【1日1文献】生活行為向上マネジメントを用いて重度訪問介護の利用による外出支援を実現した長期療養患者の事例#多職種連携#脊髄損傷#長期入院

参考文献:生活行為向上マネジメントを用いて重度訪問介護の利用による外出支援を実現した長期療養患者の事例
筆者:村田 明穂清水 拓人
発行日:2021年
掲載元:作業療法 41 巻 (2022) 1 号
検索方法:インターネット
キーワード:(障害福祉サービス)多職種連携脊髄損傷長期入院気づき

【抄録】
・長期療養目的で入院している脊髄損傷患者を担当した.事例は外出を希望していたが,外出を行うにあたり移動や吸引の介助が必要であり,定期的な外出が困難な状況であった.
・また障害が治らなければ日常生活動作や自身のやりたいことはできないという信念を持っており,自身で行える動作も介助者に依存していた.
・今回,生活行為向上マネジメントを用いて,重度訪問介護の利用による外出支援を実施した.
・その結果,定期的な外出が可能となった.また自己効力感が向上し,自身のことは自身で行うという行動変容につながった.

メモ
・重度訪問介護とは,「重度の肢体不自由者又は重度の 知的障害若しくは精神障害により行動上著しい困難を有する障害者であって常時介護を要するものにつき, 居宅において入浴,排せつ及び食事等の介護,調理, 洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談及び 助言その他の生活全般にわたる援助並びに外出時にお ける移動中の介護を総合的に行うとともに,病院等に 入院又は入所している障害者に対して意思疎通の支援 その他の支援を行う」障害福祉サービスの一つである.

・これまで外出支援に関しては,外出により在宅高齢者の QOL が向上したとの報告 3,4)や,生活行為向上マ ネジメント(Management Tool for Daily Life Performance;以下,MTDLP)を使用した集団での外 出支援により精神科長期入院患者の外出に対する自信 が向上したとの報告 5)がある.

・今回,MTDLP を用いて意味のある生活行為を抽出し,その生活行為が自律して行えるように支援したことで,事例の自己効力感が向上し,行動変容を促すことができた.
・山本 6)は,脊髄損傷に対する認知作業療法の意義と役割について問題解決に向けた気づきや行動変容を引き出すことが OTR の重要な役割となると述べている.

・櫻井ら7)は MTDLP の利点について、以下のように述べている
①残存機能の把握や障害の予後予測を整理することで問題点を明確化し,徹底した環境設定のもと適切 なプログラムを立てられること
②症例や家族,多職種の役割を具体化できること
③意味のある作業の選 択により症例の積極的な訓練参加が可能になること.
・今回の事例においても外出練習や電話連 絡で生じた問題点についての振り返りや生活行為向上 マネジメントシートを用いた予後予測の説明により, 自身の能力に対する「気づき」を促すことができ,事例の積極的な訓練参加につながったと考える.

・坂 野 8)は,自己効力感が変化する情報源には,以下があると述べている
①遂行行動の達成(振る舞いを実際に行い,成功体験を持つこと)
②代理的経験(他人の行動を観察すること)
③言語的説得(自己強化や他者からの説得的な暗示)
④情動的喚起(生理的な反応の変化を体験してみること)
・段階的な外出範囲の拡大による遂行行動の達成や脊髄損傷者との交流による代理的体験,自身の能力に対する振り返りによる言語的説得,できたことに対する称賛による情動的喚起により,徐々に自己効力感が向上していったと考える.

参考URL:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jotr/41/1/41_70/_pdf/-char/ja


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