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影法師でありながら著名なバンクシーと日の目をみた朝倉未来(#45)

RIZIN28の記事を作成してから、ひと月近く経ってしまいました。
特別朝倉未来選手のファンではないのですが、彼の言動には興味を持っています。
事実、日本格闘技界において発言力のある一人であります。
そのためか味方だけでなく敵も多いようです。

皆、彼の何に惹き付けられているのでしょうか。

彼はいわゆる「不良」でしたが、正義感の強さだったり、義理を重んじるタイプだったりすると同時に、どこかしら発する言葉に重たさがあるように思えます。
実は「読書家」であるそうです。
喧嘩に明け暮れて、勉強もしたことがないタイプだったのに「読書家」というのもどこでどう心境変化があったのか分かりませんが、彼の醸成する雰囲気の作り出す一因になっているに違いありません。
少し脱線しますが、ロンドンオリンピック金メダリストで現WBA世界ミドル級スーパー王者でもある村田諒太選手も読書家として有名です。
双方とも「粗い(殴り合う)」競技者でありながら、言葉の節々にどこか思慮深さが共通して垣間見えます。

そんな朝倉選手の最近アップロードされた動画で自身のブランド「MATIN AVENIR」の新作としてバンクシーの絵柄をプリントされたTシャツが紹介されていました。
詳細については特に深く触れることなく、動画内ではむしろこれまでの歩みを思い浮かべ感慨一入といった内容のものでした。

朝倉選手の面白いところはバンクシーについてあえて名前を出すこともせず、自分たちのブランドがここまでに至った歩みについて焦点を当てた点です。
きっとそれがファンたちが求めている情報だということを理解しているのでしょう。
彼の言う通り、ファンの求めているのは覆面のバンクシーについてではありません。
また「分からない」がゆえに「何かすごいことが起こった」と思わせる効果も生み出せているのです。

ただ、私が関心を抱いたのは「何故バンクシーと朝倉未来が結びついたか」でした。
両方の存在を知っている人にとっては当たり前のことかもしれませんが、彼らには大きく分けて2つの共通点があります。

共通点1:「路上」という舞台


ところで朝倉未来選手の異名は何か御存じでしょうか。

「路上の伝説」

先述の通り、地元では喧嘩負け知らずの不良でその名が付いたと言われています。
不良とは文字通り「良くない行為」です。
実際、彼はその後少年院で過ごすのですが、かつて不良の名の元に違法行為が行われた証拠とも言い換えられます。
そして「路上の伝説」は場所を格闘技の舞台へ移すことで、彼の「負の側面」は付加価値となり今に生きているのです。

まさに「生ける伝説」を作っている過程といった感じでしょうか。


対してバンクシーです。


イギリスの港町、ブリストル出身であること以外、彼(一応、男とみなされている)の素性は明らかにされていません。
彼は「ストリートアーティスト」と呼ばれています。

「ストリートアーティストって何?」と思った人もいるかもしれませんが、簡単にいえば、街にある落書きをしている人です。

「落書きってイギリスでは違法じゃないの?」、いいえ違法です。

つまり、バンクシーも路上で違法行為をしている一人なのです。

この点は朝倉選手がすでに舞台を移しているのと異なり、バンクシーは路上で生きた伝説を作り上げている最中といった感じでしょうか。

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共通点2: Artist

朝倉選手にとっての路上が「過去」のものに対して、バンクシーにとっての路上は「現在進行形」のものになります。

一度街にある落書きを思い浮かべてほしいです。
落書きはいつ行われているのでしょう。
ほとんどの方がその現場をみたことがないのではないでしょうか。
闇夜に身を隠して、気づいたらそこにあるような印象で、まさに明け方、「日の目をみる」感じなのです。

繰り返しになりますが、ストリートアーティストとは、そう呼称されても大義では違法行為者に変わりありません。
落書きされた側がどう捉えるかは自由ですが、要するにアーティスト当人が表立って活動ができない理由でもあります。

対して朝倉選手はどうでしょうか。

今や6月13日のRIZIN28東京ドーム大会のメインイベントを務めるようなスポットライトを浴びる存在です。

彼が競技しているのは総合格闘技で、最近では時々MMAと呼ばれることもあります。

MMAとはMixed Martial Artsの頭文字で、直訳すると「複雑で好戦的な芸術」です。

そんな格闘技に携わる競技者をあえて「アーティスト」と称しても何ら不思議ではありません。

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まとめ

MATIN AVENIRにて販売されるのはバンクシーの4種類の絵柄がそれぞれプリントされた、4種類のTシャツになります。
一枚11,000円と決して安くない、限定商品としての展開です。
ブランドの狙う高価格帯、限定商品との相性の良さも伺えます。
落書きは自由に上書きされる可能性が常にあり、つまり、いつ、どこに登場するかわからない刹那的の要素が強いのです。
バンクシーサイド( ※注)バンクシーの活動は一人でなくチームで行われている)からの提案だったのでは、と勝手に推測していますが、対日本向けに朝倉選手を選定したブランディングとその嗅覚には驚かされます。
そして影法師のような存在だからこそ、様々な解釈もしやすいのです。
だって、陽に当たればみな影ができますから。

今後どのようにアクションを起こしていくのか見物です。

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