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組織変革の躍動力

【このnoteのサマリー】組織変革のエッセンスは、大きく3つに分かれる。その1つは、止まった組織変革を再起動させるための躍動力をもたらすフォースである。今日のフォーカスは、そのうちの”堅牢なオーナーシップ”。組織トップにオーナーシップを持ってもらい、組織変革に必要な大量のエネルギー源にしよう。しかしトップは超多忙で巻き込みは難しい。だから6つのコツを活用しよう。

今回から、組織変革のエッセンスの中身について書いていきます。組織変革を担う方々向けに、どのように組織変革を組み立て、仕掛けていけばうまくいくのか。そのエッセンスについて書いていきます。

組織変革のエッセンスは下表のとおりに纏めています。

組織変革のエッセンス

組織変革に躍動力をもたらすフォース

まずは、チャート上段の”躍動力をもたらすフォース”から説明します。

躍動とは生き生きと動く様を示します。止まってしまっている組織の変革を再起動させる、むしろ下降気味な活動を一旦下げ止め、再上昇させるような力、それを躍動と表しました。インパラが跳ねるようなものなのか、カピパラが歩くようなものなのかは別として、組織を生き生きと動かす力をイメージしています。

躍動力としてのフォースは、”堅牢なオーナーシップ”、”前向きなリーダーシップ”そして”一点突破の目標”で構成されています。今日のフォーカスは、そのうちの”堅牢なオーナーシップ”です。

躍動力その1:堅牢なオーナーシップ

”堅牢なオーナーシップ”には、大きな成果を実現するために必要な成果への揺るぎない拘り、という副題をつけました。大きな成果は大きな取り組みから生まれます。大きな取り組みには多くの賛同者が必要です。多くの賛同者を引き寄せるやり方はいくつかありますが、組織トップにオーナーシップを持ってもらうのが正攻法です。

大きな成果を実現するためのトップのオーナーシップ

大きな取り組みを立ち上げ動かすには相当な熱量が必要であり、そのための熱源が必要です。その熱源として最も期待したいのも組織トップです。独立した事業部なら事業本部長、企業なら社長ですね。

組織変革には必ず社長を巻き込みましょう。社長にも色々なタイプの方がいますが、企業において社長という肩書が持つパワーは相当なものです。それを熱源として多くの賛同者への熱伝導を行い、熱量を増やしていく。そのために組織トップを使わない手はありません。

しかし社長は超多忙です。超多忙な社長にはその負荷や権限分散のための部下がいます。執行役員や社長オフィスのスタッフです。社長にリーチしたい人にとっては社長へのアクセスをガードしているように映るでしょう。社長は社長で、「そういう件は○○に任せてあるから」となかなかこちらを向いてくれません

「仕方ない、社長抜きでやるか」

と決めた瞬間、変革推進者は大きな熱源を失います。特に変革を起動させるときは、まだ賛同者もまばらですので、失った熱源を補うことはほとんど不可能です。最初からエネルギー不足でスタートした変革活動は、すぐに息切れするでしょう。そもそもトップがオーナーシップを持たない組織変革は、概念として論理矛盾があります。組織変革には必ず社長を巻き込みましょう。

トップを巻き込む6つのコト

変革起動の際は、トップの巻き込みを最優先すべきです。そして巻き込みの際に必ず伝えるべきことは、以下の6つです。

1)変革が目指すこと(経営指標で表せる大きなゴール)
2)ファクトに基づく耳の痛い課題
3)課題の論理的な真因分析
4)フォーカスされた解決策
5)具体的実行計画の事例
6)変革を必ず成功させる強い意思

1)は、経営指標で評価できることが必須です。本当に狙っていることが定性的な変化、例えば組織風土改革であったとしても、それが経営指標をどう良化させるのかと紐付いていないと、トップが関与するイシューとして取り上げてもらいづらくなります。

