少子化の麻生説は当たらずと雖も遠からず

また政治家が少子化に関する発言で不当にバッシングされている。原因を指摘することは責任追及や責任転嫁を意味しない。

晩婚化は最大の要因とは言えないものの、重要な要因の一つであることは確かなので当たらずと雖も遠からずである。また、晩婚化や非婚化は歴代自民党政権の失政によるものではなく、先進国に共通する社会や個人の意識の変化の反映なので、批判は全くの筋違いである。

(「自由化」が少子化につながるメカニズムについては後日の記事で。)

総務省統計局「国勢調査」

根本的には、自民党に批判的な人々が支持するこの社会変化👇が晩婚化や少子化を招いている。

女性の経済的社会的自立は、男性に家族のための「ブレッドウイナー(稼ぎ手)」としての役割(これが男性の家庭における支配力の1つの重要な資源だった)を求める必要が以前ほどなくなりつつある。
以前、かつて女性は3つのFを理由に、男性と結婚する必要があったが、今や、そのFの3つとも必要としなくなった、という議論があった。S・スミスの『女は結婚すべきではない――選択の時代の新シングル感覚』(あわやのぶこ訳、中央公論社、1995年)によれば、3つのFとは、ファイナンス(お金)とファザーリング(父親役割)、さらにはファータイル(繁殖力)だ。お金は経済的自立で男性に依存する必要がなくなり、父親役割はそもそも子育てに責任を持たない男性は不必要であり、繁殖力=精子提供は、今や精子バンクで対応可能だ。だから、女性はもはや結婚しなくてもいいという議論だった。実際、女性の社会参画と経済的自立の広がりは、結婚という制度を通じて女性に依存してきた男性にとっては恐怖を抱かせるかもしれない(保守的な男性の中に、フェミニズムアレルギーがあるのは、たぶん、ぼんやりとこのことに気がついているからだろう)。

p.33-34

高学歴化と「永久就職(男と結婚)よりも稼得労働(仕事と結婚)」→晩婚化・非婚化→少子化という当たり前の結果である。

文部科学省「学校基本調査」
厚生労働省「人口動態調査」
厚生労働省「人口動態調査」

補足

「結婚」の意味が西洋諸国とそれ以外では異なるので単純比較できない。

内閣府の2020年の資料の「少子化関連指標の国際比較」によると、日本人の平均初婚年齢は29.4歳で、OECD加盟国の中でも出生率の高いスウェーデンの34歳やフランスの32.8歳よりも早婚であることがわかる。

スウェーデンはサンボ、フランスにはPACSという結婚に代わる、あるいは前段階としての「世俗化された緩いパートナーシップ制度」がある。これらも一種の結婚と見做せば、日本よりも早婚ではなくなる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?