2021年10月27日夜，オリックス・バファローズが優勝した．

前日26日にはセ・リーグの東京ヤクルトスワローズが優勝したため，2021年のペナントレーズの雌雄はここに決した．
雌雄は決しても，まだ各球団は残りの試合で記録がかかっている選手がいたり，ポストシーズンや来季に向けてまだまだ静かにはならないだろう．

私は，オリックス・バファローズという球団に特段に興味を持っている．

オリックス・バファローズは2004年の球界再編問題で「オリックス・ブルーウェーブ」と「大阪近鉄バファローズ」の2球団が合併して誕生したらしいと最近になって知った．
私は当時ほとんど野球やスポーツを見ていなかったので，合併問題当時のことは正直覚えていない．

オリックス・ブルーウェーブのスター選手だったイチローも，物心ついた頃には「マリナーズのイチロー」という意識だった(小学校の水着入れでマリナーズ柄のものが当時売られていた)．

私は東京に生まれ，アンチ巨人で今は東京ヤクルトスワローズのファンだ．アンチ巨人なのは，小学生の頃に阪神タイガースファンや横浜ファンの友達から受けた英才教育のせいだろう．なんたって，プロ野球を一切見なかったのに「アンチ巨人」だったのだから．

だが，歴史に「if」はないと言われるが，あえて「もし自分が大阪や関西に生まれていたら」と考えると，私は大阪近鉄バファローズを応援していたのではないかと思う．河内の直接的な言葉が散りばめられた応援歌や，「いてまえ打線」と謳われた豪快で攻撃的な野球は，私の琴線に触れ，高確率で入れ込んでいたと思う．そんな魅力が，近鉄にはある．

そんな私だが，今はヤクルトファンとしてオリックス・バファローズの歴史を調べている．

オリックス・バファローズには，「大阪近鉄バファローズ」「オリックス・ブルーウェーブ」，そして「阪急ブレーブス」という３つのルーツがある．そして，この3つの球団に共通していることが，「日本シリーズでヤクルトスワローズに負け，日本一を逃した」ということだ．

阪急ブレーブスは1978年，上田監督が率いた黄金期真っ盛りで，日本中が阪急の勝利を予想する中，広岡監督率いるセ・リーグ初優勝のヤクルトスワローズが日本一になった．

オリックス・ブルーウェーブは1995年，「がんばろうKOBE」のワッペンをユニフォームに縫い付け，同年1月に阪神淡路大震災で傷ついた神戸に勇気を与えたと当時の新聞記事は伝えている．仰木彬監督に率いられ，スーパースターイチローを擁して日本シリーズに臨んだが，「ID野球」の野村克也監督が率いたヤクルトスワローズが日本一となり，ブルーウェーブとして日本一となるのは翌96年を待つこととなった．

大阪近鉄バファローズは2001年，「いてまえ打線」と評される打線が逆転を繰り返し，防御率最下位ながら優勝を勝ち取った．特に優勝を決めた9月26日の大阪ドームでの試合では，３点を追う9回裏，北川博敏選手の「代打逆転サヨナラ満塁ホームラン」で決まり，強烈な記憶を残した．しかし，日本シリーズではヤクルトスワローズに敗れ日本一を逃し，梨田監督に率いられたこの年の優勝は「近鉄最後の優勝」として記録されることになる．

このような経緯を考えると，東京ヤクルトスワローズはまさに「全員で勝つ」相手に相応しいと思う．阪急時代や近鉄時代に日本シリーズで敗れた巨人や広島よりも，ブルーウェーブを含めて「3つの球団が負けている」ということが際立つ．ヤクルトこそが，阪急，近鉄，そしてブルーウェーブ時代からのファンにとって「全員が」「勝てなかった相手」だからだ．(もちろん，阪神タイガースとの関西ダービーも正直めちゃくちゃ見たい)

「特定の球団のファンになる」ということは，「それ以外の球団のファンと他人になる」ことだと，最近思う．ヤクルトファンとしては，セ・リーグのファンとしては，パ・リーグのオールドファンが感じる「人気の」セ・リーグに対する複雑な感情を本当の意味で理解することはできないだろう．私はどんなに足掻いてもヤクルトスワローズのファンであり，今のオリックス・バファローズはとても好きだが，ファンかと言われるとまだ自信はない．

だが，一人の「プロ野球ファン」として，自分が最も入れ込んでいるヤクルトスワローズと，自分が最も興味を持っているオリックス・バファローズが日本シリーズで戦うことになれば，私にとってこれ以上の幸せはない．

プロ野球がこの先も，ずっと日本で愛されていることを祈って．

参考文献

元永知宏『近鉄魂とはなんだったのか？』，集英社，2019年．

『阪急・オリックス80年史｜1936-2016』，ベースボールマガジン社，2016年．

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