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ゴジラをポップにアップデート「ゴジラS.P」感想

ぷらすです。

先日の公開初日の朝一で映画「ゴジラvsコング」を観てきました。

レジェンダリー・ピクチャーズが手掛けた「モンスターバース」というシリーズの最新作にして、1962年公開の東宝映画「キングコング対ゴジラ」を最新テクノロジーで現代版にリブートした作品でもあります。

で、本作の公開から遡ること3か月前、今年の4月~6月にかけてTOKYO MX他で放送されたアニメが「ゴジラ S.P <シンギュラポイント>」だったんですね。
ぶっちゃけ、僕みたいなおっさんオタクは「え、ゴジラをアニメにする意味ある?」っていう老害丸出しな偏見があって、正直アニメ版ゴジラには懐疑的だったりしたんですが、放送前の評判も凄く良かったし、実際、この春のアニメの中で、個人的にはこの作品が一番面白かったんですよ!

というわけで、今回はこの「ゴジラS.P」についてざっくりと感想を書いていきたいと思います。

ゴジラの歴史と系譜

ご存じのように『ゴジラ』は太平洋戦争終戦から9年後の1954年(昭和29年)に公開した東宝の怪獣映画です。
1946年から1958年にかけて行われた、アメリカによるビキニ環礁での核実験と第五福竜丸、第十三光栄丸の被爆事件に着想を得たプロデューサー田中友幸が企画、本多猪四郎監督、特技監督に円谷英二という布陣で制作。
まだ東京大空襲や広島・長崎の原爆投下といった戦争の記憶も生々しい当時の日本人に、円谷英二のリアルな特撮効果を用いたパニック映画の形式を取りながら核兵器反対というテーマを真正面から打ち出した「ゴジラ」は空前の大ヒットとなり、以降、次々と続編が製作されていくんですね。

ただ、ゴジラが背負った「核の申し子」という設定は続編に引き継ぐにはあまりに重く、また”怪獣映画”というジャンルやゴジラというキャラクターが子供たちの人気を得たこともあって、シリーズは新作ごとに新たな怪獣が登場してはゴジラと戦う作品を乱造。それらは子供だましの低レベルな作品として「怪獣プロレス」の蔑称で呼ばれるようになります。

その後、昭和版・平成版・ミレニアム版と、ゴジラシリーズは休止と復活を繰り返し、その流れの中でゴジラには「核の申し子」から「外敵や人間から地球を守る守護者(バランサー)」という設定が追加され、レジェンダリー版ゴジラにもこの設定は採用されています。

そして、2011年の東日本大震災と東電の原子力発電所の事故を経た2014年。レジェンダリーの「モンスターバース」の1作目として、ハリウッド版の『GODZILLA ゴジラ』が公開。
1998年のローランド・エメリッヒ版『GODZILLA』の悪夢再来かという不安とハリウッド版ゴジラへの期待が交錯する中、大予算と最新CG技術で描かれた“ゴジラ“はファンの度肝を抜き、空前の大ヒットを記録。

この大ヒットを受ける形で2016年には「エヴァンゲリオン」の庵野秀明監督が、『シン・ゴジラ』で1954年の初代ゴジラ以来になる“核の申し子”としてのゴジラを復活させ、続く2017年から18年にかけて「マドカマギカ」の虚淵玄が原案・脚本を担当した劇場アニメ版『GODZILLA』3部作が順次公開。
2019年公開の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』を挟んで、2021年春、「モブサイコ100」などで知られるアニメ制作会社ボンズと、「宝石の国」で知られるCGアニメ制作会社オレンジの制作で、テレビアニメ版『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』の放送が開始されたわけです。

ジェットジャガーかよ!

「ゴジラS.P」は放映前からネットで話題になっていて、僕もTwitterで本作の事を知ったわけですが、最初に見たPVに衝撃を受けます。

「ジェットジャガーかよ!」と。

ジェットジャガーは1973年公開のゴジラシリーズ『ゴジラ対メガロ』で登場するロボットで、元々は日常生活の補助用として開発された遠隔操作のロボでしたが、組み込まれた”良心回路”によって奇跡的に自我に目覚めたことで(何故か)巨大化が可能になり、ゴジラと協力して敵のシートピア人が送り込んだ怪獣メガロとガイガンと戦う―――らしいです。

いや、僕もオタクの端くれとして一応、ジェットジャガーのビジュアルと名前くらいは知ってはいるんですが、映画の方は観たことがなくて。
なので、動く?ジェットジャガーを見るのは本作が初めてなのです。
それにしても、まさか48年の時を経てジェットジャガーが復活するとは思いませんでしたねー。

