【創作】『双魚』(第1/2回・約3750文字)(“しょぼい文体”の実践
(前書き)
長大・重厚な文体や思想からは資本のにおいがする。読む分には満足させてくれるけど、その一方で自分のような小市民とは馴染み難いものがあるように思わないでもない(その割に読んでしまってはいるけど)。
逆に私はバッハのメヌエットが――それもピアノ初心者が習うような簡素な楽譜のものが――ずいぶん好きなんだけど。そういった単音や単純な和音の構成音が対位法的に作用するように、小説の、一つ一つはしょぼい各文が同時進行しつつ互いに作用するものを作ることが狙いである。
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