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看书:『WOODAP 上下水道の未来への処方箋』(#2)

国土交通省が平成30年に纏めたデータによると蛇口からそのまま水道水を飲める国は世界で9ヵ国しかないそうです。

日本はそのうちのひとつ。だからこれからも安泰かというと、そうではないようです。何故でしょう。設備の老朽化と技術継承者不足。水道関係も例外ではないようです。つまり日本の上下水道事業も変革期に入っているといえます。
しかし各自治体等で中々足並みが揃っていないなど問題は様々です。

本書は民間側からのアプローチです。ですが民間だろうが公営だろうが、全ての打開の始まりは“連携”です。そこには分りやすい”共通の敵”が必要でした。何か、激甚災害です。
著者は災害で水が供給が出来ない状態に対して“ただ壊れないように”だけでなく、“壊れたとき、それを速やかに回復させ、延命を図る”対策が重要だといっています。
そのために復旧の出発点管理、施設能力の最適化、時に“アドリブ”のように施設の最適化が出来ない状況で力を発揮(最適化できる)しなければなりません。そのための準備、それらの実現には“知恵”が必要で、その”知恵”を集約させるためICTが鍵となっております。これらが管理面(ヒト・モノ・情報”の一元管理)の軸です。

上記阻害要因からわかるように、これまでバラバラに管理されていました。細切れに管理されているため、主として人口の大小(特に小さい地域)が設備や価格に差を生じ易い状態でした。反面安定供給の鍵はロット増と“代替可能”の実現です。分かりやすくいえば、“誰がやっても上手くいく”、共通部材設計とノウハウの共有です。またそのような状態ではコスト競争力も生じます(つまり安価にサービスを提供しやすくなる)。
EV車のそれとよく似ています。
ヒト・モノ・情報のコモデティ化。専門性と汎用性を統一可能とするのはICT、またインフラという点でブロックチェーン技術も見逃せません。
ヒトに関していえば、ただの省人化ではなく、これまでの“ムリ・ムダ・ムラの削減”により、最適な人員配置に向かうといいます。

でもやはり人が使うです。もう一つの軸は信頼です。不可欠なのは市場経済共通です。
本書表題“WOODAP”とはPDCAサイクルとOODAサイクルが循環することで本主題でもある“水(water)”とその“水”を導いた“知恵(wisdom)”とが持続可能な開発に結び付き、同時に信頼(個人→組織→技術)と反芻していく、そのような解釈でしょうか。

国連は2016年から2030年までに世界が達成すべき持続可能な開発目標として17項目が挙げられています。
この目標6には「安全な水とトイレを世界中に」とあります。水道事業先進国として真剣に向き合うことは日本においてチャンスに他なりません。
また阻害要因について考えていた際、現況の新型コロナウイルスにおける各自治体の対応と関連する印象がありました。その意味では同じ文脈で考えを巡らせるのもよいかもしれませんね。

今回の書籍

関心の深堀
・コンセッションについて
・ミルトン・フリードマンの新古典派経済学

次回読みたいトピック
上下水道の歴史(#1より継続)

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