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慢性炎症性脱髄性多発神経炎のリハビリ

この記事では慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)についてご紹介して行きます。この疾患は指定難病に登録されており、根治的な治療法が確立されていません。しかし、症状をコントロールし、さらにリハビリを行うことで日常生活をはじめ体の機能を維持したり、改善の程度に大小はありますが運動機能の改善が見られることもあります。ここでは、どのような病気なのか、そしてどのように運動を進めていくべきなのかを紹介していきたいと思います。是非罹患されている方やセラピストの方に参考にして頂ければ幸いです。

それでは行ってみましょう。

→慢性炎症性脱髄性多発神経炎(以下,CIDP)は神経の脱髄による末梢神経症状を呈することが身体全体の機能や運動機能に影響を与え,日常生活に不自由を呈することが問題となります.
日本神経学会のガイドラインでは古典的CIDPと典型的CIDPに分けて症状の分類を行っている.以下に特徴を述べる.
典型的CIDP
左右対称に生じる多発的な神経障害が特徴(対称性多発神経障害).
・左右対称性で近位,遠位筋共に筋力低下を生じる
・左右対称性の感覚障害(感覚鈍麻,しびれ,痛みなど)
・腱反射の低下or消失
・深部感覚障害(振戦,失調の原因となる)
・脳神経障害
・自律神経障害
非典型的CIDP
神経障害が対称性ではなくあらゆるパターンで生じる.多巣性後天性脱髄性感覚神経運動障害
・遠位優位型(手足の先の筋力低下)
・非対称性(左右ではなく片側に症状が出る)
・限局性(四肢の限られた部位に症状が出る)
・純粋運動型(運動神経に関わる動きが障害される)
・純粋感覚型(感覚に関わる機能に影響が出る)
・疫学
日本では平成26年度医療受給者証保持者(患者数)は4633名とされています.
2004年9月から2005年8月の厚生労働省免疫性神経疾患に関する調査研究班による全国調査の結果日本での有病率は人口10万人あたり1.61人とされています.性差は少々男性が多く発症年齢は2~70歳までと幅広い年齢層で発症しています.2015年に100人のCIDP患者への調査で典型的CIDP:60%,MADSAM(多巣性後天性脱髄性感覚神経運動障害):34%,DADS(遠位後天性脱髄性対称性の神経障害):5%,純粋感覚障害:1%であった.しかし,全国の患者を対象としたわけではないのであくまでも傾向であると考えられます.世界でもCIDP患者はいて,イギリスでは10万人あたり2.84人,アメリカのオルムステッド郡では10万人あたり8.9人,アイルランドでは10万人あたり5.87人と報告されているようです.地域によって発症率は異なっていますが,環境と発症との因果関係は証明されていません.

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