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日本の学生によるゴンクール賞私記

2021年度から立教大学の澤田直教授主導のもと始まった「日本の学生によるゴンクール賞」。
今年で3回目になりますが、今年も始まりました。

ゴンクール賞とは、フランス語で書かれた文芸作品で最も優れた作品に送られるフランスで最も権威のある賞のうちの一つです。日本の文学賞のように主に新人に送られるものでも、芥川賞や直木賞のように分野に分かれたものでもありません。

ゴンクール賞は、本賞の他、高校生によるゴンクール賞、各国の学生によるゴンクール賞があります。ゴンクール委員会は、日本にも是非参加して貰いたいとの意向を澤田直教授に打診して来たのです。当初彼は、日本の学生には仏語力がないし、就職活動が早期に始まるのでゆっくり勉強する時間もないと辞退したのです。ただ委員会の押しも強く、仏語・仏文学の教員が手助けすれば、何とか運営できるのではないかということで、「日本の学生による」ゴンクール賞が設立されたのです。

当初は、全くの手探りでした。各大学の仏語・仏文学の教員が自分の学生(学部生、院生)に声を掛けました。日本の学生によるゴンクール賞というものが出来たのだけど、良かったら参加してみませんか?ということです。放送大学生であり、野崎歓教授に卒業研究を指導して頂いたぼくにも声がかかりました。初年度は院生が多かったです。2年目の昨年度は、高校生にまで拡がりました。

澤田直教授は、募集しても大して学生は集まらないだろうと予測していましたが、蓋を開けてみたら、全国で100人以上の学生が集まりました。
北海道・東北地区、関東地区、中部地区、関西地区、中国・四国・九州地区に分けられました。
関東グループは人数が多いので、更に3つのグループに分かれました。

印刷してもゴンクール委員会のものであるとの透かしの入った仏語の現作のPDF(持ち出し厳禁)と各先生毎にこの作品を推薦する理由と、作品のあらすじが書かれたレジュメのみが用意されていました。参加学生は「選考委員」と呼ばれましたが、何をどうやって話し合いを進めて行くかは、自分たちで決めねばなりませんでした。事務局はしっかりしていましたが、学生の入会処理や文書の公開等の裏方です。先生方は、困った時の相談役という位置づけです。

最初に澤田直教授、野崎歓教授から趣旨説明があり、グループ分けが始まりました。次の回は、グループごとに、どのように運営して行くのか意見出しをしました。院生たちが、毎週範囲を決めて仏語を読み込んでごりごりに読書会を行うというラインを出しました。ぼくは、必要な時メンバー同士でいつでも連絡を取り合えるツールがあると便利なのでは、と提案しましたがあまり関心を持たれませんでした。読書会の模様のレポートは必要との話になって、やはりそれをシェアするためには、Slack等のツールが必要と主張しました。そして、その件は事務局に預けることになりました。

もともと8作品あったものを投票で、4つに絞られました。そして11月に始めた読書会は、年度末の3月まで続くのでした。そして最終的に、相談の上、「日本の学生によるゴンクール賞」を決めるのです。

しかしながら、毎週の仏語での読書及び読書会はかなり厳しく、脱落者続出でした。そういうぼくも脱落しました。ちょっと無理!

それでも、2年目も登録し、参加しました。初年度にご一緒した方も何人かいらっしゃいました。2年目は初年度の反省がしっかり生かされていました。まず、先生方はあらすじのみではなく、重要な展開をしている箇所は、しっかりとした抄訳をつけて下さりました。読書会の頻度は、隔週になり、必ずしも仏語をしっかり読まなくても、抄訳を読むだけでの参加も可能になりました。初参加の高校生の中には、小説を読んだことがない人もいて、びっくりしました。2年目は成功裡に終わりました。

今年は、11月12日(日)に投票が締め切られ、以下の4作品が選考対象作品として選ばれました。

Veiller sur elle 彼⼥を⾒守る
Une façon d’aimer ある愛のかたち
Proust, roman familial プルースト、家族⼩説
L’échiquier チェス盤

フランスでは既に、受賞作品が決まっていますが、今まで日本の学生は、別作品を選んでいます。今年度はどうなるでしょうか?

今年度は、しっかりと仏語で読み進めたいと思っています。勿論抄訳は参考にしますけれども。

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