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2023年4月に読んだ本

森見登美彦『四畳半神話体系』角川書店

4月に京都に旅に出ることにした。
そのお供にパートナーT氏から授かったのがこの本である。
amazonプライムでアニメ版を過去に見たことがあり、
本を読むと私の頭の中では、
アニメの映像で明石さんや主人公が動いている様子が再生された。
アニメを見ていた時はそんなに面白いと思って
見ていたわけではなかったけど、実際に京都に行って、
下鴨神社から糺の森を抜け、鴨川デルタへ向かってみると
より作品が立体的に感じられる。
残念ながら出町ふたばの大福は売り切れていたが
代わりに柏餅などを購入し、鴨川デルタに座って食べたり
百万遍の交差点を渡ってみたりした。
繰り返される冒頭の文章に、だんだんと眩暈がするような気持ちになるが
なんだかんだでどのパターンでも明石さんと
うまくいきそうなところがよい。
期待していたようなバラ色の学生生活ではなかったと
鬱々としている学生にもほのかな夢を与えてくれるような作品である。
一方で占い師の老婆の「好機が来たら逃さないこと。その好機が来たら漠然と同じことをしていたら駄目」というのが重要なメッセージ。
過去の選択や現状を嘆くばかりではいけないのだと説教するのではなく
どんな選択をしてもめぐりくるチャンスはある、
ただその時は行動を起こさなければいけないよ、
と優しいアドバイスをくれたように感じた。

僕のマリ『常識のない喫茶店』柏書房

旅先なのに、京都の丸善でつい買ってしまった本。
・続編の方を先に、別の本屋で目にして気になっていた。
・「僕のマリ」がサブタイトルかと思ったら著者名だった。
・『注文の多い料理店』みたいな語感。
・何やら『3年目の壁』とかいうコーナーにある。
社会人3年目より全然年だけど、社会人3年目でなくてもいいらしい。
長く務めた最初の会社を辞めて3年目じゃなかろうか?
丸善のフェアなのかと思ったら出版社さんの企画だった模様。
まんまと買いました。そして一気読みしました。
パワフルで、でも冷静で引き付けられる。
ゴミを置いて帰ろうとしたお客さんにゴミを返す話、
調子にのらない常連さんが好まれる、という話がおもしろかった。
それでもただの喫茶店あるあるだけでなくて、
傷ついた筆者が自分をとりもどしていく物語でもあって、
自分の人生のいろいろなシーンも合わせて思い出す本だった。

青山美智子『木曜日にはココアを』宝島社

先日読んだ『お探し物は図書室まで』が良かったので買ってみた。
一つの場所でいろいろな人の人生が交錯する感じ、
この人の作品は全部こういう感じなのかな?
『図書室』と比較すると出てくるひとがもっとふわっとした感じ。
同じ名前の登場人物がでてきて、嫌な奴かと思いどきっとしたら
実はそうではなかったという感じで終わった。
これに限らず嫌な人って出てこないですね、この人の本。

青山美智子『月曜日の抹茶カフェ』 宝島社

「木曜日にココアを」の続編。「木曜日」にも出てきた人がちらほら。
京都帰りの身には、下鴨の古本祭りとデルタの出てくる話が
四畳半の続きもしくは、スピンオフのように感じられる。

森岡正博『人生相談を哲学する』生きのびるブックス株式会社

早稲田大学の哲学の先生が、
朝日新聞の人生相談コーナーに対する自分の回答について、
今一度背景なども踏まえて考えつつ、時に反省し、謝り、思索にふけり、
時に質問者にお礼を言ったりしつつ回答し直している。
アラサーあるある的な「結婚できない。他人の幸せが喜べない」
という問に対し、エーリッヒ・フロムの『愛するということ』などを持ち出したりするくだりは、いかにも哲学の先生っぽい感じなのだが
先生の経験のみを踏まえて回答している相談や
答えるのは難しい、という回答もあり。
自分も答えを知りたいような問いが複数あったが、
ずばっと答えているようなものは正直なかったと思う。
でも、すばっと答えられるようなものではない、ということが答えであって
相談者の問いの意味を深く考えて、先生も知識と経験を総動員した上で回答を一生懸命考えてくれるということが相談者にとっての救いなのだろうと思った。
何かを相談するときに求めていることって、回答ではなくて
相手の「聞く姿勢」が大事だよねと一人納得した。

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