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日本語で書かれた本の本棚

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記事一覧

パリテの町・大磯で気づく女性に背負わされた「重し」 和田静香『50代で一足遅れてフ…

和田静香『50代で一足遅れてフェミニズムを知った私がひとりで安心して暮らしていくために考え…

伊坂幸太郎〈殺し屋シリーズ〉最新刊『777』発売直前!! ただの殺し屋小説ではない…

伊坂幸太郎の〈殺し屋シリーズ〉第3弾『AX』を読了! したと思いきや、最新刊『777』(トリプ…

「大きな物語」を凌駕する「小さな物語」伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』&伊坂作…

激しくいまさらながら、伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』を読んで、やはりうまいなあ~と唸…

ギムレットには早すぎる? 虚構の仕掛けで生と死を塗りかえる短編集 村上春樹『一人…

さて、先日の『猫を棄てる』に続き、今回取りあげるのは『一人称単数』……って、いや、「いま…

父親について語るときに僕の語ること レイモンド・カーヴァー「父の肖像」(『ファイ…

村上春樹はレイモンド・カーヴァー『ファイアズ(炎)』の訳者あとがきで、カーヴァーによるエ…

かけがえのない生を取り戻す場所 石井光太『こどもホスピスの奇跡』

前回の『くもをさがす』に続いて、また病気に関する本ですが、石井光太『こどもホスピスの奇跡…

カナダで乳がんになり、「私」が「自分」を取り戻すまでの経緯 西加奈子『くもをさがす』

私が「私」になること、自分の手で自分を取り戻すこと―― これが本来の病気の治療なのかもしれない。 西加奈子『くもをさがす』を読んで、こんなことを考えた。 すでにあちこちで話題になっているのでご存じのかたも多いでしょうが、この本には、カナダで乳がんだと宣告された作者が、コロナ禍であったため日本に帰らず、そのままバンクーバーで治療を受けた経緯が綴られている。 私自身も2年前に乳がんになったので(作者とは異なる種類の乳がんですが)、カナダでの治療はどういうものなのだろう? と

生き延びるために逃げる女たち コルソン・ホワイトヘッド『地下鉄道』から谷崎由衣『…

先月の書評講座の課題は、谷崎由衣『遠の眠りの』でした。 作者である谷崎さんは、小説のほか…

だいじょうぶ?と聞かれたら、どう答える? 令和のフラニーはきみかもしれない『ぬい…

〝ぬいしゃべ〟こと『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』、2020年に出版された小説ですが、文…

子宮からの解放 三十年前のフェミニズム小説 酒見賢一『後宮小説』

少し前に1000字書評の課題本として、酒見賢一『後宮小説』を読んだ。 『後宮小説』は、1989年…

【1000字書評】柳美里の『JR上野駅公園口』虚ろな生から戦後日本の空虚を描いた全米図…

さて、前回紹介した『Last Night at the Telegraph Club』は全米図書賞YA部門受賞作でしたが、…

【1000字書評】水村美苗『母の遺産――新聞小説』貧困になっていく世の中で、お金と「…

と、思わずドキっとする言葉がコピーとなっているのが、水村美苗『母の遺産――新聞小説』であ…

【1000字書評】木村紅美『あなたに安全な人』第32回 Bunkamuraドゥマゴ文学賞 受賞作…

いつまでたっても収束の気配が見えない、このコロナ禍。 コロナを背景とした小説も増えてきて…

【1000字書評】住井すゑ『橋のない川』② 恋愛と結婚であらわになる差別――個人的なことは政治的なこと

さて、2022年11月の書評講座の課題は、前回の『橋のない川』第1巻の続きの第2巻でした。 第1巻では、奈良県の被差別部落の村に暮らす兄弟、誠太郎と孝二の子ども時代が描かれていた。第2巻では、元号が大正に変わり、小学校を卒業した誠太郎は大阪の米問屋に丁稚奉公へ行く。成績優秀な弟の孝二は高等小学校へ進学し、副級長に選ばれるが、事あるごとに部落から通っているという事実が孝二の前に立ちふさがる。 そんな孝二には忘れられない思い出があった。かつて、ひそかに思いを寄せていた同級生の