沼田半

不本意なリサイクル 98年生まれ。live looping musician

沼田半

不本意なリサイクル 98年生まれ。live looping musician

最近の記事

【芸術・論考】奇跡と簡単さについて

新曲ができないまま当noteの文章だけが増えていってしまっている感があるが、それが私の性質らしくしょうがない。書かれている内容はきっと音楽制作にもつながってくることだと思う。※文末に少し自作に触れます。  話を分かりやすくするために「奇跡」という単語を二義に分けたい。 ①とんでもなく確率が低いこと起きること ②超自然的な現象がおきること  例えば賭け事で何連発も大当たりを引き当てることを「奇跡だ」というとき、それは第一義にあたる。確率的にはとんでもなく低いが起こりうるこ

    • 【創作】『双魚』(第2/2回・約4000文字)(“しょぼい文体”の実践)

      第一回https://note.com/qe5aspuv/n/nc97687b5bf57)  下着を履き居間に戻る。スマホで時間を見ると十五時五五分。間に合うペース。  ドライヤーは、強い熱風を顔付近に当てるのが神経逆立つので嫌いだが、しないわけにはいかない。人は、大雨に打たれると必ず走る。濡れてもいいとき、例えば、あとは帰宅して服を洗濯機に脱ぎ捨てるだけのときも走る。大雨は目に当たり視界を阻みまぶたを強制的にこわばらせ、呼吸の隙間に入り込み、背筋に冷たいしずくが流れる、つ

      • 【創作】『双魚』(第1/2回・約3750文字)(“しょぼい文体”の実践

        (前書き)  長大・重厚な文体や思想からは資本のにおいがする。読む分には満足させてくれるけど、その一方で自分のような小市民とは馴染み難いものがあるように思わないでもない(その割に読んでしまってはいるけど)。  逆に私はバッハのメヌエットが――それもピアノ初心者が習うような簡素な楽譜のものが――ずいぶん好きなんだけど。そういった単音や単純な和音の構成音が対位法的に作用するように、小説の、一つ一つはしょぼい各文が同時進行しつつ互いに作用するものを作ることが狙いである。 (区切り線

        • 音楽活動『Darwin Peninsula』始動の辞 ~『#1』概要を兼ねる

          2024.3.19. かねてから準備し制作していた音楽活動『Darwin Peninsula』として、一本目の動画を公開した。 (歌詞は当文章最下部)  音楽的特徴は明らかで、ルーパー(リアルタイムで弾いた演奏を何度も繰り返しループ再生するエフェクター)とシンセ(ドラムマシン)を使い、ボーカル含めすべての音を一発撮りで演奏・録音することである。録音後の音について後から編集はしない。ミックスもマスタリングもしない(だから今作では冒頭とラストのギターのみの部分に不本意なノイズ

        【芸術・論考】奇跡と簡単さについて

        • 【創作】『双魚』(第2/2回・約4000文字)(“しょぼい文体”の実践)

        • 【創作】『双魚』(第1/2回・約3750文字)(“しょぼい文体”の実践

        • 音楽活動『Darwin Peninsula』始動の辞 ~『#1』概要を兼ねる

          受験に落ちて人生終わったきみへ:補遺

           先日2024.3.11に投稿したエッセイ『受験落ちて人生終わったきみへ』(https://note.com/qe5aspuv/n/naa418edb0d71)について、本論に組み込めなかったことがいくつかあったので、補遺として当記事を残す。  ぼくのいま務めている仕事は極めて一般的な事務職で、電話に出たり、エクセルを触ったりホッチキスを打ったり、一山どこにでもある仕事だ。ただひとつ大きな特徴があるとすれば、年に数百人単位で、大学生と高校生を相手に5分ほど電話で話す業務があ

          受験に落ちて人生終わったきみへ:補遺

          【エッセイ】受験に落ちて人生終わったきみへ

           影がない。ぼくには影がない。このことを人に言ったら驚かれるだろうが、ぼくは言わないし、誰もそのことに気づかない。人に影があるかないかなんて、横に並んで外を歩いたりでもしないと気付かないものだ。  村上春樹を初めて読んだときは本当に驚いた。ぼくと同じ設定の人がほかにいたとは。そして、世の中に影がない人は意外と多くいるのかもしれない、と。  気づいたのは二十歳の誕生日を迎えた翌日だった。ぼくは少なくともその6か月前には、十九歳から二十歳になるこの日の接近を恐れていた。  な

          【エッセイ】受験に落ちて人生終わったきみへ

          【エッセイ】気象予報士試験に落ちた

          2024年3月8日。第61回気象予報士試験に落ちた。 不合格通知を受け取ったのである。 大学を中退してボーっと働いているのにも飽きた、2022年4月ごろ。体力も愛嬌も運転免許証もない自分の先行きに不安を抱き、適当なウェブページの「資格一覧」を眺めた。 弁護士、会計士、司法書士…… しかつめらしい文字列に目線を滑らせる。  「ム……」 【気象予報士】で手が止まったのは ①難関資格と言われている(合格のバリューが高い) ②ビジネス臭が薄く、学問臭がして好ましい ③池澤夏樹

          【エッセイ】気象予報士試験に落ちた