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【PR NOW#014】最新グローバルPR事例から学ぶ!企業の本質的価値を生み出し、人々のココロを動かすPRとは

こんにちは。プラチナムの髙橋と申します。
私が所属するグローバルコミュニケーション局は、英語をはじめとした多言語を扱う社員が多く所属し、外資クライアントの日本でのPR活動や、国内クライアントの海外でのPR活動を提供しています。

今回は、2022年上半期に実施された最新のグローバルPR事例の中で、特にプラチナムが目指している「ソーシャルバリューコミュニケーション」を体現しているものを3つピックアップし、どのように人々の心を動かし、社会に貢献したのかを紹介します。

プラチナムの「ソーシャルバリューコミュニケーション」とは、企業としてESG経営やSDGsへの取り組みが求められる現在、ビジョンやパーパスを実現する社会的な存在価値と商品やサービスを通じ業績をつくる経済価値を包括した“本質的な企業価値”を生み出すコミュニケーションのことを指します。

男性のメンタルヘルス意識向上へと導いた「SAD AF」ビール開発
(クラフトビール会社 BrewDog×メンタルヘルスケア啓発団体 #IAMWHOLE

この事例は、イギリスで売上1位のクラフトビール会社BrewDogと、イギリスのメンタルヘルスケア啓発団体の#IAMWHOLEが協働して取り組んだ活動の事例です。

BrewDogは、大量生産を行うメインストリームラガー会社に対抗し、採算度外視でクラフトビールを作ることに情熱を注ぎ、「古臭い風習や固定概念を打破し、自分たちの意思で新しいビール文化をつくる」ことを目指すビールメーカーです。

日本でも、新入社員や人事異動など環境変化のあった方が、新しい環境に上手く適応できず、心身に不調を感じる「五月病」という季節の病がよく話題になります。イギリスでは、1月がメンタルヘルス不調のリスクが高い月だと言われており、季節性の病である季節性情動障害(Seasonal Affective Disorder、通称SAD)が深刻な問題となっています。しかし、イギリスの国民保健サービスが行った調査では、SADがうつ病などの精神疾患を引き起こす可能性があることを認識している人が56%しかいないことがわかりました。

上記の結果をもとに、#IAMWHOLEがメンタルヘルスの問題を抱えている1,000人を対象に行った調査では、約2人に1人の人がパブやカフェでリラックスしてお酒を飲みながら話すほうが、心を開く可能性が高いと回答していることも明らかとなりました。

これらの状況を踏まえ、企業理念にのっとり、誰もが陥る危険性のあるSADへの意識を高め、不安やメンタルの異常を1人で抱え込むのではなく、家族や友人に気軽に話すきっかけをビールという企業がもつ商品とオケージョンによって作り出すことを目的として、ノンアルコールビール「SAD AF」を開発しました。

発売と同時に、#IAMWHOLEは独自のキャンペーンムービーを作成し、様々なジャンルで活躍するイギリスの男性有名人を起用。手のひらに悲しい顔を掲げ「SAD(季節性情動障害)」と「SAD(悲しい)」という言葉を重ね合わせて表現し、啓発を行いました。そして、売上の100%をメンタルヘルスの研究基金として寄付しました。

ポイントは、実際のターゲットへの調査をもとにして、メンタルヘルスケアを目的に、BrewDogの企業理念である「自分たちの意思で新しいビール文化をつくる」ことを体現する新商品の開発を行ったことです。調査などのファクトを活用して施策に落とし込むPR手法は、海外でも日本でもよく使われます。また、PRにおいて、情報発信を的確なタイミングで行うこともとても大切です。この商品は先述の通り、イギリスにおいてメンタルヘルス不調のリスクが高い1月にローンチされ、話題を生みました。ブランドが消費者と寄り添い、商品開発を通じて問題提起を行った事例でした。

ポイント
ターゲットへの調査(消費者の生の声)をもとにしたソリューション商品開発
・的確なタイミングでの情報発信

子どもの不安緩和を促進した「LEGO MRIスキャナーキット」(LEGO Foundation)

弊社でも日本のPRを担当している、デンマークのブロック玩具ブランドLEGOは、「世界の明日を創造していく未来の担い手を育成する」ことを使命に、子供が楽しみながら脳を動かし学ぶことができる、LEGOが持つ教育効果を活用して、様々な社会問題解決への取り組みを積極的に行っています。

今回の取り組みでLEGOが社会課題として注目したのは、身体の検査に重要なMRIが、暗く閉鎖的な空間での検査となることから、不安を覚える子供が多いということでした。慈善団体であるLEGO Foundationは、LEGOが持つブロックを使って仕組みを理解してもらい、不安の軽減へと導くというミッションのもと、MRIをLEGOブロックで忠実に再現した「LEGO MRIスキャナー」を開発。ブランド発祥の地、デンマークにあるオーデンセ大学病院との共同開発により、600個のキットが世界中の100以上の病院に寄付されました。

