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32歳で引退したプロ野球選手が一から就職活動した話


はじめに

私はアスリートの引退後のキャリアを充実させることは、スポーツそのものの価値を高めることや、競技人口減少の問題解決に繋がると考えている。なぜなら、スポーツを通じて得た経験や学びをいかし、競技引退後の人生を豊かにすることで、これから、スポーツを始めようとする子供たちや、その親世代の不安を取り除くことができると考えているからだ。
親世代からするとスポーツをやってもその先に何が残るのか。ましてやプロにまでなれたのに、その後の人生で苦労するのであれば、最初から勉強をやらせて社会人として食いっぱぐれないような力(スキル)を身に付けさせた方が安心だという心理になるのもわからなくない。ただ、そのせいでスポーツをやりたくてもやらせてもらえない子供がいたとするならば、それは残念でならない。スポーツという選択肢が将来の不安に繋がる。そんな世界観だけにはしたくない。だからこそ、アスリートの引退後の人生を充実させることはとても重要なテーマだと考えている。

引退後に一から行った就職活動

私はプロ野球選手を引退後すぐに履歴書と職務経歴書を作成し、企業のHPの中途採用欄から直接エントリーした。
私が就職活動をした理由は、野球に専念してきた自分のキャリアが社会からどのような評価を受けるのかということに興味があったからだ。また、私が受けた評価は他のアスリートにも共通するものがあると考えた。そこで一定の評価を受けることができれば、他のアスリートの道筋を作るきっかけにもなるではと考えた。他の理由としては、なるべく早くビジネススキルを身に付けて"個"の市場価値を高めておきたかった。そうすることが今後生きていく上での一番のリスクヘッジになると考えた。
就職活動は約2ヶ月半ほど行った。日々、職務経歴や履歴書の作成、企業研究、面接練習などに奔走した。私はコンサルティング会社を第一志望にしていたが、そもそも受かることは難しいと考えていたため、色々な業界の企業を幅広にエントリーした。そして結果的には30社ほどエントリーし、6社から内定をいただけた。中途採用の募集要項など満たしているはずもないので構わずエントリーした。
話は少し変わるが、就職活動中に引退したことを知った旧知の方々が次の進路に困らないよう手を差し伸べてくれた。ヤクルトからは球団職員やヤクルト本社のお話もいただいた。身寄りもなく就職活動をしていた私にとってはとても有難いお話だった。球団職員であれば仕事を通じて球団へ恩返しができるし、ヤクルト本社に入社すれば、大企業で一定の安定が手に入るため、家族がいた私にとってはとても喜ばしいお話だった。しかし、少し考えさせていただいた後、お断りした。
私は戦力外通告を受けた際に、社会に出たら自分は何ができるのだろうと考えたが、何も浮かばなかった。小学1年生から32才まで野球にすべてを掛けてきた。ただ、これだけ頑張ってきたのに、何1つ浮かばなかったことがとても悔しかった。このままでは、これまで頑張ってきたことが無駄になってしまうと考え、野球を通じて得た経験や学びが社会でもいかすことが出来ることをアピールしていこうと考えた。また、そうすることで他のアスリートの選択肢を広げるきっかけになるかもしれないと考えたため、有難いお話ではあったがお断りした。
私は最終的に某コンサルティングファームから内定をいただき入社を決めた。後の上司となる方に面接をしていただいたのだが、入社後、ある言葉をかけられた『久古さんの「スポーツの経験は社会でもいかすことが出来る」という言葉があったから採用した。もし、スポーツしかしてきていない。というような言葉をたとえ謙遜であっても言っていたら採用はしていなかった』この言葉を聞いたときに多くのアスリートにこのことを伝えたいと思った。私たちが思うほど、社会の人たちはアスリートに対して"スポーツしかしてきていない"という見方はしていない。スポーツ一筋やってきたを卑下したり、自分で自分の可能性に蓋をする必要はないということだ。私が就職活動を通じて大切だと感じたことは、自分がしてきたことを転換して他の何かにいかそうとすることや、それを自分の言葉にして誰かに伝えることだと感じた。

最後に

何度も言うようだが、多くのアスリートが競技を通じて得た学びをいかし、充実した引退後のキャリアを歩めるようになって欲しい。そのためには、アスリート自身が変わることも大事だが、まずは引退した元アスリートが引退後のキャリアでも頑張り、既成概念を変えていくことも大切だと考えている。少し大げさなことを言えば、自分の行動一つで自分がしてきたスポーツの価値を高めることもできるし、また、その逆となってしまう場合もある。だからアスリートとしてやってきた以上は、引退後もその競技を背負っていく義務があると思う。そしてそれが、自分を育ててくれた競技への恩返しにもなるのではないかと考えている。私もプロ野球OBとして野球の価値を高めていけるよう今後も頑張っていこうと思う。
※以下に当時書いた職務経歴書の一部を掲載させていただく。これを見た現役アスリートや体育学生などの参考になればとても嬉しく思う。
以上

当時書いた職務経歴書(一部抜粋)

これまで取材、寄稿した記事を一部掲載


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