インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌(2013) 感想

#映画

コーエン兄弟作品。
直接は描かれてないけど、(多分)相棒の自殺後ソロとして活動するも売れず、友人の家を泊まり歩くフォークシンガーの主人公の一週間の物語。
実在のフォーク歌手デイヴ・ヴァン・ロンクの自伝をヒントに作られた(らしい)ある種のロードムービー?かな。

サクセスストーリーという訳ではなく、むしろ「夢」に縛られ続ける男の姿を淡々と、ときにユーモアを交えて寓話的に描いている。
主人公ルーウィンは、とにかくずっと空回りしてて、やることなすこと裏目に出るとことん運のない男。
おまけに、いい歳なのに地に足がついてなくて、運の悪さもほぼ自業自得なんだけど、「あー、こんな奴いるわー」と納得しちゃう実在感がある。っていうか、どこかしら観客にも心当たりがあるような「あるある」満載なので、感情移入は出来なくても、完全な他人事として笑い飛ばしきれない感じ。
個人的には、いよいよ立ち行かなくなって船員として働く決意をしたルーウィンが、友人の奥さん?で歌手仲間のジーンに、「疲れた」というシーンにグッときた。

物語の随所に猫が絡んでいて、映画の半分位ルーウィンは猫を抱いて移動してる。ぬこ可愛いよぬこ。
多分この猫は、自由で勝手気ままでいい加減な主人公、ルーウィンのアイコンとして描かれてるんだろうと思う。

この映画は、いわば夢を掴みそこねた男の物語なんだけど、「夢」の持つ残酷さを強調する意地の悪さがなんともコーエン兄弟らしい。
大きな山谷のあるストーリーじゃないけど、鑑賞後もしばらくは心に残る映画。

主演のオスカー・アイザックの歌声は素晴らしいので、一聴の価値アリ。

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