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ツイキャスを介さないと恋ができない女

交際経験のない20代がリクルートのアンケートで女性29.8%、男性46%という結果が出たらしい。

最近マッチングアプリで恋人ができたという話を聞く機会が増えたにも関わらず、交際経験の無い人が増えていることにかなり驚いた。

逆にマッチングアプリの無かった時代はどのようにして彼氏彼女を作っていたのだろうとまで思う。

それほどまでにマッチングアプリを介して交際に発展する人が増えた。

そんな中、変わった付き合い方をする女の子を思い出した。


大学生時代、僕はとあるコンビニでバイトしていた。

理由は髪色が自由と記載されていたからだ。
文字通り髪色が自由だったため、僕は赤髪で出勤した。

初出勤の日、コンビニに入ると綺麗に青く染まったボブ髪の女の子がいた。
きっとこの子も髪色が自由だからここでアルバイトをしているのだろう。

「新しく入った◯◯です。よろしくお願いします」
「◯◯です。お願いします」

青色のボブヘアーが馴染むほど、濃いアイラインのメイクでまさに地雷系の姿形がそこにあった。
圧縮した景井ひなのような見た目をしていて、推しは「戦慄かなの」と言っていた。

話してみると、とても言葉遣いも綺麗で髪色とは打って変わって大人しそうな印象を感じた。

そこから何度かシフトが被るようになり、キッカケは覚えていないが恋バナをする機会があり、

「彼氏おるん?」

「おるよー」

「大学の人?」

「ううん、東京の人」

「東京⁈」

僕らは京都に住んでいたので、まあまあの遠距離恋愛をしていることがそこで分かった。
この子は優しいし良い子だけど、だからこそ男の方は浮気しそうだなとか考えたことを覚えている。

「何キッカケで知り合ったん?」
インスタやツイッターがキッカケならぜひコツを教えていただきたいと思い深掘りする。

「ツイキャス」

「ツイキャス⁈」
声を裏返しながら聞き返す僕に、彼女は笑いながら頷いていた。

まさに見た目は「インターネット オーバードーズ!」という感じだったが、本当にその通りだった。

「相手がキャス主で配信見るようになってコメント飛ばすようになって繋がって仲良くなって付き合った」

「キャス主とファンが付き合ったみたいなこと?」

「ファン……とかいうほどでもない……、配信してるって言っても過疎配信者やったし」

自分が時代に遅れているとかついていけていない感覚は一切無かったが、現代的な付き合い方だな〜と親世代が言いそうなセリフを心の中で彼女に返した。

「すごいね」

「ちなみに元彼もキャス主」

「ふぁ⁈」

「ちょっと前にサークルの男の子に告られたんやけど好きになれんくて、どうやらツイキャスを通さな好きになれんらしい」

僕は今まで自分が生きていた世界とは別世界の情報量に錯乱し、返す言葉を持たなかった。

話をまとめると、今僕のように顔を合わせて話している状態では恋愛的な感情が湧いてこず、ツイキャスで配信している姿からその人を知ることができれば、恋愛的に異性として見ることができるということだった。

理屈は理解できるものの気持ちがついて行かない。
本当にそんなことがあるのかと。
さらに申し訳ないがキャス主に良いイメージを持ち合わせていない。
彼女もキャス主にまともな人はいないと言っていたが、それでもキャス主を好きになってしまうらしい。

元彼と別れた理由はクズ男でいっぱい浮気していたらしい。

それでも彼女はツイキャスを介して恋をする。

僕が夜勤をしていた深夜の2時ごろ彼女がお店に来た。
突然連絡も無しに東京から彼氏がさっき来たらしい。
深夜にインターフォンが鳴るもんだから怖かったけど開けてみたら彼氏だった、と喜びながらお菓子を買いに来たのだ。

新幹線で来たにしてもなぜ彼女に会うのが深夜になったのだろう?
連絡を入れなかった意味はサプライズなのか?
何か裏があるな。

そんなことを僕は勝手に考えたが、彼女のニコニコした姿を見れば言えるはずもなかった。

「えーー良かったやん」

「うん」

そうしてお菓子を買い帰っていった。

それから何年か経ち、大学を卒業した後東京に就職をすると聞いた。

彼女は「長い間お世話になりました」と一言残し、今まで以上にキャス主と会いやすい環境へと身を移した。

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