2)で特に強調したいのが”耳の痛い”という部分です。トップは自分の管掌範囲の全責任を負っていると自覚しています。世の中のせい、誰かのせいにはできません。課題に関わる担当の部下に対する文句の一つも出るでしょうが、内心では自責で捉えています。そして課題は解決すべきとほぼ自動的に思考します。

3)が情緒的だったり、ロジックが甘かったりすると、そこではねつけられてしまいます。論理性に拘りすぎてこねくり回すのも良くないです。シンプルに、クリティカルな部分に絞って示しましょう。

4)何にフォーカスするのか、その判断基準が試されるところです。100%トップと同じ基準を持つことはできませんし、それを狙う必要もありません。大筋で正しいと認めてもらえれば、後は微調整の範囲です。

5)全ての解決策に対して実行計画を立てる必要はありません。まだその時期ではないからです。実行計画は、変革を実践する組織内の当事者が自分の想いを込めてつくるべきものです。この段階で、具体的実行計画の事例を示すのは、”この枠組みなら実行にも繋がりそうだ”と思ってもらうためです。

6)上述のことを伝える全ての場面で、気後れすること無く、熱意を示しましょう。美辞麗句は必要ありません。自分が本気であれば、その本気度は必ず伝わります。逆に本気度に陰りがあれば、それもまた伝わってしまいます。

これらのことは、変革推進者が直接トップに説明する必要があります。人づてではだめです。どこかが曲解される可能性が高いですし、何より変革推進者の熱意が直接伝わりません。

オーナーシップの堅牢化

トップ巻き込みのためのメッセージが伝わり、「わかった、やってみなさい」ゴーサインを出してもらったとしても、それだけでは不充分です。巻き込むだけでなく、トップには変革のオーナーになってもらわなければなりません。「これはトップ主導の変革活動」という位置取りをすること、そして関与し続けてもらうことが重要です。これが堅牢なオーナーシップの意味です。

意思決定だけして後は任せるタイプのトップには、定期的な関与を求めて下さい。自分を冠する活動であることを訴えた上で、トップ主催の月イチ進捗報告会を立ち上げる、社員との直接対話のアジェンダに必ず加えてもらうなど、単発ではなく長続きするかたちでのトップ関与を仕込みましょう。

逆に何でも自分流でなければ気が済まないタイプのトップには、意見に傾聴しつつ、変革推進を阻害しそうな行為は論を尽くして翻意を促しましょう。”成果を急ぐ”、”手続きを端折る”、”筋の通らないことを押し通す”、”他人の意見を聞かない”。何でも自分流の方の悪い傾向として時々見かけますが、どれも変革阻害要因であり、これではオーナーシップが堅牢とは言えません。変革成功のためにはそういう行為を我慢して頂く必要があります。翻意を促す際は、抽象的な水掛け論や肩書パワーによる寄り切り負けにならないよう、現場の実態をファクトとして粘り強く示し続けましょう

自分を総動員する真剣勝負

トップだって人間です。良い面も悪い面も持ち合わせている。しかし提唱される変革が本当に組織のためになると思えば、自分を統制し変革オーナーとしての役割を演じ切るだけの度量を持っているはずです。

堅牢なオーナーシップづくり。最初からとてもヘビーですが、ぜひ立ち向かって下さい。堅牢なオーナーシップづくりは、変革推進者にとって自分の持てるものを総動員した真剣勝負になるでしょう。知恵や工夫だけでもだめ、熱意だけでもだめ、全てを投じる必要があります。いくつもの障害にぶつかるでしょう。それらの障害が組織内部にあることが、癪に障るでしょう。組織のためを思ってやっているのに、と。そこで変革推進者がめげればゲームオーバー。変革は消え去るか、吹き飛ぶか、形骸化するかして終わります。

起動と同時にめげるくらいなら、やらない方がいいです。「いや、やはりやる価値がある」そう思うなら、めげずに推し進めていきましょう。必ず道は拓けますので。

次回は”前向きなリーダーシップ”について書きます。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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