この伝説の扉を開けたら勇者がいて抱きしめて安心させてくれればいいのにきっと、ぎらりと笑う魔物が玉座に座ってて少年から尊厳を切り取っていくんだ。 スキスキスーフワフワフー 少年の小さな剣は魔物を惑わすことはできるけど倒せはしない。 空の色と春の香り混ぜてみれば恋の予感 鈍い痛みに慣れてきた頃には朝を迎えていて、でも帰る場所なんかなくて街をさまよいまた魔物を探す旅に出る。 つまづいた瞬間悔しさ噛み締めて笑顔見せる泣きながら MP3プレイヤーから流れるけいおんで現実との境目に触れて
家無し金なし職なし土地なし車なし 独身20代友人も同僚もいない。 でぶ。偏食。包茎。精神障害。 ひとりでハッピー・ジャムジャムを踊っている。 学生のときに親に買ってもらったメガネを掛け、 俊足みたいな靴とすでにゴムがのびきったパンツを履き 色褪せたシャツを着ている。 人より多く喋るタイプのコミュニケーション障害。 常に独り言を話しニヤニヤしている。 人より秀でたところがない。少ない知識でマウントを取る。 くだらない嘘を付く。 すべての知り合いにバレている。 自分は特別な人間な
全部妄想だけどさ 溝ノ口のバス停で待ち合わせしてさ、川崎まで行こうよ 川崎の美味しいイタリアンでコース料理なんか頼んだりしてさ、帰りに温泉に入ろうよ ディズニーランドから横浜までタクシー飛ばすから怒ってよ きっと飛行機がなくなって路頭に迷うから実家に連れて行ってくれよ 下手くそなオムライスが美味しいよ 弟とスプラトゥーンやろうよ ディズニーで買ったおそろいのカチューシャをぬいぐるみにつけててよ 子安駅から商店街をぬけて丘を登ったところにあるアパートにおいでよ 借りたてだから家
全部妄想だけどさ 麻生のボウリング場に行こうよ 新道東のイオンモールに入ってるサーティーワンでアイスケーキを買おうよ 百合が原公園でシャボン玉を飛ばそうよ 狸小路のメガドンキでクライナーを箱買いしてさ、同棲禁止の寮でこっそり暮らそうよ 毎日ご飯用意して待ってるからさ シングルのせめぇベッドで布団取り合おうよ 家の裏に停まってる車が86か85かで揉めようよ それで同棲バレて家なくなったり、君が働く病院に緊急搬送されたり、浮気現場見ちゃったりしてさ、日常をぶち壊してよ 泣きながら
やばい。 人が来店するたびにドーンと太鼓を鳴らすタイプのお店だ。女は大喜びしている。 僕は焼いた海鮮が嫌いなのだが焼き物を頼まないと失礼な出で立ちのお席だったので女が貝や鹿肉を頼む中、しぶしぶサーモンハラスを頼む。 サーモンハラスは網の端っこでゆっくり焼いてくださいと店員言われてもこちらはサーモンハラスの食べごろなんて知らないし店員に聞くのは恥ずかしいのでとりあえずサーモンハラスを網の端っこに置くがやはり鮭は皮のところがパリッとしていてほしいので少しだけ網の中央に鮭を寄せたい
自分の手が自分の手なのか分からない 今立ってる場所が球体の辺なのが分かる 靴ってどう履くんだっけ 雪が集められて山になっている 何かがあそこから出てくるかもしれない 雪解け水に滑り止めの砂利が混じっていて足を切った いつの間に電車に乗っている 電車に落ちてる薬の抜け殻が誰のものか分からない 家の鍵かけったっけ 阿部真央が爆音で頭に流れている 乗客全員に聞こえちゃうんじゃないかってくらいに 怖い怖い怖い怖い なんで電車乗ったんだっけ どこに行くんだっけ 窓にはスウェットだけで裸
TikTokerのmumeiちゃんが同じ学校でなくてよかった。 多分、隠れてmimeiちゃんのTikTok見てるところを同級生に見つかって末代までいじられると思うから。 多分、mumeiちゃんとすれ違った時に鼻をヒクヒクとさせているところをmumeiちゃんに気づかれて気持ち悪がられると思うから。 多分、バレンタインにmumeiちゃんから義理チョコ貰ったお返しを1ヶ月悩みすぎて結局渡せなくなっちゃうと思うから。 多分、てか、バレンタインはほかの男子は貰いに行けるけど僕は
君の大好きがどんな意味でも僕はシンナーが入ってた袋みたいに飛んでってしまうんだ 僕の大好きが軽くてごめんね 君の大丈夫がどんな意味でも僕はガンジャが入ってたパケみたいに落ちてってしまうんだ 僕の大丈夫が重すぎてごめんね 君とのLINE通話が切れる音で僕はチャリをこぐのを辞めるんだ 僕と通話する時に時々、自転車こいでてごめんね
友人の家にいる時に誰もが思う。 「このまま家に帰らずに一人で生きていこう。」 幸いにも2泊分のパンツを持っていた。 僕は輸出入業を営む祖母とIT企業を営む父を持つ社長御曹司である。 私立幼稚園、小学校、中高一貫校に通わせて頂き、履歴書を見せると面接官が顔をしかめる程のぼんぼんコースであった。 幼少期からバレエやピアノ、乗馬を習い人生は全て安泰に進んでいくはずだった。 今思えば僕の人生が狂い初めていたのは幼稚園の証明写真でベロを出したとこからなのではないか。 結果的に発達障
娘は亡くなりました。 そう聞いたとき僕はなぜか安堵のため息をついた。 そうか、やり遂げたのだな。なんて思ったふりをした。 彼女と初めて会ったのは数年前の春。 まだ少し寒い東京の家庭裁判所だった。 ちょっとしたミスで勾留されていた彼女が神妙な顔で証言台について裁判官と向き合っている。 すべて打ち合わせどおりに話すだけの小芝居を終えた彼女と歌舞伎町の黒人から1g8000円の大麻を引き、古いラブホで吸ってホテルを血まみれにした。 写真をたくさん撮った。 彼女はずっと希死念慮が強
これは僕が残した言葉である。 「異食症」という病気をご存じだろうか。 食用ではない栄養価のないものを食してしまう病気である。 治療法が明確に確立されていない病気で今まさに苦しんでいる人も読んでくださっているのではないだろうか。 僕はこの自分語りを書きながら輪ゴムを食べている。 残念ながらお涙頂戴の闘病日記や○○食べてみた系の文章ではないのであっさり読んでいただきたい。 消しゴムは異食症のキャンディー 異食の一番古い記憶は小学一年生の時だ。 授業中に堂々と消しゴムを食べてい