西洋リベラルのVR的世界観

LGBTQフィーバーに代表される最近の英語圏(特にアメリカ)のリベラルの言説を奇異に感じたり抵抗感を持つ人もいるのではないかと思われるが、日本人には理解が難しいのは、その言説がギリシャ哲学~キリスト教~啓蒙思想という西洋独特の世界観をベースにしているためである。

共和党支持者のなかには、聖書を字義通り信じて、ダーウィンの進化論を否定する人々がいます。民主党支持者のなかには、男性を女性に、女性を男性に意識的に変えられるという「トランスジェンダー」の信奉者がいます。私に言わせれば、双方とも、本来受け入れるしかない“現実”を受け入れない狂信者です。このうちのどちらかを選べというのは、「地球は平らである」と「地球は四角い」のどちらかを選べというようなものでしょう。

👆双方に共通しているのは、人間は自然の一部ではなく独立した(しかも上位の)存在だという二元論的な基本認識(世界観)である。民主党支持者≒リベラルの世界観は👇のような構築主義的なもので、人間社会は自然界とは別の法則・コード体系によって構成されたVirtual Realityのようなものになる。「本来受け入れるしかない“現実”を受け入れない」のは、現実世界ではなく(映画『マトリックス』のような)VRの中で生きているためである。なお、VRは「仮想現実」ではなく「人工現実」に近い(詳しくはコメント欄のリンク先を)。

現実に存在していると考えられる対象や現象は、客観的もしくは物理的に存在しているのではなく、人々の認識によって社会的に構築されていると考える社会学の理論的立場。社会構築主義、構成主義、社会構成主義ともいう。たとえば、多くの人々は「地球は丸い」ということを体験的に確認しているわけではなく、物理的計算や史実に基づいて共有された社会的な現実として認識している。このように、客観的かつ物理的な現実として存在すると考えられている「丸い地球」も、人々が共有する「地球は丸いものだ」という認識によって構築された現実として理解される。
構築主義の特徴は、対象や現象の実体がなくても、人々の認識があれば現実として構築されると考える点である。

https://kotobank.jp/word/%E6%A7%8B%E7%AF%89%E4%B8%BB%E7%BE%A9-262217

共和党支持者≒キリスト教徒の世界観では、人間社会というVRを律している法則を決めているのは神なので、人間は勝手に変更できない。しかし、リベラルの世界観ではVRの法則を決めているのは人間なので、いくらでも良いものへとアップデートしていくものになる(→進歩主義)。

例えば、現実世界では人間の男と女には哺乳類の雄と雌としての違いがあるが、VR空間では「男と女は生殖機能を除くと全く同じ」と定めればその通りになるものとされる。もしそうなっていなければ、「正しい状態(gender equality)」にするために「システム管理者(≒リベラルエリート)」が強制力を発動する(例:クォータ制度)。人間の脳内でメタフィジカルなレベルで決められたことがフィジカルに実現するというわけである・

性の場合、自然界(リアルの世界)ではsex(男/女)は生まれつきのもので変更は不可能だが、VRにおけるgenderは男/女に限らずいくらでも変更が可能なものになる(non-binary, questioning, etc.)。

いま、西側の世界で何が起きているかというと、ひじょうにある意味、冒険的な社会的実験が行われているというような状況なんです。
たとえば、ホモセクシュアリティー。これはもう、完全に広く認められている話なわけですが、それよりもむしろ「男女の違いを超える」といったような、そういったディスクール(言説)、考え方が出てきています。
生物学的、遺伝学的に定められた「男女」というものは、そもそもないと考えたり、それを超えられたり、あるいは変えたりすることができるといったような考え方が生まれてきているわけです。

おそらくだが、米ソ冷戦時代はアメリカのエリートの世界観は現実にアンカーされたものだったのだが、ソ連が崩壊して一極体制になったことでアンカーが外れて地が出るようになり、VRの中で狂信化が止まらなくなったのではないだろうか。

👇は中世の十字軍フィーバーを思わせるが、VR的世界観(妄想)を肥大化させた英語圏のエリートが世界中に迷惑をかけているわけである。

私は来年1月にフランスで新著を刊行する予定で、そのために、米国の地政学者や安全保障の専門家の本を数多く読みました。米国のエスタブリッシュメントの現実認識や世界戦略を理解しようとしたのです。
そこから見えてきたのは、世界一の大国を率いているはずの米国のエリート集団が、実は真面目でも有能でもない、ということです。彼らの言動は、合理的な戦略に基づいているわけではなく、抑制が利かない一種の興奮状態にあります。とりわけ“大人”であることが要求される安全保障問題で“子供”のように振舞っている。「バイデンという老いぼれに率いられた子供っぽい集団」というのが、「世界一の大国」であるはずの、この国の指導層の実態なのです。“現実”を直視できない彼らは、何をしでかすか分かりません。彼らの攻撃性こそ、世界にとって一番の不安定要因となっています。

『文藝春秋』
強調は引用者

ヨーロッパの進歩思想の決定的な問題点はここにあります。自分たちの変化を進歩と信じて疑わない。非ヨーロッパ世界に対する力による支配を正当化し、非道な行為にも目をつぶってしまう。右手で握手しながら、左手では相手をひっぱたくようなものです。

西欧は、100年前とは変わった。10年前とは変わった。その変化が退行であるはずがない、進歩だ。だからおまえたちも進歩しろ。自分たちについてこい。ついてこないなら、力ずくで張り倒すぞ。西欧のイスラム世界に対する態度は、わかりやすく言うならこういうことです。
19世紀以来、「進歩」を確信してきた西欧は、中東・イスラム世界に対する態度を変えることなく、自分たちが進歩の末に到達した「普遍的価値」を執拗に押し付けようとしています。

👆中東・イスラム世界だけではなく、日本を含むすべての非西洋世界に対するスタンス。

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