太秦ライムライト(2014) 感想

『5万回斬られた男』こと、時代劇の斬られ役俳 優福本清三を主役に、数多くの名作時代劇を生んだ京都太秦を舞台に、時代劇を支えてきた人々の姿をチャールズ・チャップリンの『ライムライト』をモチーフに描いた作品。
ジャンル映画を対象とした『ファンタジア国際映画祭』で昨年、シュバル・ノワール賞(最優秀作品賞)と、日本人初の最優秀主演男優賞を受賞した。

あらすじ

かつて「日本のハリウッド」と呼ばれた京都太秦だが、時代と共に時代劇の需要は減っていた。
太秦の日映撮影所に所属する香美山(福本清三)は斬られ役一筋のベテラン大部屋俳優だが、時代の流れとともに仕事は減り、長年続いたテレビ時代劇『江戸桜風雲録』も打ち切られてしまう。

斬られ役としての出番を完全に失った香美山は、映画パークのチャンバラショーに出演することに。
映像作品での出番もなく、年齢とともに肘の古傷も悪化していくそんなある日、香美山は新人女優の さつき(山本千尋)と出会う。
どんな状況でも稽古を怠らないその姿に惹かれたさつきは香美山に殺陣の指導を請い、二人はいつしか師弟関係となる。
やがてさつきが時代劇で演じた殺陣をきっかけに、東京で活躍しスター女優として活躍するのを、引退を決めた香美山はテレビで見ているのだった。



これが本当のラストサムライだ」と言っても過言ではない映画でした。
ただし、主役は悪い代官や大店の店主に雇われては、正義の味方である侍に切られ続けてきた男です。

主役の香美山を演じる福本清三さんは、1943年生まれの御年72歳。
キャリア50年以上の大ベテランながら、そのほとんどは時代劇・現代劇を問わず「斬られ役・殺され役」という、まさに香美山そのものの人生を歩んできた人で、そんな長年の積み重ねの結果『ラストサムライ』や大河ドラマへの出演に繋がるという、まさに本作を体現しているような人です。

そんな『本物』が演じるからこそ、劇中で香美山が見せる刀を構える立ち姿や立ち回り、支度部屋での化粧姿、何てことないシーンで見せる味わい深い表情といった「佇まい」にリアリティーと深みが出ているんでしょうね。

本作では、そんな福本さんの演技に、新人ながら太極拳の大会で数々の実績を残してきた山本千尋や、大ベテランの松方弘樹、その他にも 峰 蘭太郎など時代劇の黄金時代を支えてきた『本物』の人たちが花を添えます。

ストーリーは、一つのことを真面目に取り組んできたにも関わらず、時代の流れに置いて行かれた男が報われる。というとてもシンプルで、ある意味 時代遅れともいえるものです。
その時代遅れなストーリーそのものが予定調和なストーリーの多い時代劇の暗喩にもなっているし、若い役者さんやスタッフの人たちが若い観客のために作る『ネオ時代劇』への強烈なアンチテーゼにもなっているんですね。

そういう意味では本作は復活後のスタローンが制作した『ロッキー・ザ・ファイナル』や有川浩さんの『三匹のおっさん』の系譜の映画とも言えるかも。

もちろん『ネオ時代劇』が一様に悪いという単純な話ではなく、時代のニーズに合わせて変わっていく事で観客を取り戻すのは大事なことですが、やっぱり『本物の時代劇を知ってる』人にしか出せない迫力や空気みたいなものもあるんですよね。

とはいえ、ストーリー的に「あれ?」って思うシーンもあって、特にそれまで『古い時代劇』に否定的だったプロデューサーの態度がコロっと変わっちゃうシーンなんかは、その前に一つエピソードを入れて飲み込みやすくして欲しかったなーと思ったりもしました。

でもまぁ、そんな細かいことはどうでもいいんです!
福本さんが編み出した「海老反り斬られ」を始めとした、見事な『技』の数々を、迫力満点の殺陣とともに楽しむことが、この映画の正しい楽しみ方ですから!

時代劇に興味のある人もない人も楽しめる映画だと思いますので、興味のある方は是非!!

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