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【問題提起】臨床心理士・公認心理師の匿名発信について

【前提】同業者以外は読んでも面白くないです

という予防線から始めましょう。某学会で心理職の社会的的発信についてシンポジウムがあったらしく、参加できていない小職はTwitterにて色々見ていたでござるよ、薫殿。なので参加していない部外者がわーわー言う記事です、すまない。エビデンスも置いてきぼりだ。感想文と思って読んでくれよな。

匿名ではない=正なのか

このシンポジウム以前によく使われるフレーズとしてSNSでの発信について「同じことを実名で顔出しでも言えますか?」「匿名だから言えるんじゃないですか」「匿名is卑怯」的な言葉を何億回も聞いたし、おおむね同意するところはある。しかし、あえて逆張りをしてみようというのが本記事の趣旨だ。要は臨床心理士・公認心理師等の心理職が実名で発信することのメリット・デメリットについてである。そもそも匿名アカウントで発信しているので匿名側の意見であることはご容赦願いたい。

実名発信=仕事に影響を与えることは避けられないという避けられない事実

実名で発信されているアカウントの方々の発信を見ると仕事に影響を与えぬよう(あるいはポジティブな影響をおよぼすよう)細心の注意を払っていることが伝わってくる。そして所謂社会的な責任は匿名アカウントとは段違いだ。とは言え…という重箱の隅をつつくような話で恐縮だがSNS上での発信と仕事が完全に切り分けられるのか。主観的で申し訳ないが、それは無理だと思うことを表明しよう。
揚げ足取り極限までシンプルに考えてみよう。SNSで発信することは同意を得ることであり、否定されることでもある。たとえばきのこたけのこ戦争。完全に過激な話であるが、一方が好きだと表明すること自体が戦争の狼煙になることもあり得るだろう。それは何もお菓子の話だけではない。キラアスなのかアスキラなのか…「いくら吹き飛ばされても、僕らはまた花を植えるよ、きっと。」。それはそうなのだが、その時点で見ている人には何かしらのイメージを植え付けてしまう。

学術的な言葉で申し上げるとpre-formed transference.
カウンセリングが始まるのはいつ?インテークじゃないんですよ。

うまく論文引用が出来なかったので、一般的な転移の理解を以下に共有しよう。転移の意味は各自調べてね☆
※pre-formed transferenceの解釈が全く違うぞ!となった場合はシンプルに謝罪したい。何しろほぼ和約がないのだ。一説によると先行性転移とも訳されるらしいがその書籍を読んでいないのでここでは割愛させていただく。

転移というのは、徐々に醸成されるものではなく、二人の人間が出会った直後から、もしくは直前から既に活発に活動しているものである。

転移性恋愛についての観察

では心理職と相談者が出会う直前の場所はどこなのだろうか。まぎれもない、それはSNSだ。みなさんは旨いラーメン食べたいと思ったときに何を確認しますか?某口コミサイト?最近の若者はインスタで探すらしいぞ。

というわけで残念ながら実名発信の最大の弱点?ともいえるポイントがここにある。大魔王からは逃げられない。
転移からは逃げられない。エキスパートの方々ならこの転移すらうまく扱うだろう。しかししがない現場猫には無理。というわけで弊アカウントは最大限実害のない選択として匿名を選ぶ次第だ。

正しいことなら顔出しで言える?

加えて社会的に正しいことなら実名で言えるでしょ?っていう論に疑問を呈したい(と個人的には思っている)。そもそも声を上げたくても様々な事情からあげられない方の話を聞くこともあるはずである。というか現場の人は実名発信ためらうのでは?個人で開業している人、アカデミックな人、本を書いている人、研修やSVを請け負っている人は名前を売るというメリットがあるけど、それ以外の人はメリットはあまりない気がする。個人的な経験で申し訳ないが万が一バズっても宣伝できるものは何もない。いやほんとにないんすよ。。。

そして、上記にあげたようなデメリットも多いはずですしおすし。というわけで「言いたいことがあれば実名を出して発言しようね」論には無理がある。当然だが、「言いたいことがあれば学会で話し合いましょう」も同義。名前を出して声を出すことが難しい層の意見を封じてしまう可能性があることは忘れてはならない(気がします)。ただ誹謗中傷はだめだぞ。そして…

当たり前のことだが、実名顔出しのほうがリスクがデカい

もうこれは言わずもがな。匿名発信が責任逃れと言われたら反論は難しい。ただし匿名発信でも責任感を持って運用しているアカウントも山ほどある。それは忘れてはならないし、実名か匿名かという議論は実に暴論である(と私は感じる)。「匿名発信はまともに受け取る価値がない、卑怯だ、すべきでない」と言われると匿名でも画面の向こうには人がいるし、傷つく。
実名のほうが社会的責任や信頼性を増すのはガチ。ただ片方を持ち上げるのに片方をけなす必要は全くない。
と言いつつ悲しいことがあると復活のコアメダルの話をしてしまうのも私だ。いつかの明日には手が届かない…人間とは実に矛盾した生き物である。

そして公式くんの解釈

言論の自由は尊重しつつも公式の解釈は無視できないよね、というオタクである。そして本件に関する公式くんの解釈を見てみたい。

SNS上に発信した言葉は完全に消えることはありません。自分では削除したつもりでも、第三者にコピーされ拡散される危険性があります。ですから、自らの発言に責任を持ち各種法規を遵守するとともに、誹謗中傷と受け取られる発言はしない、根拠の不確かな情報を拡散しない、他者の個人情報やプライバシーに触れないなど、公認心理師の倫理的視点からも今一度、見直して みましょう。

ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を利用した情報発信における留意点

少なくとも現時点では「匿名発信を慎むべきだ」という内容はないし、みんな注意しようね!という注意喚起である。マジで少なくとも現時点ではという最大限の予防線を張るが「心理職が匿名発信をすべきではない」というのは極論であり、そんなことを言い始めたらSNS上の9割くらいの心理職が何も言えなくなる(と個人的には思っています)。それなんてディストピアなの。

そもそも内輪だけで話すのもどうか

という結論に行きついてしまう。とある人は実名発信に力をもらうし、別の人は匿名発信に力をもらうかもしれない。二極化させて片方を封じ込めている場合ではないのだ、ということをお伝えしてこの記事は〆です。ただし匿名だからといって誹謗中傷はダメだぞということを自戒しながら記載しよう。


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