【抜き書き】ポール・ティンゲン『エレクトリック・マイルス』

もしも音楽の語法を理解していないのなら、もしくはその「言語」を話さないのなら、その話題に関しては、敬意を表して、黙っているべきである。

ポール・ティンゲン『エレクトリック・マイルス』水声社、20

 ここでいう「言語」とは、特にこの場合では、マイルス・デイヴィスを批評するにあたって、ジャズの文脈からのみ語られている、その語り方であって、その観点からすると、中、後期の「エレクトリック・マイルス」と呼ばれる時期の音楽はロック、その他に寄っており、評価するに値しないという論調がかなり多かったという。
 そんな事はないと、逆にそのロックその他の、「エレクトリック」なマイルス・デイヴィスにこそ立脚した伝記を書く、という「制約」を課して書いたのが本書であるとのこと。
 それにしても、その文脈とはまた別で、「言語」を知らない物事に関しては、「敬意を表して、黙っているべきである」というフレーズが、心に残った。まだほんの序盤だけれども。我々は、ちょこちょこいろんな皿に箸をつけるかのように語り過ぎる、必要なのは、語るべきことを語ることと同時に、しかしそれよりもはるかに重きを置いて、語るべきではないことに対して黙っていることなのではないか。そう思えた。

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