見出し画像

【感想】ダイブ・トゥー・けものフレンズ

!!!このエントリーにはアニメ版けものフレンズ(2017)のネタバレがそれなりに含まれています!!!

「IQが低下する」とんでもない感想が飛び交うアニメがあると知り、当時残業続きでジャパリパーク、いやハイヤーグラウンドを幻視するレベルで疲れていた2月当初の筆者はスピリタスを割らずに飲むような感覚でけものフレンズ1話を見た。「なんだこれは」「一体何が起こっているんだ」ーFGOイベント、インフェルノコップ、ニンジャスレイヤーフロムアニメイシヨン、ここ数年で食らった胡乱とは明らかにタイプが違う。最初は5分でギブアップしそうになっていたがアルコールをキメながら見ていたこともあり気がつくと23分が経過していた。これがけものフレンズ、これが試される大地ジャパリパークなのかと。筆者は限界であった。意外とサーバルちゃんの声は棒読みには聞こえなかった。多分疲れていたからなのかもしれない、そのときは。

翌日も残業続きで仕事も上手く行かず、アルコールを浴びて飲むかのようにけものフレンズ2話を気がつくと見ていた。妙に声が耳に残るのが気になるがそれ以上に図書館というワードが仕事柄気になっていた。それにキャラクターが出る度に動物の分類学的情報が出るのが「このアニメは単なる擬人化美少女ジャンルとは違う」と思わせるには十分すぎたのだ。「わーい!たーのs...なんだこのエンディングは!?」キュートな画面から一気に切り替わる実写とモノクローム組み合わせは人類文明が辿ったと思しきカタストロフィーを想像させる。更にはオープニングの賑やかさとは一線を画す豪放なギター・ロックと対象的でキュートなヴォーカルは筆者の耳に強く刻まれた。可愛い声の向井秀徳、いやそれとも違うタイプの凄みがある、何なんだみゆはんというアメイジング・ヴォーカリストは、と。

けものフレンズを見ているうちに筆者は動物園に足を運ぶようになった。きっかけはけものフレンズであることは否定のしようがないが、動いている生の動物が見たくなったというのは本心である。サーバルキャットを見ることは出来なかったが、それ以上に現実の仕事で詰まってた筆者にとって動物を知るというサイエンスの視点が助けになったというのもある。

以後もけものフレンズを見続けていたが、妙に引っかかるものがあった。これもしかしてSFなのでは?と。全体としてはかばんちゃんとサーバルちゃんのロードムービーとしての趣があるのだが、4話でツチノコと共に示された文明の遺構や文明を認識しているフレンズなど、SFのガジェットがやたらと興味を惹かせるのだ。SF要素は好きな人はとことんハマる、それをニンジャスレイヤーでそれを十分承知していたのでこうなるともうジャパリパークからは逃れられない。おれはもうけものフレンズに夢中だ!としか言えないくらいにのめり込んでいた。

人間は考える葦である、とはフランスの著名な哲学者ブレーズ・パスカルの名言であるが実際のところ人間は葦と違って言語と文字があるので考えたことを吐き出したくなるものだ。#けものフレンズ考察班 なるハッシュタグが存在することを知ったのは10話~11話辺りだが自分が見ていなかった視点からけものフレンズという作品の感想をリアルタイムで見られるってのは新鮮だ。一人の視点だけでは気付き得なかったポイントを共有し考察を深める、サイエンスに限らず研究全般で用いられる手法である。

考えれば考えるほど深みにはまる、というのは良くも悪くも熟考のそれではあるが実際話が面白くて興味をそそられるガジェットに満ち溢れているからでありこれだけ創作作品で色々考えを巡らせ感想を投げつけたくなったのは昨年末FGO1部最終章クリア後に感極まってしまった時以来である。

最初は違和感を感じたサーバルちゃんの声も「人間化した動物の声」というおそらく人類が一度も聴いたことのないチャレンジングな取り組みの結果生まれたということを知ってからは自然に聞こえるようになり今となってはサーバルちゃんの声が本当に癒されるようになっていた。尾崎氏の間が抜けているかのようで芯が鋭い演技はプロの業そのものである。

最終話ではかばんちゃんとサーバルちゃんが旅したちほーが実は試される大地ではなく実は九州地方をモデルとする地域だったというのは驚きだったが確かに言われてみればサンドスターが噴出する火山は阿蘇山と言われれば納得がいく。11話段階では富士山近辺説が唱えられていたがそもそも九州ならば巨大島なのでスクライドのロストグラウンドのように無理矢理周辺地域から切り離さなくても説明がつく。11話で物議を醸したB-2と思しき爆撃機の残骸やBoston Dynamics社のBigdogに似た巨大セルリアンはもしかしたら普天間かグアム絡みだったのか、想像は絶えない。

全体的にけものフレンズという作品は牧歌的なロードムービーという印象だった。素朴でありながらもアクセントに富み、最初から最後まで飽きさせない作りだったのは監督のたつき氏、脚本の田辺氏、そしてプロジェクトを動かしたプロデューサーの福原氏の御業としか言いようがない。吉崎先生といえばケロロ軍曹のイメージが強い人が多いと思われるが、個人的にはドラゴンクエストモンスターズ+の印象が強い(当時ガンガンで連載を読んでいたので)。動物の特性を個性としてキャラクタリゼーションしたけものフレンズ、生物としてのモンスター描写が印象的なドラゴンクエストモンスターズ+、これら2作品で感じたのが「吉崎先生本当に動物が好きなんだ」という一面だった。

アプリ版はサービス終了までに触っておきたかったがアニメ版でけものフレンズを知ることが出来たのは僥倖だったし、何よりかばんちゃんとサーバルちゃんが尊すぎて最高に完全だった。それに動物というジャンルはおそらくコンテンツにおいてはネタの宝庫(何しろ地球46億年のうちの5億年くらいの部分から切り取ってフレンズにしてるのだから)だと思ってたりする。

長々と書いていたらまた何度目かの1話が見たくなってきたので最後に1話のリンクを貼って締めとしよう。 http://www.nicovideo.jp/watch/1484126967



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?