【1000字書評】住井すゑ『橋のない川』② 恋愛と結婚であらわになる差別――個人的なことは政治的なこと
さて、2022年11月の書評講座の課題は、前回の『橋のない川』第1巻の続きの第2巻でした。
第1巻では、奈良県の被差別部落の村に暮らす兄弟、誠太郎と孝二の子ども時代が描かれていた。第2巻では、元号が大正に変わり、小学校を卒業した誠太郎は大阪の米問屋に丁稚奉公へ行く。成績優秀な弟の孝二は高等小学校へ進学し、副級長に選ばれるが、事あるごとに部落から通っているという事実が孝二の前に立ちふさがる。
そんな孝二には忘れられない思い出があった。かつて、ひそかに思いを寄せていた同級生の