映画の話

プロジェクトA

#映画

ぷらすです、こんばんは。

前回、シルベスタ・スタローンの話を書いたので、今回はジャッキー・チェンの話を書こうと思います。

僕が、ジャッキー・チェンの映画を初めて観たのは「ドランクモンキー酔拳」でした。制作順でいうと「スネークモンキー蛇拳」が先なのですが、日本公開は「酔拳」の方が先だったんですね。

僕が最初に香港映画の洗礼を受けたのは、ブルース・リーの「燃えよドラゴン」でしたが、世代的にはジャッキー・チェンの方がドンピシャだったりします。

ブルース・リーのシリアスでストイックなスタイルとは対照的に、ジャッキーの「酔拳」は今まで見たこともない拳法と動きに、笑いの要素をミックスした(日本では)全く新しいタイプの映画で、僕は一発でジャッキーの虜になったのです。

この「酔拳」が大ヒット、続いて公開された「蛇拳」でジャッキーのスタイルは広く認知され、その人気に次々と過去作品も公開され、そして「クレージーモンキー 笑拳」「ヤングマスター 師弟出馬」「ドラゴンロード」では監督、脚本、主演を兼任し、カンフースターとしての人気を確固たるものにしました。

そして、上記三作品での「実験」を経て、ジャッキーは新たな挑戦をします。今までの「カンフー映画」から、「カンフーを使った」アクション映画にシフトしたのです。

その転換期にして、僕がジャッキー・チェンの最高傑作と思っている作品こそが「プロジェクトA」です。

この作品でジャッキーは、脚本、監督、主演、武術指導、主題歌と一人五役を努めます。(噂ではケータリングまでしてたとかしてなかったとか)しかも、有名な時計台からの落下シーンを始めとした、命懸けのスタントの数々でファンの度肝を抜いたのです。

20世紀初頭のイギリス植民統治下の香港、我が物顔で海を荒らしまわっていた海賊を捕まえる為に、水上警察のドラゴン(ジャッキー)、陸上警察のジャガー(ユン・ピョウ)、海賊の財宝を狙うコソ泥のフェイ(サモ・ハン・キンポー)を中心に、水上警察の選抜メンバーが「プロジェクトA」を実行するというストーリー。

そのインパクトから時計台のシーンばかりがフィーチャーされがちだし、もちろんあのシーンは凄い。凄いけど違うんです。

この映画はそもそも、舞台設定、キャラクター配置、ストーリー、アクション、スタント、全てが素晴らしいんですよ!

ドジばかりで香港警察のお荷物扱いだった水上警察が、ある事件をキッカケに再び立ち上がる復活物語であり、反目しあっていた陸上警察の隊長やコソ泥と協力して事に臨むバディー(というかチーム?)ムービー要素もあり、海賊仲間に変装して海賊の島に潜入するシーンはある種のケイパーもの(犯罪の映画、特技のある奴が集まって計画を実行する映画的な意味合いもあり)の要素もあり、スラップスティックコメディー(体を張って笑いを取るドタバタコメディー)でもあり、もちろん他に類を見ないアクション映画でもあり。

これらの要素が全て噛み合って、オープニングからエンディングまで、流れるようなストーリー運びで映画を盛り上げていくのです。

特に、アクションでは、これまでのカンフー映画で培ってきたノウハウをさらに進化させて、椅子、机、自転車、花瓶、壁、階段などなど、身の回りにある、あらゆる物を使って敵と戦う、ジャッキー独特のアクションを完成させたのです。あの有名な時計台のシーンは確かにインパクトが凄いですけど、あくまでその延長線上にあるワンシーンなんです。

さらにこの映画を語るとき、サモ・ハン・キンポーとユン・ピョウの存在は欠かせません。三人は同年代のライバルで、文字通り同じ釜の飯を食った仲間でもあります。サモ・ハンは「燃えよデブゴン」ユン・ピョウは「モンキーフィスト猿拳」などで、それぞれ主役として活躍していた大スターで、そんな三人が集まった本作はカンフー映画ファンにとって、まさに夢の共演でした。

三人の掛け合いやアクションシーンは息ピッタリで動きもキレッキレ、今観ても古びた印象はまったく受けません。酒場?でジャッキーとサモ・ハンが共闘するシーンや、三人が海賊の大将(ディック・ウェイ)と対決するラストシーンなんか、もう、それだけでご飯三杯はいけますよ。

この作品の一年後、ジャッキーもう一本の代表作「ポリスストーリー」が公開され、彼のアクションスターとしての地位は不動のものとなり、その後、次々に新しいアクションやスタントでファンを驚かせるわけですが、正直、「ポリスストーリー」以降の作品は、アクションの方に比重が行き過ぎている感は否めません。(アクション映画なんだからそれで正解かもしれませんが)

ジャッキー・チェンの代表作といえば?と聞かれ、多くのファンは「ポリスストーリー」を挙げると思いますし、僕も大興奮した大好きな映画ですが、一本の映画として観たとき、キャスト、アクション、ストーリー、そして時代と心意気、そうした全ての要素が奇跡のようなバランスで揃った、この「プロジェクトA」こそが彼の最高傑作だと僕は思います。

ではでは。












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