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プラプラ堂店主のひとりごと⑤

〜古い道具たちと、ときどきプラスチックのはなし〜


抹茶碗のはなし

 環境の本を読んだりプラスチックに関する記事を調べるうちに、だんだん嫌な気持ちになってきた。(プラスチック容器のリサイクルはエコかも!)とか思っていたら、ほとんどのプラスチックからは体に有害な毒素を出しているらしい。だからレンジで温めるのは、特にやめた方がいいとある。そりゃ、使い捨てになるよなぁ。使い回しなんて、できないじゃん。そして、毎日のように飲んでいたペットボトルからも微量の毒素が出ているらしいし。地球への負担だけじゃなく、身体へも害があるなんて。だいたい改見回してみると、僕たちの日常に使っているものは、ほとんどプラスチックだらけじゃないか!
 は~。また、いつもの思考停止状態。もう、どうしようもないよ。エコバックは持っているし、ペットボトルもなるべく買ってない。もう十分でしょ…。なんか、疲れた。

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 プラスチックのことは、もう考えないことにした。そして数日が過ぎた。でも、時々、誰かに責められているような罪悪感が押し寄せてくる。この罪悪感は‥たぶんプラスチックのことだけではない。もうずいぶん前から、ぼくの中にあるんだ。そして、ことあるごとに顔を出してくる。うっすら気が付きながら、知らん顔をした。

(めんどくさい…)

 そんなふうにやり過ごしてだんだん何も感じなくなった頃、ふと抹茶碗に話してみた。
「あのさぁ、今、地球環境がけっこう大変なことになってるんだ。二酸化炭素のこととかいろいろあるんだけど。プラスチックゴミもその一つでさ。こんなに使っているのに、ほとんどリサイクルできていないみたいだし。海に漂ったり、発展途上国では処理できなくて大量に積まれていたり。この間、うちにきたガラス瓶の話では、夜の海にプラの泣き声が聞こえるんだって」
「まあ!なんでそんなにたくさんゴミにするんです?また使えばいいのに」
「プラは使い捨てなんだ」
「使い捨て。悲しい言葉ね。魂も宿れず、ただ捨てられるなんてねぇ」
「うん。でも、便利だから」
「便利、ね…。プラスチックに罪はないのに。人間の便利のために使われて、その後厄介ものになって。その上、地球にも戻れず泣いているなんてかわいそう」

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 ぼくは返事をしなかった。なんだかまた責められているような気がしてムッとした。ぼくにどうしろっていうんだろう。ぼくの気持ちが伝わったのか、抹茶碗は言った。
「あなたを責めているんではありませんよ」
「…うん」
「気になっているなら、あなたが出来ることをやればいいんです」
 抹茶碗は言った。あたたかい何かが伝わってきた。本当にぼくを責めているんじゃなかった。ただ、背中を押してくれているんだ。ぼくは抹茶碗を手にしたまま、じっとそれを感じた。
 いつだって、そうだった。ぼくは、ここでやめてしまう。(めんどくさい)と。でも。このままでいいのか?いや、地球環境のことじゃなくて、ぼくが。何かやろうとする時に、いつも(めんどくさい)と逃げる。本当は…きっと怖いんだ。だからその前に(めんどくさい)と投げ出す。そうして、前に進めない自分をいつもどこかで責めるんだ。
 ぼくの問題は、プラスチェックのことではないかもしれない。でも。今、ここで(めんどくさい)と、自分の気持ちを無視したら、前の仕事を辞めた時と同じになる気がした。
「…やってみるよ。出来ること、考えてみる」

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