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二級ボイラー実習日記1「セレンディピティ」

公表もしておらず、しかし隠してもいない情報ではあるが、最近の私は日本に居を移している。仕事についても、ここのところはBASSDRUMを中心とした日本の仕事が主だ。コロナが収束しつつあって世の中動いているので、徐々に日本国外の仕事も増えるかな、というところだ。

実は、久々の日本生活で完膚なきまでに逆カルチャーショックでやられてしまっていた。そこについてはまた別途記事にしようと思ってはいるが、日本という国についてかなり憂えてしまう部分もあったし、自分自身、故国の甘辛な毒気に飲み込まれて前に進めなくなってしまったりもした。

そんな中でも生きていくほかなく、ある種、自分の存在維持をオートパイロット化するために、日課を続けることにした。

何しろ行動力が低下している。放っておくと何もしなくなってしまう可能性がある。しかし何もしないでいるとたぶんどんどん自信を失っていく。日課の遂行を厳守することにして、それだけを守れば、南無阿弥陀仏と唱えればOKみたいなノリで自分の存在は免罪され、維持される。みたいな寸法だ。ちなみに日々のお仕事は一生懸命やっている。

しかしそれにも飽き足らず、時間があれば酒に溺れるような生活になっていった。酒でも飲まないとやっていられないのだ。

酒は、時間を経過させるツールだ。酒を摂取することで、スターウォーズの光速移動よろしく、いつの間にか朝になってくれたりする。酒というのは、時間を大切にすることに倦んだ人が飲むものなんだろう。私は母国で混乱しながら過ごす時間をやり過ごしたかった。

しかしまあ、酒を飲む、というのは基本的に愚行だし(「百薬の長」なんていうのは嘘なんだそうだ)、人生は短い。有限な時間をわざわざ光速移動してしまうのは、またそれも愚行だ。

AIがだいたい何でもやっといてくれる時代においては、人間ができることなんてもはや愚行くらいのものではあるのだろうが、私は3人の子供らの親なのであり、そこそこの中小企業の一応の責任者なのであり、立場上、愚行ばかり行っている姿を見せ続けるわけにはいかない。

じゃあどうするかというと、日課を増やして有意義で生産的で前向きな時間を増やそうか、ということになる。

ところで私はWikipediaが好きだ。Wikipediaというのは、回遊しているうちに思いもよらない情報に誘ってくれる構造になっている。

私は大相撲ファンなので、例えば「北勝富士」について調べているとする。

ここから、彼の好物である「梅干し」に飛ぶことができる。

そうすると「烏梅」という、なんか知らない食べ物への参照がある。

この「烏梅」の生産地は、「月ヶ瀬梅林」という場所で、奈良にあるでかい有名な梅林なんだという。

私はそんなところがあるなんて知らなかったのだが、これは、北勝富士について調べていたからたどり着いた情報だ。北勝富士について読んでいる段階では、月ヶ瀬梅林にたどり着くとは思っていなかった。

みんな大好きバキバキ童貞チャンネルでは、「Wikipediaゴルフ」という素晴らしい企画がある。「スマブラ」から「アフリカ」まで何打(=何回のリンク)でたどり着けるか、みたいなことをゲームとしてやっていて、Wikipediaの良さが出ていてとても良い。

何しろ、こういうのを「セレンディピティ」、などと言うのだろう。

仕事上、アイデアを考えて実現したりすることもある。そういう仕事をやる中で、Wikipediaをダラダラ回遊する中で得られた、全く興味が無くて自分と関係ない、しかし、知ってみると面白い、そんな情報は自分の芸の肥やしになってきた。

知らんことを知る、知らんことをやるのは、人生を豊かにする。

というわけで、私はいまこの文章を、二級ボイラー技士の実習を受けるために旭川に向かうANA4783便(AIR DO 運行)の狭い通路側の席で、iPadで数独をずっとやっている初老の男性の隣で書き殴っている。

土日と月曜日がボイラー実習となる。実習完了までの間、毎日少しずつ、そもそもの二級ボイラー技士についてと、実習のレポートを書き綴っていこうと思う。

全然興味がなく、自分と関係ないことに取り組んでみよう、と思って、二級ボイラー技士試験の勉強を始めたのは、2022年の11月のことだった。

みんなにも読んでほしいですか?

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