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会話の記録2

 世間からみれば益体のないことばかり、本当にそんなことばかり話す友だちがいる。会話のはじまりもなければ、終わりもない。思いついたことを思いついたときに、思いついたままに言葉にする。力を抜いて考えたことの記録でもあるから、文字に起こして残しておきたい。

「友だちを作るのってちょっと大変だよね。」
「そう?大変…だけ?」
「うん。」
「人に合わせないといけないから?」
「んー、なんか友だち作るって…」
「自己紹介?」
「そうだね。最初が苦手なのかも。仲良くなれるかどうかってしばらく一緒にいないと分からないけど、仲良くなれるか分からなくても仲良くなるつもりで最初は話さなくちゃいけないから…難しい。友だちは 作る ものでもない気がする。」
「じゃあ生きていく上で、家族は必要?」
「家族?」
「うん」
「んー…。必要…がどういうことか分からないけど、でも多分一人になったら生きていけないとは思う。友だちも家族もそうかな。」
「生きていけないのは、さみしいから?」
「そうだね。あとは自立していないから?一人だったら自立しようとも思えないかも。」
「なるほどね。」
「家族は、必要…?」
「んー。必要っていうか…自分以外はみんな一緒なんじゃないかって思わない?」
「自分以外は一緒?」
「そう。さっき君も言ってたけど、自分以外はみんな あなた なわけだし。あーでもどうなんだろう。家族は必要かな。友だちはいたら充実するけど、絶対に必要かと言われると分からないかも。」
「そうだよね。でも友だちって…今だよね」
「どういう意味?」
「友だちって今のためにいるよね」
「そうなの?」
「そうじゃない?」
「未来のためにはいないの?」
「うーん。どちらかと言えば、今が楽しくなるためにいてくれる気がする。」

「よくお風呂で考えごとをするんだけど、お風呂にはスマホがないでしょ?メモができないんだよ。あとでメモしておこうって思うけどさ、髪を乾かしているころには忘れちゃうんだよね。」
「そういうことあるよね。あれ?考えるって、常に言葉と一緒にある?」
「そうだね。…そうかもね。」
「でもたまに考えがものすごく巡っているときにさ、言葉が追いつかないって思うことない?」
「わかるよ」
「でもそうすると、考えることと言葉って別ってことにならない?」
「そうだね。いや分かるけど」
「でもやっぱり言葉ないと考えられないか」

「いつから大人になるの?20歳?あたり?」
「分からない。ちなみに私は自分が大人だとはまだ思っていない。でも子どもにとっての大人ではある。と思うときはある。」
「人はどれくらいからおちる?」
「それも…考えたことがある。」
「はい。」
「分からない。」
「分からないのか。それぞれ良さがある?20代の良さと、30代40代の良さと。」
「おちるっていうのは、年齢を重ねていくにつれて…ってことだよね?」
「そう。」
「そうそう。ピークはいつなのかって思ったことはあるよ。」
「そう。」
「大人になるにつれて成長して出来ることが増えたと思ったら、今度は歳をとるにつれて色んなことが出来なくなっちゃうもんね。」
「うん。」
「ちなみに今はピークだと思う?」
「いや思わない。」
「人生全部を経験しない限りピークはわからないのかな。でも通り過ぎちゃったら、過去のことはは不確かになってしまうから…」

「そう。それも考えたことがある。この世は全て記憶であると。」
「それはこの間私が言ったことだ。」
「そうだっけ?」
「この部屋の外の世界は知っているつもりだけど、それは記憶でしかないから、本当は何も知らないんだよ。」
「そういえばそんなこと言ってたね。」
「目に見えてない世界は瞬間移動になる?」
「瞬間移動になる が意味分かんない。何となく分かるけど何となく分からない。」
「例えば、先週図書館に行ったとします。」
「うん」
「翌週また図書館に行ったら、本棚の本の並べ方が全部変わっていました。」
「うん」
「でも先週行ったその瞬間からその次に行くその瞬間までの間は見てないから、本を移動している最中のことは分からない。だから本は瞬間移動したことになる?」
「そういうことね。」
「自分が見てない世界は存在してたのかな。」
「それは本当に思うよね。」
「自分の後ろ側の…これはこの間君が言ってたんだ。」
「自分の後ろ側に世界はあるのか だよね。」
「見たその瞬間からしか世界は始まらないから、その前のことは…ね」
「じゃあ今この瞬間だってそうじゃん…って思ったんだよ、最近。不思議に感じたんだよ。何で今こうなってるのかって不思議に感じたんだよ。」
「こうって?」
「なんか…思わない?こうこうこうこうなってこうなったから今ここにあるっていうのは、記憶とか辿ればそうなんだけどさ、記憶なんてたかが記憶だし、確かじゃないから。もっと歳を取ればもっと不思議に感じるんだろうなって思うしね。」
「うん。」
「40歳の人は40年も生きた実感ないだろうし。20でそうなんだから。」
「うん。でも年上の人は未来を知っているわけじゃないからね。」
「うん。それは君がよく言っているね。」
「うん。みんな同じ今を生きているんだよ。」

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