トゥルー・ロマンス(1994) 感想

#映画

「レザボア・ドックス」「パルプ・フィクション」のクエンティン・タランティーノ脚本、「トップガン」「ビバリーヒルズ・コップ2」のトニー・スコット監督による、バイオレンスラブロマンロードムービー。(長いわ)

あらすじ

コミックショップに勤める、映画オタクでエルビスファンのクラレンス・ウォリー( クリスチャン・スレーター)は、ある日、映画館でアラバマ・ウィットマン (パトリシア・アークエット)という女の子と出会い、恋をする。

アラバマは、コミックショップのオーナーがクラレンスの『誕生日プレゼント』として派遣したコールガールだったが、クラレンスの人となりを見て、本気の恋に落ちたことを告白、二人はその日のうちに結婚する。

クラレンスは、彼女のポン引き(ゲイリー・オールドマン)を殺し、彼女の洋服を持って帰るが、そのバックにはイタリアンマフィアのコカインがビッシリつまっていた。
二人は、このコカインを売ってその金で海外へ逃げようと、友人のいるハリウッドに向かうが、クラレンスのあるドジのせいで、マフィアにその事がバレてしまう。
映画の都ハリウッドで、二人とマフィア、ハリウッド映画のプロデューサーに警察までが複雑に絡んできて……。


映画はいきなり千葉真一の話から始まり、クラレンスとアラバマが出会う映画館では『激突! 殺人拳』が流れ、クラレンスの部屋には『カミカゼ野郎 真昼の決斗』『東京-ソウル-バンコック 実録麻薬地帯』のポスターが貼ってあったり、テレビでは「男たちの挽歌」をやってたり、クラレンスのコートが「タクシードライバー」のトラビスだったり。
主役のクラレンスに、「お前、タランティーノだろ!」とツッコミたくなるほど、全体的にタランティーノの趣味が反映されてる。

ポン引きを殺しに行くところも、「仁義なき戦い」を見た観客が菅原文太に成りきって肩で風を切って歩くみたいに、トラビスに成りきって「タクシードライバー」のノリそのままに乗り込んでいく。
で、普通なら逆に殺されちゃいそうなもんだし、実際ギリギリ状態だったけど、なんとかポン引きを殺し帰ってきたクラレンスに、アラバマはドン引きするどころか、「なんてロマンティックなの」とか言って惚れ直しちゃう始末。二人とも現実感がなくてフワフワしてるんだよね。
映画と妄想に明け暮れてるクラレンスも、(多分)ポン引きに恋して?コールガールになっちゃうようなアラバマも、どこか現実から浮いてて、そんな二人は、恋っていう「非日常」に落ちることで、自らを『物語』の中の登場人物にしてしまう。

彼らのとって、イタリアンマフィアに追われたり、盗んだ麻薬を売り飛ばすってのは映画の中の出来事で、その主人公に自分たちがなるっていうシチュエーションは、日本で言えば、ヒロインに導かれて異世界で異能バトルしちゃう深夜アニメのノリに近い。

つまり、この映画はオタクドリームを実現させたカップルのラブストーリーなんだよね。
それに巻き込まれたクラレンスパパやマフィア、警察、プロデューサーなんかはたまったもんじゃないだろうけどw

あと、やたら豪華キャストなのも、この映画の見所。
クラレンスパパにデニス・ホッパー、麻薬を追うマフィアにクリストファー・ウォーケン(この二人のやり取りは痺れる)、ポン引きにゲイリー・オールドマン、クラレンスの友達のルームメイトにブラピ。
ブラピは、ほぼカメオ出演みたいなもんだけどw

多分、タランティーノが監督もしてたら、もっと好き嫌いのハッキリしたクセの強い映画になってただろうけど、いい意味でも悪い意味でも、万人受けする映画を心得ているトニー・スコットが監督をすることで、残酷さよりポップさの方が前面に出てるような気がする。
(ラストシーンについて、タランティーノとトニー・スコットの間で、ひと悶着あったみたいだし)賛否は分かれるかもしれないけど、個人的には非常に面白い映画だった。

 

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