結城シイナ

何者でもない、どこかの誰かと はるか昔の過去、もしくは遠い未来に在ったのかもしれない物…

結城シイナ

何者でもない、どこかの誰かと はるか昔の過去、もしくは遠い未来に在ったのかもしれない物語。 多元宇宙論

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恋の芽のはじまり

ふわっとした長い髪に、吸い込まれそうな位に美しい金色の双眸。 一目見たときから、美しい人だと思った。 スラッとした長身のその男は、常に微笑みを絶やさず、わたしに話し掛ける。 その優しい微笑みに、わたしも少しだけ緊張しながらぎこちない微笑みを返す。 まだ出逢って間も無いわたしに気を遣ってくれて居るのが良く判る。 彼は、雰囲気はふんわりとしているが頭がキレて仕事の出来る男だった。 執事としての心遣いも凄いと思う。 とても良く微笑む彼だが、その瞳の奥はどこか鋭く、こちらを

    • 炎・a

      薄暗い静寂の中に揺れる、揺れる ゆらゆらと、揺れる 赤い炎 パチパチ… 「……………。」 とある事情で、私と彼女は森で野宿をすることになってしまった。 雨風を凌げそうな洞窟を見つけて、夜の帳が降りてくる前に私は手早く火を起こした。 パチパチ… 焚き火で真ん中を隔てて大切な彼女と向かいあわせで座っている… お召し物が汚れてしまうといけないので彼女には私が普段着ている燕尾服を敷いて座って頂いている。 彼女は「服が汚れてしまうからいい」と最初断ったが(彼女ならそう言うか

      • 今だけは、せめて

        どうか忘れないで いつか私が、あなたの年齢をあっという間に追い越して、しわくちゃのおばあさんになっても どうか忘れないで、あなたとここで過ごした今の時間を どうか忘れないで、悠久の時の流れの中で、あなたと出逢えた天文学的確率のこの奇跡の瞬間を。 そして私は、忘れたくないの 死んでも、離れても、例え別の宇宙の元へ生まれ変わったとしても ここであなたの手をそっと握っていたことを、この感覚を あなたを愛していたことを

      恋の芽のはじまり