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2022年北京オリンピック開幕式、IOCバッハ会長は“薄着”でなかった、についての小話。(#56)

2022年2月4日午後9時(現地時間午後8時)、第24回冬季オリンピック北京大会の開幕式が催されました。
夏季大会と冬季大会を開催した初めての場所として北京はオリンピック史に名を刻むことととなります。
大会前は中国内政下における人権問題などからアメリカなどの外交ボイコットがあったり、また新型コロナウイルス・オミクロン株の急流行などもある中で、91か国の参加国に加え、華々しい電飾技術によって画面越しに広がる広大な世界観を繰り広げていました。

画面越しに習近平中国国家主席の左隣に座るのはトマス・バッハ現IOC会長です。
その装いが突如として話題に上がりました。
習国家主席を含む多くがベンチコートで開会式の進行を見守る中、バッハ会長は見る角度からはジャケット姿で、いかにも寒々しく感じさせたのでした。
気温は3度未満から-4度とも時間帯によって様々ですが、一言でいえば“寒い”――それは当然といえば当然です、なぜって冬季オリンピックの開会式ですから。

この姿は日本中国問わず、「バッハ会長は寒くないのか?」という疑問でトレンドとして取り上げられていたようです。

多くはいわゆるスーツ姿、ただのセットアップのスーツで登場しているように理解していました。

その場合、間違いなく“薄着”です。

バッハ会長は実はコートを着ていた。

結論からいうと、バッハ会長はコートを着ていました。
写真を見てください。

https://www.nishinippon.co.jp/image/444904/
https://hochi.news/articles/20220204-OHT1T51214.html
https://www.j-cast.com/2022/02/04430444.html?p=all


ジャケット風のものは膝丈まであります。
加えて、前ボタンは2つボタンの2つ留めです。
これはジャケットでいえばかの有名なJ・F・ケネディー元アメリカ大統領が好んだ着こなしとも言われていますが、基本的になドレスコードのセオリーに反しています。
ただコートとなるとそれは許されています。
それは外套、つまり「寒さを防ぐこと」が主目的だからです。
通常、シャツの袖口(カフ)は自然な体勢のジャケットを着た状態で1〜1.5cmほど覗かせるのが着こなしのセオリーですが、こちらも当然コートなので腕丈はシャツより長く、袖口を隠しています。

バッハ会長が来ているのは“チェスターフィールドコート”と呼ばれるコートです。
日本市場において2000年代後半から2010年代に根付いていったクラシックブームで人気アイテムとして認知されやすくなりました。
ピンとこない人は“相棒の杉下右京が着ているコートと同じ”と理解しても問題ありません。

これを“薄着”と思うかどうかは個人の問題ですが、厚手の生地の場合、なかなか暖かいものです。

実際、バッハ会長の着ている生地はかなり厚手のものなのは画面越しにも分かります。

だから白いドレスシャツ、いわゆる“ワイシャツ(=ホワイトシャツの省略形、Yシャツは当て字)”が寒そうに見える原因ではないかと推察しています。
以下、私のTweetです。

そしてバッハ会長が着用しているものはタイにせよシャツにせよ高番手(細い糸、細くなるほど高級になる)のものであり、エレガントさはあるものの季節感は欠いている印象があります。
この場合、厚手のカシミヤのマフラーを挿すかタイの素材をウールにしたりシャツを厚手にしたり工夫すべきですが、フォーマルという形式を取るならば難しいかもしれません。

加えてマフラーがなければ、上半身とVゾーンに大きな変化は望めませんので、バッハ会長が座った状態から開会式を見始めた人は“ただの上下スーツ姿の寒く見えたとしても不思議はないです。
それどころか習国家主席など周辺のベンチコート姿に釣られるかたちで余計に寒々しく見えたとも言えます。

それでも“ちょっと長めの”スピーチの際はベンチコートに衣装直ししていました。

www.nikkansports.com
Anthony Wallace/Pool/Getty Images


おそらく観客席とグラウンドでは温度差があったのではと推察していますが、それならば最初からベンチコートでよかったのではという考えに至ります。
あるいは想像以上に寒かったのかもしれません。

しかし、おそらくスーツの装いに精通していない層へもこのように話題が上がったことはSNS時代の良い点であり、嬉しく感じています。

そしてスーツは元来ヨーロッパ発祥ですから、ヨーロッパを越えた地域での気候などを想定したドレスコードではありません。
つまり試されるのはどのように応用するかです。
場面場面でどのようなコードが相応しいのか、今回は冬のドレスコードでしたが、今後も世界各地で様々な変化していくのではないでしょうか。

最新のニュースを確認しながら、引き続き、追い掛けていこうと思います。

ありがとうございました。

頂いたものは知識として還元したいので、アマゾンで書籍購入に費やすつもりです。😄