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ベーコンサンドが好きな男に悪い奴はいない。

<ムービージュークボックス26>

加齢臭満載。顔をそむけてもぷんぷん臭う映画に出会った「潮風とベーコンサンドとヘミングウエイWestling Earnest Hemingway(1993)」

アーネスト・ヘミングウエイとレスリングした男©︎myflixertv.to

アイルランド系アメリカ人の船長(リチャード・ハリス)
キューバ移民の床屋(ロバート・デュバル)
船長のアパートの家主(シャーリー・マクレーン)
床屋の愛するウエイトレス(サンドラ・ブルック)
3名のアカデミー賞受賞俳優などのキャスティング
監督はランダ・へインズ(「愛は静けさの中に」の女流監督が男の老醜をあばく)

船長と床屋をリタイアした70代のふたり。4度離婚の船長や、未婚の床屋は、
失うものは何もない。

公園の子供に向かって「学校は行かないのか?」
「夏休みだから」
「夏休みは長いが、人生は短いぞ」
初老の船長にしかわからないことを言う。

船長は、女性と見れば手当たり次第。自分と同じアイルランド系アメリカ人と結婚していた家主の女性に気があるが、相手にされていないこともわかっている。

でも、船長はあきらめない。「どうして、アイルランド人の姓を変えないんだ」と
尋ねる「ああ、改姓は、手続きがめんどうだから、そのままにしてるだけ」と
そっけない。船長には「ヘミングウエイとボクシングした」持ちネタがあるが、
彼女も誰も信じない。

家主シャーリー・マックレーン©︎imdb.com

床屋は、行きつけのダイナーのウエイトレスが、いとおしい。注文するものは、
いつも決まってベーコンサンド。
彼女に「毎日は体によくない」と注意されたのが、とてもうれしい。彼女のバス通勤に付き合う。彼女も変な男にからまれなくて済むので、許している。これを天使の愛だと、勘違いする床屋。

床屋のデュバルと、ウエイトレスのブルック©︎imdb.com

ある日、床屋は、何年もヘアカットしていない船長の髪を切ってやる。

©︎tv.apple.com

「髭も剃らないと、男前にはなれない」と言って、シェービングもしてやる。
身だしなみを整えたことで、船長は映画館の受付のバイトを得る。


一方、友達を幸せにした床屋に不幸なことが起こる。愛しのウエイトレスが、水兵と結婚してダイナーを辞めることになったことを、別のウエイトレスから聞く。

フロリダのキューバ人が集まるパーティに、ウエイトレスを誘って、彼女と
サンバを踊る晴れ舞台を夢見た。ひとりで練習していたことが無駄になった。

「女心は、床屋のお前にはわからない。お別れのプレゼントは、俺に任せろ」と
船長は見栄をきって、”泣くには酒だ”とウオッカを、ウエイトレスに贈る。
「私は飲まない。2人で飲めば」と、彼女に突き返される。

船長©︎5tv5.ru

せっかくのお別れを台無しにされた床屋は怒った。「あんたのどこにプレゼントのセンスがあるんだ。だいたいその野球帽だって、センスがない」「これは、息子が誕生日に贈ってくれたもんだ」「親の誕生日祝いに、野球帽を贈るあんたの息子はバカだ」と怒鳴った。船長は「俺も、息子はどうしようもないバカだと思っているが、他人に言われると傷つく」と、小声で言った。


引越し前のウエイトレスの家に行って、さよならを言いたいと床屋は思った。
10キロ先の彼女の家に行くには、喧嘩した船長が持っている2人乗りの自転車を
借りないと行けないので、頭を下げた。2人乗りの自転車をこぐために船長も同行したが、途中で心臓がバクバクしはじめ、ギブアップ。

2人乗り自転車で向かう©︎imcdb.org

引越し準備のウエイトレスの家にたどり着く。予想外の訪問者に、梱包してあるグラスをほどいて、水を差し出そうとしたが、床屋は疲れ切って居眠りをしていた。床屋は気づかなかったが、彼女の顔には天使のようなやさしい笑顔があった。

その夜、虫の知らせで、床屋は船長の部屋に行った。
船長は、上半身だけ映画館の制服の白いシャツにボウタイで正装して亡くなっていた。床屋は黒いズボンを履いていないことに気づき、履かせてやった。
ふと顔を見ると、船長が髭を剃って亡くなっていたことに気づいた。
「髭を剃らないと、男前にはなれない」と言った床屋の言葉が生きていた。

数日後、床屋は、キューバ人のパーティに1人で行き、晴れ姿を寂しく飾った。









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