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習近平のひみつ

5年前なので2017年の10月のこの時期に、上海のお客さんから声がかかって、初めて出張で上海に行った。ニューヨークから上海っていうのが直行で行くとめちゃくちゃ遠くて辟易した記憶がある。

その後、中国のボーカロイドグループのホログラムコンサートのプロデュースとか、バーチャルヒューマン系の仕事とかをやることになって、毎月のように上海に行くことになるので慣れるのだが(そのへんの仕事は表にあんまり出していないのだけど、実はそんなことをやっていたのだ)、何しろ2017年の10月が一番最初だった。

で、良さそうな韓国式のチムジルバン(サウナ施設)を見つけて、そこに入って長旅の疲れを癒やしていたのだが、中国のサウナ施設も日本とおんなじでサウナ内でテレビが放送されていたりする。

ちょうどその日が、中国共産党全国代表大会の初日で、サウナ内でずーっと習近平がしゃべっているのを聴くことになった。中国共産党全国代表大会というのは5年に一度開催される中国政治で一番重要なイベントで、もうこれは中国的にはおおごとだ。街全体がそれなりにピリピリしていて公安(警察)も多かった。

で、そのサウナ内で習近平のスピーチが耳に入ってきて、当然だけど「全然わかんねえ・・・」となった。

前述の通り、その後一時期、中国のエンターテインメント業界でドブ板を踏みながら戦うような体験をした結果、「ここでもう一回勝負したい!」という気持ちが強くなった。

中国でまともに仕事をつくるためには、中国語で中国の皆様と酒を飲んで身内にしてもらわないとダメだ、ということを実感した(営業や交渉じゃない仕事上のやり取りは自動翻訳で十分可能)ので、コロナ明けたらまた中国にチャレンジだ、と思って、コロナで家にこもっている間に中国語の勉強を始めて、だいたい2年半くらい経った。数日前には中国語の試験を受けたりもした。

で、5年ぶりに中国共産党全国代表大会の習近平スピーチを聴いた。それで驚いたのは、習近平のしゃべり方というのが、めちゃくちゃゆっくりで、かつ、平易であるということだ。日本語の感覚でいうと、戦場カメラマンの渡部さんくらいゆっくり、丁寧に言い聞かせるようにしゃべる。言っていることは、台湾のこととか物騒なことも多いが、これは私のようなそこそこの初学者でもどうにか聞き取れるやつだ。5年前に全く理解できなかった習近平が何か意味のあることをしゃべっていることも感慨深かったが、同時に彼がこんなにゆっくり念を押すようにしゃべっていることは、勉強しないとあんまりわからなかった。

多民族国家の為政者というのは、ゆっくりしゃべるべきなんだ、というのは、ニューヨークでお世話になっていた英語の先生の主張で、彼女は、ゆっくりでわかりやすい、ということで、オバマ大統領のスピーチをよく教材で使っていた。

アメリカの分断を進めたトランプはそんなに速くもないが、ゆっくりでもない。バイデン大統領も速くはないが、オバマみたいにわかりやすくはない。先生が言っていたとおり、為政者というのはゆっくりしっかりしゃべらないと、ついていけない人を置いてきぼりにして、分断を深めてしまうのかもしれない。

やり方もおっかないし、強引なことばかりやってるようには思うけど、中国語をかじった上でしゃべるのを聴いた結果、見てるだけだとタダの恰幅の良いおじさんに見えていた習近平のカリスマ性というものの一端を垣間見た感じがした。確かにこういうしゃべり方すると、広く多くの人に届きがちなのかもしれないと思った。

とか言いつつ、そんな習近平さんも引っ込みがつかなくなっているのか、ゼロコロナ作戦は継続するそうだ。何しろ今のままだと中国で全然仕事できないし、いろんなものがどんどんキナ臭くなっているので、そろそろあきらめて欲しい感じもする。

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