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【創作タイム】あけまして創作

こんにちは、PJです。
大変な始まりとなった本年。
『おめでとう』という言葉が適切かどうかわかりませんが、昨年もお世話になった皆様、改めまして『今年もよろしくお願いします』m(__)m

さて、年明けからは長編に向かい合っていて、なかなかnoteの創作に来ることができませんでした。
もともとは4万文字の中編でしたが、9万文字まで増え、なんとか形もまとまってきました。
そろそろ最終チェックをして出荷する予定です。

で、久しぶりに自分の企画に戻ってきたので、昔話風短編を出させていただきます。多分1500文字ぐらいだと思います。
これまで『スズムラ』さん→『大橋ちよ』さん→『ミテイナリコ』さん→『rira』さんと続いてきたバトンを受けての創作です。
形としては『大橋ちよ』さんのストーリーにインスパイアされてできた昔話です。
大陸で起こった小さな悲劇。反目し許し奪い合うキヨと明の物語。はたしてそれは偶然の一致なのでしょうか……?

それは大陸での昔の話。

 王の妾であった『キヨ』は誰よりも美しかった。出生こそは庶民の出であったが、『清国(チイン)の美』と称され、妾の頂として王の寵愛を受け、奥の宮殿で何不自由なく暮らしていた。
 しかし、どれだけ妾の中で秀でていようと、正妻である隣国の姫『明(ミイン)』のように王の宮殿に入ることは許されていなかった。気の強いキヨにはそれが許せなかった。『清国の美』である自分こそが最も王の宮殿に相応しいと思っていた。
 明は決して美しい娘ではなく、そこに引け目を感じていた。自分よりも美しい妾のもとに王がいりびたっているのをよしとせず、キヨが絶対に王の宮殿に入らないようにと王や周りの者に常日頃から言い続けていた。
 王の妾はどれだけいるかわからなかったが、毎年のように新しい娘が増えているようだった。妾としての適齢期の時期は決して長くない。それでも妾達は王が夜伽に来なくなった後も、奥の宮殿や王の宮殿で働かせてもらった。王のその寛大な心に、妾達は皆感謝をしていた。
 ある夜、いつものようにキヨの寝屋に来た王に、キヨは「私も王の宮殿に暮らしたい、もし無理であれば、引退後に王の宮殿で働きたい。私はいつでも王の近くにいたい」と言った。
 王は「考えておく」と言ったが、その日からキヨの寝屋に来ることが無くなった。
 キヨはたいそう悲しんだが、しかし奇跡的にその夜の夜伽で王の子を身ごもっていた。王は子供ができにくい体質であり、正妻との間にいる男の子が唯一の子供であった。
 妊娠がわかった後、キヨは王の従者に王に来てもらえるよう何度も頼んだ。しかしそれでも王がキヨの元に訪れることはなかった。
 キヨは男の子を生んだ。その子を抱いた時に母性に目覚めたのであろう、やがてキヨは王が来ずとも子供さえいればいいと思うようになった。
 キヨは子供に明(ミイン)と名付けた。ほかの妾がその名の理由を聞いた時、キヨは「正妻である明(ミイン)を許せるようになりたいから」と答えた。その顔にはこれまでのキヨからは見たことがないような、柔らかな笑顔があった。
 キヨの息子が一歳になったある日、王の従者が来て息子を引き渡すように言った。正妻であった明(ミイン)の一人息子が亡くなったので、キヨの息子が太子として受け入れられることになったのだ。
 キヨは王のもとに行けることに大いに喜んだが、王の従者は「この子は正妻の子供として育てられる」と言い、「これからもお前は奥の宮殿で暮らしてもらう」と言った。
 その言葉を聞いて、キヨは引き渡しを拒んだが、次は王の近衛兵がやってきて、無理やり息子を連れて行った。
 キヨはそれから毎晩泣いた。周りの者が慰めたが、食事もとらずに段々と痩せていった。その姿は『清国の美』とはとても言えない、惨めなものであった。
 王はそれを聞き、貴重な愛玩動物である『猫』をキヨに贈った。子供が死んだ者に愛玩動物を渡すと、子供の代わりに育て、元気になると言われていた。
 キヨは初めはその愛玩動物を、無視していた。近づいてきても蹴とばし、相手にしなかった。それでも愛玩動物はキヨの元を離れず、ネズミを捕ってきたり、身を摺り寄せたりして、その愛情をキヨに向けた。
 やがてキヨはその愛玩動物と戯れるようになった。それは時には優しく撫で、時には蹴りつけるという、支離滅裂なものだった。自分で蹴飛ばし、その後に抱きしめた。愛玩動物は抱きしめられると、嬉しそうにキヨの手や顔を舐めた。
 ある日、王の従者がキヨの元を訪れた時、その手には愛玩動物の躯があった。従者が何ごとかと問うたが、キヨは泣きながら愛玩動物に話しかけるだけで、従者の方を振り返ることは無かった。 
 キヨは愛玩動物の体を撫でながら、その名であろう『明(ミイン)』と言う言葉を、何度も何度も繰り返し呼び続けていた。

『奥の宮伝記/PJ』より

普段は一人称の小説しか書かないので、うまくいったかはわかりません。
最後まで読んでいただきありがとうございましたm(__)m


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