同じ夢をみていた。

小さい頃、私は「食べる」という行為自体が苦手だった。
動物も植物も自然に存在しているうちはあんなに愛らしいのに、それを管理し、殺し、そして食べるということが、ひどく恐ろしくておぞましいことのように思えて仕方なかった。

特にそれを強く感じるようになったのは、小学生で行った養鶏場見学で屠殺のことを初めて知ってからだ。
食べるために育て殺

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