会話の記録7

「永遠ってさ、一瞬の中に一番ある気がしない?」
「永遠って一瞬の中にある?」
「うん」
「もうちょっと解説してみて」
「いや解説も何も無いんだ。感覚の話なんだ」
「一瞬の中に…」
「一瞬の中にしか永遠はない?」
「あー…。ちょっとまってね…」
「うん」
「……まあ、解説はできないね、それ以上」
「何となくわかる?」
「なんかねー、わかる気もするし分からない気もする」
「うん」
「じゃあ、永遠の中に一瞬はない?」
「うん。永遠と一瞬はどちらも時の流れを感じないから?かな…。どちらにもはじまりとおわりがない気がする」
「うんうん。なるほどね。…0と無限の話?」
「そうだね」
「それだ」
「解説できちゃった」
「0と無限の話ならわかった。わかる気がする。こんなこと前も言わなかったけ?言ってないか」
「でも0の話はよくしてるよね。君は0が大好きだよね」
「0が好きだった頃もあるし、無限が好きだった頃もある」
「そうなの?無限の話は聞いたことあるかな」
「言ったと思う」
「うそ」
「言ってないか」
「分からない。記憶にないだけかも。言ってないかもしれないし、私の記憶に残ってないだけかもしれないし。でもそれはどちらも今はもう分からないこと」
「…え?ひとりごと?それ。今話しかけられてる?」
「たしかに、今のどっちだろう。自分でも分からない」
「どう反応していいか分からなかった」
「途中まではたぶん君に話してたけど、最終地点はひとりごとではあったかも」
「そうだよね。言いきってたから入る余地なかった」
「おもしろいね」
「独り言って、人が入る余地ないんだね」
「そうだね」
「じゃあさっきのは独り言だったんだ」

「同じ毎日を繰り返しても、変わってしまうのはどうして?」
「どうしてだと思う?なんで変わったって気づいた?」
「どうやって気づいたんだろう」
「変わってしまったって固定概念があるからじゃないの?」
「変わってないの?」
「変わるってなにをもって変わるっていうの?」
「んー。失うこと?何かを失っていたこと」
「失うだけなの?」
「手に入れたら変わった、になるのかなー」

「春夏秋冬どの季節が一番好き?」
「それは前に君に質問をしたことがあるよ」
「そんな気がした」
「秋ですかねー」
「理由は?」
「冬は寒い、夏は暑い、春は匂いが好きじゃない。秋は何もないから」
「消去法ですか」
「でもさー、あんまり気に入らないかもこの答え」
「消去法だから?」
「暑いとか寒いとか、一貫性がない。理由に」
「じゃあちゃんと考えて」
「本当に好きな季節ね」
「うん。好きな季節ほど答えが曖昧になるものってないよね」
「好きな季節…」
「季節って概念好き?」
「季節ねー。まーずっと一緒よりはいいかなー。いやずっと一緒も季節か」
「んー」
「いや、ずっと一緒だったら節はないか」
「そうだね」
「わかんない。好きな季節なんてないし。秋っていうのも無理矢理言ったし」
「ね、季節に対して好きっていう感情が難しいよね」
「うん」
「季節に対して好きっていう感情を抱くのって難しいよね」
「なんで2回言ったの?」
「整理して言い直したの。じゃあ何月が一番好き?」
「んー…。…これパッと出てない時点でもう好きじゃないよね」
「そもそもさー、季節や何月かとかがさ概念として成立してるのほんと意味わかんない」
「うん」
「だって、違うじゃん毎回」
「うん、なるほどね。たしかに」
「今年の夏は嫌なことがなかったけど、来年の夏はちょー嫌かもしれないし」
「うん」

「今一番知りたいことはなに?」
「なんだろうね…。君が何を考えているか」
「何考えてるかねー。…一週間ぶりに話しているでしょ?この間の一週間って動いてる?」
「動いてる?動いてるって何?」
「変化してたり、時間が一週間分進んでるって感じする?」
「うん。まあまあ」
「そっか」
「なんで?」
「わかんない。…時間が止まっていてほしいから」
「なるほど。明日が来ないでずっと今日に留まる方法はあるのかね」
「ねー」
「でもちょっとね、ヒントになりそうなのがあって。太陰暦」
「何?太陰暦って」
「昔の日本の暦。太陽を基にした暦じゃなくて、月を基にした暦」
「へー」
「この太陰暦と太陽暦を使えば永遠に明日が来ないんじゃないかってちょっと思ったけど、全然調べてないからわかりません」
「まあでも明日を明日と思わなければ明日じゃないんだけどね」
「いやでも明日じゃん」
「そうだけど。何をもってして明日だと思う?」
「朝がくる」
「朝ねー。じゃあ寝るからいけないんだ」
「いや寝なくても朝はくるんだよ」
「でも私まえに"わたしは寝ることによって今日を終わらせることができるし、起きることによって今日をはじめることができる"ってどこかに書いたんだよね」
「結構前向きだねー」
「1日のおわりとはじまりは全部私にかかってるって思ったことがあったんだよね」
「それは面白い。自分中心なのか」

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