見出し画像

読んだり生き腐れたり

食中毒は夏の盛りよりも涼やかになった頃に増えるといいます。

気候が和らいだことによって油断するからなのでしょうか。

今日は足の早いことで知られる『鯖』について注目してみます。


鯖を読む

よく年齢を少なく申告することを『鯖を読む』などといいますね。

元々足が早いと知られる鯖ですが、その数を数えているうちにも傷んでしまうので、魚屋や漁師は急いで鯖の数量を目分量でざっと計測して、傷む前に急いで売りさばいたということから

これが『鯖を読む』の語源となっています。


『鯖の生き腐れ』

こちらの諺は、新鮮な鯖だと思っていても、実際にはすでに腐り始めており、中毒することがあるという例えで、「鯖は腐敗しやすいので、活きがいいように見えても、傷んでいることがあるから気をつけなさい」という意味です。


ヒスタミン

痛みやすい鯖などの魚を食べると『ヒスタミン食中毒』になることがあります。

このヒスタミン食中毒は、ヒスタミンが高濃度に蓄積された食品、特に魚類及びその加工品を食べることにより発症するアレルギー様の食中毒です。

ヒスタミンは、食品中に含まれるアミノ酸の一種であるヒスチジンに、ヒスタミン産生菌の酵素が作用し、ヒスタミンへと変換されることにより生成されます。

ヒスチジンが多く含まれる食品を常温に放置するなど適切ではない管理によって、食品に付いたヒスタミン産生菌が増殖し、ヒスタミンが生成されてしまいます。

恐ろしいのはヒスタミンは加熱しても分解されないことで、調理することによって取り除くことができない点です。

ゆえになるだけ新鮮な鯖を手に入れ、速やかに冷蔵庫入れ、早目に消費あるいは調理することで、ヒスタミン産生菌の増殖を防ぐことが肝要です。


アニサキス

アニサキスは寄生虫(線虫)の一種です。
その幼虫(アニサキス幼虫)は、長さ2~3cm、幅は0.5~1mmくらいで、白色の少し太い糸のように見えます。この幼虫は、鯖、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどの魚介類に寄生します。

鮮魚売り場の切り身などで幼虫が蠢いている光景を目の当たりにしたこともあるのではないでしょうか。

アニサキス幼虫は、寄生している魚介類が死亡し、時間が経過すると内臓から筋肉に移動することが知られています。したがって鯖の刺身などは、釣り上げた直後に内臓を取り除くことで筋肉へアニサキスが移動することを防ぐ処理行っているようです。

アニサキス幼虫が寄生している生鮮魚介類を生(あるいは不十分な加熱や冷凍)で食べることで、 アニサキス幼虫が胃壁や腸壁に刺入して食中毒(アニサキス症)を引き起こします。

ひどいときは悪心嘔吐、吐下血、蕁麻疹やアナフィラキシーが起こることもあります。恐ろしいのはたとえ1匹でも体内に入ると感染してしまうこです。

また酢でしめてもアニサキスは死滅せず、冷凍や加熱によって死滅します。70°C以上では瞬時に死滅し、-20°C以下で24時間以上冷凍すると感染性を失います。一方、酸には抵抗性があり、シメサバのように一般的な料理で使う食酢での処理、塩漬け、醤油やわさびを付けても死ぬことはありません。

酸に強いからヒトの胃の中でも活動出来てしまうのですね。

最近、アレルギーとの関連も話題となっているのですが、1回目の感染では無症状でも2回目以降に過敏反応が出ることがあるようです。

また鯖などによる中毒症状のなかには、アニサキスによるアレルギーの可能性もあると考えられています。


『嫁に食わすな』

鯖にまつわる諺と言えば、『秋鯖は嫁に食わすな』が思い浮かびます。

秋になると脂が乗って美味しくなる鯖は「嫁に食べさせるのは惜しい」という姑の気持ちをうたったものと言われていますが、これには別の解釈もあるようで、秋になると鯖は鮮度が落ちやすくなって体に良くないから嫁に食わすな、という思いやりの気持ちを表したものとも言われているそうです。

たしかに痛みやすいのでわかりますが、美味しく新鮮で安全な鯖を是非、姑さんとお嫁さんで仲良く召し上がって頂きたいものです。


おわりに

非常に身近な魚『鯖』。

脂の乗った金華鯖の塩焼きなど格別ですよね。

食中毒に気をつけながら食欲の秋を堪能したいものです。


おしまい

最後までお読みいただきありがとうございます。 いただいたサポートは麦チョコ研究助成金として大切に使用させて戴きたいと思います。