鶴の一声

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最近の記事

ソーシャルアクションと秘密保持義務

 2023年5月、僕は目を疑う文章に遭遇しました。それは、自分の所属する日本精神保健福祉士協会(以下協会と略)が、構成員及び関係団体に発送、謹呈している紙媒体の機関誌である「メンバーズマガジン」の理事会議事録に、協会が実施していたメール相談事業をNHKが取材し、放送・Web記事化(2021年12月)されたことについて、当時の事業担当であった理事の構成員を倫理綱領違反及び精神保健福祉法違反の疑いで調査していることが、記事名及び前理事と明記した形で掲載されていたのです。  この

    • 貧者のライセンス

      令和3年7月に公表された福祉資格の「就労状況調査」。これは、社会福祉振興・試験センターが実施したものです。不思議なことに国家資格である社会福祉士・精神保健福祉士は、国の正式な賃金の動向を統計化した「賃金構造基本統計調査」の対象外になっていてるので、社会福祉士・精神保健福祉士の労働条件を把握するには、この調査しかない現状。 この調査に関しては、なぜか10代の取得者が存在していることやその取得者のうち、男性の平均年収が574万円となっているなど、統計の信頼性に疑問符がつく面もあ

      • ソーシャルワーカーの資格統一は遠のいた?

         ソーシャルワーカーの資格統一に関する三部作を書き終えた後、決定的にその資格統一が遠のく事態が訪れた。 我が国には、日本社会福祉士会・日本精神保健福祉士協会・医療ソーシャルワーカー協会・日本ソーシャルワーカー協会という福祉専門職における主たる4団体で構成する「日本ソーシャルワーカー連盟(通称JFSW)」が存在する。前回でも触れたが、このJFSW内において2018年から2020年の2年間にわたって、「ソーシャルワーカー関係団体のあり方検討プロジェクト」が設置され、この中でソー

        • 「明けない夜はない」と言うけれど・・

           ソーシャルワーカーに国家資格は必要なんだろうか。最近、この問いが頭の中をぐるぐる回っている。ただ、答えは分かっている。しかし惑う。  このコロナ禍において資格などを持たない人々が、社会の不条理や不合理なことに向き合い、そもそも今の社会自体が人々を幸せにしない仕組みになっているとして、この社会を変えようと行動し、発信している。本来、福祉専門職として資格を持つということは、「クライエントに対する支援に責任を持てるようになること」だと考える。しかしながら、今の資格は、どこかに所

        ソーシャルアクションと秘密保持義務

          ソーシャルワーカーの資格統一 最終章

          これまで、資格統一に関する歴史や今の資格の現状をお伝えしてきました。最終章では、ソーシャルワーク実践の観点から資格統一の必要性をお伝えするのと同時に、個人的な想いを書き綴っていきたいと思います。 私が強く資格統一を意識し始めたきっかけは2013年、東日本大震災の被災地支援のため、長年勤務した精神科病院を退職し、宮城県の女川町で支援実践に従事したことです。 それまで16年に渡り精神科病院のソーシャルワーカーとして、精神障害者の方やアルコール依存症・認知症の方の相談支援に携わっ

          ソーシャルワーカーの資格統一 最終章

          ソーシャルワーカーの資格統一(2)

          ソーシャルワーカーの資格を統一する話の前段として、今の社会福祉士・精神保健福祉士の現状をいくつかの視点で確認してみます。 1)身分保障について 平成27年、社会福祉振興・試験センター(以下振興センター)が実施した社会福祉士・精神保健福祉士両資格の就労状況調査結果によれば20歳代の社会福祉士の平均年収は295万円・精神保健福祉士は255万円となっています。ちなみに看護師は約422万円、理学療法士・作業療法士は約360万円となっていて(賃金構造基本統計調査 平成30年度調査)、

          ソーシャルワーカーの資格統一(2)

          ソーシャルワーカーの資格統一

          この日本において、未だその名称も、仕事内容も社会的認知を得るに至っていない「ソーシャルワーカー」。国家資格としては、社会福祉士や精神保健福祉士、認定資格としては介護支援相談員(ケアマネ)や相談支援専門員、名称としては医療ソーシャルワーカーやスクールソーシャルワーカーなどが存在しています。 ただ、それらは標準化・普遍化されたジェネリックな資格をベースに専門分化したわけではなく、それぞれがそれぞれで資格や名称を名乗っている状況です。過去を遡れば、ソーシャルワーカー職能団体の一致

          ソーシャルワーカーの資格統一