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0110「ティール組織をつくる方法」

引き続き、ラスベガスにいる。朝方まで酒を飲んだりして情報交換をしつつ、わりとちゃんと朝早くに起きて会場に行って情報収集をしている。今回、BASSDRUM関連で来ている人は9人いて、AirBnBで家を一軒借りている。最近、家を追い出されたりしていたのもあって、このサービスにはとてもお世話になる。とても良い家で、ドミトリー的な2段ベッドが8人分、専用ベッドの部屋が2つあって、1室だけすごくクオリティの高いキングベッドの部屋がある。

普通に考えると、このキングベッド部屋の取り合いになるはずだ。誰でも、良い環境で眠りたいのが人情だ。しかし、この部屋だけなんか格が違いすぎてみんな全然近づかない。
私だって、「俺様が社長だ!」というタイプの社長だったら屈託なくこの部屋で眠るはずであるが、そういうことをすると嫌われるし、嫌われるの怖いので、そんなことは絶対にできない。むしろここ2日間、謙虚な人間を気取るために、臥薪嘗胆的な自己犠牲感を出すべく、リビングのソファに寝ている。

しかし私は一応立場が上ではあるので、会社の皆さんの気持ちとしては、恐らく社長を差し置いてそんなキングベッドルームで仰臥することは許されない。そんなことをしようものなら今後、ネタにされていじられたり嫌味を言われるくらいなら良い方で、給与の査定とかに影響したりとかそんなことを心配してしまうかもしれない。私はそんなことはしないが、しかし、誰かがキングベッドルームで寝てしまったら、「あいつはあのときキングベッドで寝た」というイメージは無意識に残ってしまうかもしれない。それがないと言ったら嘘になる。今後、会議中とかに何かその人がいいことを発言したときに、「あのときキングベッドに寝てたくせにいいこと言いやがって」とか思ってしまうかも知れない。そんなことは絶対に思わない、とは断言できない程度には自分は自分のことを信用していない。

結果として、キングベッドルームは完全に空き部屋になる。例えが少し違うような気もするが、餃子パーティーで最後に1つだけ残った餃子に誰も箸をつけられない状況に近いかもしれないし、もっとわかりやすい例えだと、6人の席にいろんな種類のケーキを7つ買ってきて、1個だけ高そうなやつがあったときにそれが最後に余って誰も手をつけない状態か。とにかく、素晴らしい睡眠環境が目の前にあるのに、誰もそこで寝ることができない。高クオリティ睡眠リソースの無駄遣いだ。ラスベガスのこの素晴らしい家にこんな素晴らしい寝床が余っているのに、誰もそこで寝ていない。こんなことなら誰か、今日も硬い床で寝なくてはいけない人に譲ってあげるべきだ。しかしそんなこともできない。

人間って本当に愚かな動物だと思う。こんな難しい譲り合いをしているうちに、私たちの人生はクオリティの低い睡眠を重ねて終わってしまうのだ。いまこの文章をCESのメディアルームで書いているが、目の前にいる、みんな仕事しているのにうるさく喋り続けているイタリア人は同じ状況ならきっと屈託なくキングベッドルームに寝るんじゃないか。くそ。私にこの人のような強いハートがあったらキングベッドルームで寝て、その上で後ろめたい気持ちを抱くことなんて無いのに。

しかし私はここラスベガスにやってきて、「社長がソファで寝てこそ、ティール組織だ」という、ティール組織のなんたるかを矮小化した信念を持ち始めている。
これからの社会の理想の組織形態とされるティール組織では、すべての構成員が対等だったりしなくてはならないのだ。誰かが抜け駆けしてキングベッドルームに寝てしまったら、そこにヒエラルキーが生まれてしまうではないか。ティール組織では、誰もキングベッドルームで寝てはいけないのではないか。
つまり、このキングベッドルームに誰も寝ていない状況は、私たちが理想のティール組織であることを体現しているのではないか。
私たちは今日も明日もティール組織であり続けたいので、私はきっと今夜もソファで寝る。










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