同時にどのように活用するかを説明する4つのトレーニングビデオも開発したことで、「LEGO MRIスキャナー」の使用を最大限にサポートしました。

ポイントは、ブランド・商品のターゲット層(子ども)のインサイトを捉え、ブランドなりのソリューションを提供することによって、企業の使命を体現していることです。また、インサイトに関わるステークホルダーを巻き込みモデルを開発している点も、社会貢献性が高いと言えます。数量限定で開発されたこのモデルには、全世界の放射線科を持つ病院からの応募が殺到し、話題となった素晴らしい事例となりました。

ポイント
・ターゲット層のインサイトを捉え、ソリューションを提供することにより企業自身の使命を体現している
・インサイトに関わるステークホルダーを巻き込み製品を開発する

公共の場における授乳の偏見撲滅を目指した「All boobs are welcome here 授乳専用ベンチ」(フェムテックブランド Elvie)

日本でも近年取り組む企業が増えてきた、女性の抱えているさまざまな悩みをテクノロジーの力で解決するフェムテック分野。ヨーロッパ・ベルギーの企業Elvieは、よりスマートなデバイスで、女性の生活を向上させることを目指しています。社会に根付く、女性に対してならではの偏見に対してソリューションを提案しました。

同社が課題を提起したのは、ベルギーに根強く残る「授乳」に対する偏見です。ベルギーでは、公共の場で授乳する母親に対して文句を言ったり、暴力を振るったりする事件が相次いでいました。
これを問題視したElvieは、「すべての母親、親、家族は、判断や制限なしに、赤ちゃんに授乳する方法と場所を選択できるべきである」という信念のもと、ベルギーの都市コルトレイクに授乳専用のベンチを設置しました。
フェムテック企業でありながら、あえてテクノロジーではなく、インパクトのあるベンチというコンテンツを公共の場に置くことによって、サービスの根底にある「女性が持つ悩みを解決する」という企業としてのパーパスを体現し、身近な潜在する社会問題に対してメッセージを投げかけました。
同時に、「#Blastplaceマップ」と呼ばれるサイトを立ち上げ、あらゆるお母さんが安心して授乳ができるスペースを簡単に見つけることができるサイトとして情報を提供しました。

この取り組みは大きな反響を呼び、母乳育児をする母親たちに共感の輪が生まれることとなりました。
2022年中には、町全体に母乳育児用のベンチをいくつか設置する予定のようです。

ポイントは、根強く残る偏見に対して、メッセージを体現するような人目につく大々的なコンテンツを開発し、オフラインで設置することで話題化を生むと同時に、コンテンツを実体験することができないターゲット層に対してもサイトを立ち上げ、同じソリューションを提供している点です。日本を初めとした約16ヵ国のメディアで紹介され、フェムテックブランドとしての認知も獲得した事例となりました。

ポイント
・偏見に対するコンテンツ開発
・オフラインで偏見に対するメッセージを体現したコンテンツを設置し話題化させると同時に、それが体験できない人々にもオンラインのソリューションを提供

まとめ

いかがでしたでしょうか。3つの事例を通して、社会貢献度の高いPRコミュニケーションのために重要な5つのポイントをおさらいできればと思います。

●ファクトの洗い出し

社会にある偏見や課題に対し、調査などのファクトを通じ、企業のターゲット層が持つ課題や、企業だからこそ解決するべき問題を洗い出す

●的確なターゲット設定

上記のファクトの洗い出しを踏まえ、その課題に対する解決策を届けるための的確なターゲットを設定し、施策を設計していく

●コンテンツ開発

洗い出した課題を、ブランドが持つ魅力や利点を活用したソリューションと掛け合わせたコンテンツの開発

●ステークホルダーを巻き込む

課題に対しての取り組みをターゲット層により届けるため、ターゲット層と接点がある / 説得力を高めるステークホルダー(企業のあらゆる利害関係者)を巻き込む

●適切なタイミングと場所での施策実施

適切なタイミングで、適切なステークホルダーに情報を届けるための逆算で、オフライン・オンラインコンテンツの長所を活かした施策実施

上記のポイントを抑えることにより、「企業の本質的価値」を生み出す、ソーシャルバリューコミュニケーションが実現すると考察しました。ぜひ今回のグローバル事例の紹介が、より良いPR施策の立案と実行の参考になれば、とても嬉しく思います。

グローバルコミュニケーション局 髙橋


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