働き盛りなのに働いていない男の増大

労働市場の短期的課題はコロナショックによる失業の増加を抑えることだが、

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約20年前から続いている構造的問題は、働き盛り世代の男の非労働力化である。25~54歳(prime age)の男は病気や障害でなければ働いているのが普通で、1990年代後半までは非労働力人口比率は2.5%程度だったが、2000年代初頭から景気動向とは無関係に上昇し、近年では4.5%程度で高止まりしている。2%分が労働市場から消えたことになる。

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統計上は働いていないことになっていても、YouTuberやネットトレーダーとして生計を立てていたり、あるいは既に大金を稼いでアーリーリタイヤしているのであれば特に問題はないが、多くはミッシングワーカーになっていると見られている。

この問題はアメリカでは日本より前から深刻で、

白人の中年男の自殺率上昇と関係していると見られている。

男とは対照的に、女の同年齢層の非労働力人口比率は約15年間で10%ポイント以上低下している。25~34歳は1970年代後半から一貫して低下(→出生率低下)、35~54歳はバブル崩壊後は30%強で横ばいだったが2000年代半ばから低下に転じている。

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この二つの現象はそれぞれが独立したものではなく、表裏一体の関係にある。日本やアメリカで起こっているのはこれ(⇩)と同じことである。アメリカではここに後進国からの移民が加わる。

「過去の婦人運動は36人の婦人国会議員と数十万のドイツ女性を大都市の路上に狩り出した」と、ある女性の党支持者は書いた。「それは1人の女性を高級官僚にし、数十万の女性を資本主義的経済秩序の賃金奴隷たらしめた。働く権利を奪われている男はいまや約600万もいる。女だけが、安価でいつでも利用できる搾取の対象として、いまなお仕事を見つけることができるのである」。

投資家とフェミニストにとっては理想的な展開だが、実際、彼らはリベラルなイデオロギーを掲げて経済社会をこの方向に誘導してきた。

ネオリベ改革がジェンダー平等政策を推進した理由はなんでしょうか?
答はかんたんです。女に働いてもらいたいから。

「女に働いてもらいたい」のは新自由主義もマルクス主義フェミニズムも同じ。ウーマノミクス/男女共同参画によって

資本主義的経済秩序の賃金奴隷
安価でいつでも利用できる搾取の対象(例:ギグワーカー)
多数派の周辺的労働者
賃金が上がらない二流労働者

を増やすことが期待されていた。

本書は,著者の理論的支柱を示す主著.1986~88年に『思想の科学』誌に連載されたものに,大幅に手を入れ,1990年10月,小社から刊行された.
エリート女性労働者と、多数派の周辺的な女子労働者、そしてそのどちらにも属さない無業の主婦(「働かなくてすむ」ことで特権的な立場に立った専業主婦)に、女性は三極分解するだろう。そしてその女性の多様化を、「選択の自由」「個性化」イデオロギーが、あたかもそれが女性自身の選択であったかのように、おおいかくすだろう。
賃金が上がらないといっても、外食せずに家で鍋をつついて、100円レンタルのDVDを見て、ユニクロを着ていれば、十分に生きて行けるし、幸せでしょう?

フェミニストが男の貧困化を求めるのは、

◆夫の稼ぎが減る→妻が働かざるを得なくなる→男女平等
◆結婚が減る→「奴隷」にされる女が減る(⇔解放)

ため。社会正義を実現する革命のためには、まず男が貧しくなることが必要なのである。エリート女が愛せるエリート男は除く。

参考

大泉博子(元衆議院議員、元厚生省児童家庭局企画課長)"「男女平等社会」のイノベーション ―「男女共同参画」政策の何が問題だったのか―"より引用(一般社団法人平和政策研究所のwebサイトより)。

男女共同参画は家庭や地域という視点が極めて薄い。どちらかというと社会で活動するエリート女性向けの内容になっている。
男女共同参画は官制フェミニズムだったということである。男女共同参画がなぜエリート女性向けになったかというと、女性のエリート官僚が引っ張ったというのと、当時の社会のバックグラウンドがフェミニズムだったからである。上野千鶴子氏をはじめ、フェミニズムの論客が登場し、リベラルな考え方が社会を賑わせた。エリート官僚と社会のリベラリズムが合体した形で出来上がったものなので、「官制フェミニズム」と名付けてよいと思う。

2020年度の男女共同参画推進関係予算額は約10.5兆円

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