そして、本作ではジェットジャガー以外にも、『空の大怪獣 ラドン』(1956年)でソロデビュー後、数々のゴジラシリーズ作品に登場している人気怪獣ラドン
シリーズ第二作『ゴジラの逆襲』(1955年)以降多くの作品に登場する怪獣アンギラス
怪獣総進撃』(1968年)などに登場した龍型の怪獣マンダ
怪獣島の決戦 ゴジラの息子』(1967年)などに登場する蜘蛛型怪獣のクモンガなど、メジャー処からマイナーなヤツまで、本作には様々な怪獣が登場しているんですね。

ただ、これらの怪獣は序盤ではまだ僕らが知っているビジュアルではなく、どちらかと言えば恐竜に近いルックで、その後話数を重ねるごとに僕らが良く知る怪獣のビジュアルに近づいていきます。

それはゴジラも同じで、アクアテェリス(水生)→アンフィビア(両生)→テレストリス(陸生)→そして完全体のウルティマと序盤~後半にかけて4段階の形態変化をする様子はまさにシン・ゴジラ的と言えますが、そのどっしりとした筋肉質な体躯は平成ゴジラやミレニアムゴジラ、表情などは劇場アニメ版などなど、いわば歴代ゴジラの特徴全部乗せでありながら、そのデザインや色彩・設定などにはこれまでのゴジラにはない本作ならではの斬新さがあるんですね。

ゴジラS.Pって大体こんな話

2030年、千葉県逃尾市の町工場“オオタキファクトリー”に努める主人公の一人、有川ユンと相棒の加藤侍(ハベル)は怪しい洋館の調査中に不可解な電波を観測、同じころ謎の信号を受信した旧嗣野地区管理局“ミサキオク”には、もう一人の主人公で大学院生の女性研究者・神野メイが、教授の代理で調査に訪れていました。
全く別の場所で同じ“曲”を耳にするユンとメイ、そして、まるでこの曲に引き寄せられるように突如現れた翼竜によく似た怪獣ラドン。

この日を境に、世界の各地で怪獣が観測されます。怪獣は出現時に赤い霧、「紅塵」を纏っていてどうやらその紅塵には、怪獣を変化・進化させる不可思議な力があるらしい。

ユンは日本、メイは海外で、ユンが開発したコミュニケーション支援AI「ナラタケ」から生まれた人工知能・ユングペロ2を通して情報を共有しながら、ミサキオクの創設者で50年前に紅塵の研究を行っていた研究者・葦原道幸の足跡と、怪獣・紅塵・謎の物質アーキタイプの謎を追ううち、このままでは近いうちに世界の破滅が起こる事を知り――。

というストーリー。だと思います。多分。

いや、何て言うか本作の脚本は非常に理屈っぽいというか、序盤に散りばめられた謎が終盤に向けて回収されていくというパズル的な構成でしてね。
なので、最後まで観てしまえば「なるほど、そういうことか」となるんですが、観ている間は「え、え、どういう事だってばよ!?」って受け手が混乱するような作りになっているんですよね。

そんな本作のシリーズ構成・SF考証・脚本を担当したのは、SF作家の円城塔。恥ずかしながら僕はこの方の小説は未読なんですが、昨今の「分かる=面白い」的な時流に流されず、むしろ、本作を分かりづらさを楽しむエンターテイメントに振り切ってみせてくれたところに感動しましたよ。

そして、作中に張り巡らされた全ての謎が、最終13話のあのシーンだけの為の壮大な前振りだった事に気づいて、驚き、呆れ、そして感動するっていう。

さらに、ここからちょっとネタバレなんですが、本作における怪獣は高次元の存在であり、それはアニメという2次元の世界に現れた特撮怪獣=3次元の存在というメタ的な意味もあったりするのかなと思ったり。

つまり本作は“怪獣プロレス”としてのゴジラ過去作をミクスチャー的に批評しつつ、圧倒的なポップさでアップデートしてみせた、まさに現代に相応しいゴジラ作品であり、かつ、その設定やカット・シーンの一つ一つに何重ものレイヤーが重なっている多重構造になっているんですよね。

そういう意味で本作は、「え、ゴジラをアニメにする意味ある?」っていう老害丸出しな偏見を持っていた僕みたいなおっさんオタクに対し、アニメにした意味があったと納得させる、まさに”大人だまし”な作品なのではないかと思いました。

そんな「ゴジラ S.P <シンギュラポイント>」は、Netflixなどの配信サイトではまだ観る事が出来るようなので、まだ未見で興味のある方は是非!

ではではー(´∀`)ノシ

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