29 話し合いができない② 再び名づけの時

ある日、仲の良い友人に何げなく本心を相談しました。
私 「娘の名づけの時、名づけが憂鬱だったんだよねー。もう全然決まらないから話し合いがストレスで」
友人「え?そうなん?うちもなかなか決まらなかったけど、赤ちゃんの顔見たら、もともと考えてたやつと違う名前にしようかとか、悩むのも楽しかったよ。大丈夫やって!」
 「そうかなー」
友人「そうだよ。出産前でブルーになってるんじゃない?大丈夫よきっと」
 「そうかもね、考えすぎもよくないよね」
 
 私には付けたい名前がありました。音の響きが好きなのです。でもこの名前を早々に夫に言って否定されるのが嫌なので、ギリギリまで内緒にしておくことにしました。とにかく元気な赤ちゃんを産まなければ。
 私は5年前から、日記をつけはじめていました。楽しい記憶を忘れないために、いいことがあった日だけ日記に書くのです。日々の嫌なことは忘れるのが一番。後でぐちぐち言っていては、楽しいことなどやってきません。
 名前を考えるのはいいことだ!楽しいことだ!と気持ちを盛り上げ、つけたい名前の候補を7個、こっそり日記に書きました。7個も候補があれば、きっと夫が気にいるものがひとつくらいはあるかもしれません。生まれてくる赤ちゃんのことを想像しながら、ひとり漢字を選んでいくと、憂鬱な気持ちが次第にほぐれていくのを感じました。本来、名づけはとても楽しい作業なのです。
「悩むのも楽しいってこういうことなんだな、きっと!!」
友人の言葉を思い出して日記を書きました。
 
 出産を終え、一日経ち、いよいよ名前を何にするか、夫に私から話を切り出しました。心臓がドキドキしていたのを覚えています。
「ねえ、名前、どうしようか」
モラ夫「どうする?」
「ねぇ、拓海くんは?」
モラ夫「うーん」
私は夫の様子を見て1つずつ提案していきました。
「じゃあ、これはどうかな。みずきくん。男女どちらでも呼べる名前が好きだなぁ。」
モラ夫「…んーーー…」
「ひなた」
モラ夫「…」
「あなたは?何かつけたい名前ないの?お互いの候補を出しあってみようよ。すぐ決めるわけじゃないんだし。」
モラ夫「いや、…わからん」
そのあともいろいろ候補を出していきましたが、夫は終始
「うーん」、「わからん」、「…」の3パターンだけしか反応がありませんでした。

(ああ、まただ・・・)

娘の時の名づけを思い出し、次第に暗い気分になっていきました。

(そもそもこんなにテンション低く話し合うものなの?)

と嫌気がさしました。わが子にこうなってほしいとか、こんな願いを込めたいとか、わくわくしながら考えていくのが名づけだと私は思います。しかしその日は結局何も意見が聞けぬまま、
「今日はこの辺にしようか」
と夫は帰っていきました。
 

 こういうやりとりが3日続きました。長女の時と全く同じです。産後の不安定な中、さすがにストレスも限界です。本当にもう嫌でした。せめて、私が考えた7個の名前に対しての印象とか、コメントか反応が欲しかったのです。私は真剣に考えているのに、夫からの意見は全く聞けない状態が3日も続くのです。私にはもう、どうしようもありませんでした。

そして退院の日に、やっと夫がひとつ名前を候補にあげました。
「あさひ」
私はもう疲れ果て、もうそれにするしかない、という気持ちだったので、すぐ賛成しました。
「朝陽。あさひ。旭。・・・」何度もつぶやきました。名前が決まって、嬉しいというよりも、とにかく夫との一方的な話し合いの時間が終わってホッとしました。いい名前であることに変わりはありません。これでやっと、これから何千何万回と呼ぶ名前が決まったのです。

 今回は出生届もすべて私が書いて、私が役所に提出に行くと言いました。前回のことがあるから、夫に気を遣って、名前の欄をあけてあげたり、役所に届ける役目を譲ったりするのは最初からやめました。すると今回は
「出生届は俺も一緒に行きたい」
と言い出しました。私は(人って変わるんだな、父親の自覚がようやく目覚めたのか)と、ダメな父親だと決めつけようとしていた自分を恥じました
 
 今から思うと、モラハラ夫はとにかく、妻の意見をただ否定したいだけなのです。私が手続きを全部やると言ったから、反対したくなっただけです。当時は、自分を反省するばかりで、モラハラ気質には全く気づきませんでした。
 妻の意見は絶対に聞き入れたくない、というモラハラの論理に当てはめると、だいたいすべてのもめ事や行動の根本が腑に落ちました。自分が言ったことや事実を捻じ曲げてでも妻の意見に反対し、恐ろしいことに、モラハラ加害者は、記憶も自分でねじ曲げて、捏造した事実の方を本当だと信じて疑わないのです。
 

 だから、離婚調停や裁判でモラハラ加害者と戦うときは、本当に労力も時間もかかります。毎回主張の内容も論点も変わっていき、周囲は振り回されることになります。調停が一段落したら、モラ夫がどのような思考で主張書面を作成するのかというと、とにかく嘘だらけです。家事育児ほぼせず、平日の夜も土日も遊びに出かけていたのにも関わらず、「家事も育児も積極的に担い、休日は妻のために子どもの面倒を見た」と主張してきました。子どもに暴力をふるいそうになったり蹴ったりしていたのに「子どもは自分を慕っている。関係も良好。子どもは自分に会いたがっている」と。その嘘を証明するために多大な時間と労力をかけ、反論すると、次回にはまた違った嘘の主張を出してきて、一向に話が進まないのです。


次回に続きます。


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