会話の記録8

「大半ってどういう意味?」
「多くの」
「なんで半分って字を使ってるのに、半分以上を表すの?」
「もうさ、それを言いたいだけじゃん。大半の意味を知りたいわけじゃないんじゃん」
「…そうだよね。たしかにね」
「うん」
「でもね、質問しながら変えることもあるんだよね」
「なるほどね。それはわかるよ」
「質問しながら目的を変えることもあるんだよね」
「だからか。話したら何か変わるかもしれないから、人は独り言をしゃべるのかな」
「たしかに」
「自分の中だけで話してたら何も変わらないかもしれないし」
「でもたしかに、自分の心の中で唱えてるものってさ確実に言葉にははまってないもんね」
「そうだね。」
「心の中でははっきりとした言葉では唱えてないもんね」
「うん」
「じゃあどうやって心の中で思ったり考えたりするの?」
「心で思うの?」
「心じゃないのか」
「心はどこなのか」
「それは本当にそう」
「脳で考えてるイメージなんだよね。心って感じじゃないな。心がどこにあるかわからないんだよ」

「独り言を話している人の目ってどんな目をしてる?」
「んー」
「心ここにあらずって感じしない?」
「たしかに、何か実物を見ていない感じはするかも」
「それが傍からみたら、なんか不思議なんじゃない?」
「たしかに」
「それこそ本当に目に見えないものと話しているような」
「たしかに。自分のことは見えないのか。自分に向かって話していたとしても、自分のことは見えてないのか」
「うんうん」
「自分という存在はなにか」
「自分を見るときってさ、目玉はどこを向いてるんだろうね」

「何も思わないし何も考えない瞬間ってある?」
「でもさ、それって確認不可能じゃない?」
「本当にそうだね」
「うん、確認不可能だよそれは」
「確認する方法がない?」
「うん、ない」
「そうだね」
「でも、何考えてるの?って質問されて、何も考えてなかったって答えるときはあるよね。そのときは何も考えてないのかな」
「でも思ってはいるのかな」
「人がいないと確認できないのかな」

「話し言葉と書き言葉ってなに?」
「話すときの言葉と書く時の言葉だよ。知ってるでしょ」
「そういうなに?じゃなくてさ」
「はい」
「話し言葉としては使うけど書き言葉としては間違ってるよって指摘は何なんだろう」
「間違ってるからじゃないの?それじゃダメなの?」
「うん」
「別に書くときに話し言葉でもいいじゃんって?」
「そう、なんでそれを分けたんだろう」
「たしかにね」

「眠くて意味わかんないこと書いてる」
「うん」
「眠さも良さか」
「うん」
「なぜ眠いんだと思う?眠いってなに?」
「羊数えるより眠れそうだね」
「どういうこと?それも意味わかんないね。もしかして君も眠いの?」
「いや、全然眠くないよ」
「眠くないのに意味わかんないこと言ってるの?」
「意味わかるでしょ」
「今君なんて言ったっけ?」
「羊数えるより眠れそうだね」
「どういうこと?」
「眠いってなにを考える方が、羊数えるより眠れそうだね」
「そういうことね」

「孤独の"独"の字が持つ、さみしい感じって何だろうね」
「なんか体育座りしてそうだよね」
「うん」
「何で体育座りってさみしい感じがするんだろうね」
「何でだろうね。自分一人で形を完成させようとしているから?」
「どういうこと?形を完成させるって何?」
「この世界に存在する面積を狭くしてるから?」
「あーそれは面白いかも。…面積?」
「体積?」
「表面積?」
「じゃあ表面積で」

「絶対はある?」
「絶対はあるよ」
「どこに?」
「だってさ、例えば0時までに提出締め切りのものがあって、終わってないとしてさ、今0時5分だ、ほら絶対出せないじゃん」
「でも今が0時5分かどうかは分からないじゃん」
「0時5分でしょ今は」
「分からないじゃん」
「0時5分か分からないんだ」
「0時5分じゃないかもしれないじゃん。もしかしたらこれが夢の中かもしれないじゃん」
「でも絶対はあるよ」
「そうなんだ」
「うん。絶対なんか絶対ない、って言う人いるけどね」
「まーそれは変だよね」
「うん。それはもう言葉遊びを楽しんじゃってるだけだよね」
「でもそれをさ、誰かからの受け売りじゃなくて自分で気づいたなら楽しいよね」
「うんうん」

「だからさ、知識があるに越したことはないとは限らないと思うんだよね」
「間違いないね」
「二番煎じになりうる可能性が広がっちゃうもんね」
「うん。でも無知は無知で、知らぬ間に二番煎じになる可能性があるしね」
「自分がもし知らなかったとしても、二番煎じになるの?」
「うーん、そこが難しいよね。自分の中ではいいけどさ、世から見たら、普通にあるじゃんその言葉って思われちゃうかもしれないしね」
「それほど悔しいことはないね」
「ないね」
「そんなの後に生まれたほうが不利だね」
「ってよく言いますよね」
「誰が?」
「世の人が」
「そうなんだ」
「まさにこの状況」
「そうなんだ、世の人はよく言ってたんだこれもすでに」
「そう、面白いことは全部昔に出尽くしてるって」

「昔に生まれたかったって思う?こういう理由以外で」
「なんかそんな話したことあるよね」
「そうだっけ?」
「うん、その時は昔に生まれたかったって思ってたんだよね」
「どうして?」
「今ほど選択肢がなかったから、昔に生まれたかった」
「決まってるほうが楽?」
「うん、だと思ってた」
「だと思ってた」
「今はわからない、どっちがいいか」
「ふーん」
「今を知ってる時点で言ってもねって感じもするしね」
「たしかに」
「ずるいじゃんね、昔の人は未来を知らないの」
「比べられないもんね」

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