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スタバは特別な場所だった、その1

今から約20年前。

「スタバでコーヒーを飲む」

という事が、特別な意味を持つ時代があった。

日本に初めて「スターバックスコーヒー」が上陸した時は、そこまで話題になっていなかったように思う。
その時代の情報源は、テレビ、○○ウォーカー等の情報誌。口コミ。
じわじわと情報が、テレビや、情報誌から広がっていき、スターバックスコーヒーは「今までにないようなコーヒーを買って飲める所らしい」という認識が若い人、流行に敏感な人を中心に広まっていった。

携帯電話は電話をする為の電話。ようやく短いメールがやりとりできるようになった時代、だった。

スターバックスでコーヒーを飲む、飲んだ、という事が一種のステータス、という時代が確かにあった。
その噂のスターバックスが大阪に初めてきた。1998年の事だった。
私はまだ高校生だった。まだその時はスターバックスはそこまで爆発的な人気はなかった。
いや、まだ高校生だったから、あまり興味はなかったのかもしれない。
コーヒーを休憩時に飲む、という習慣がないからだった。

何かお洒落なものが大阪にやってきた。緑の丸い女神のような特徴的なロゴ。あのロゴの女神はなんなんだろう?
スターバックス?コーヒー以外に飲める何か凄い飲み物があるらしい。なんとかフラペチーノ?とか?
飲み物の頼み方にルールがあるらしい。
アメリカからやってきたから英語で頼むらしい。

などなど。根も葉もない噂や情報が口コミでじわじわ広がり、関西ウォーカーの巻頭で、スターバックスの特集が組まれるようになり、認知度が広まっていった。流れるように、ゆっくりと。

スターバックスが大阪に上陸してから、2~3年後。年頃になり、スターバックスのあるHEPファイブで買い物をよくするようになった。

ウィンドウショッピングを楽しんで、疲れた頃「お茶でもしようか」となる。まだ18かそこらの青臭い女子なので、行ける所は限られている。

そうだ、スターバックスに行けばいいやんと思った。

スターバックスコーヒーは、カジュアルな場所、でも今までないような落ち着いた雰囲気。という情報は分かっていたが、なんせ行った事のない飲食店。一人で入るにはハードルが高い。しかも独特のオーダーの仕方がある、という情報は情報誌で得ていた。それを読んだ時の感想は率直に言うと

「メモ紙にメモして、それを見ながらじゃないと、言えないよ・・・!」

だった。

まずは、サイズ。「ショート、トール、グランデ、ベンティ」4種類だ。S,M、Lではない。初っ端からハードルが高すぎる。

次は、アイスかホット。

次に牛乳の種類、ローファット、ノンファット。英語の成績は悪かったので意味不明である。

次にドリンクの名前。このドリンクの名前が厄介だった。普通のホットコーヒーがないのだ。大阪ならホットコーヒーなら「ホット」アイスコーヒーなら「レイコー」だ。もしこれをスタバでオーダーしたら、赤っ恥間違いなしだろう。年頃の流行に敏感な女子には耐え難い仕打ち。その場で切腹する勢いだ。

そしてメニューは横文字のオンパレード。本日のコーヒーはグアマテラナゾナゾナ?カフェミスト?キャラメルマキアート?キャラメルといえば四角いお菓子だけど、そんなものが入っているのか?カフェモカ?モカ?ラテ?スターバックスラテ?ラテってなんだよ!!!!!!!!!!!!誰か教えて!!!

見た事のない単語のオンパレードで脳の処理能力がパンクしそうだった。レイコー、レイコー、レイコーはないのか・・・

普通のコーヒーが本日のコーヒーだとして、頼むとしたら

ショート、アイス、本日のコーヒーなのか?牛乳は?牛乳は?

ワンショット追加って何??????ショットとは?

情報誌のスタバ特集を見ただけで、脳内パンク状態なのに、これを実際店でオーダーするとなると、ハードルが高い。メモを見ながら店員に伝えるなんて、18の若造のちっぽけなプライドが許さなかった。

とりあえず一回目はスターバックスが、どのような雰囲気か偵察することにした。

「お、お洒落・・・」新しい洋服が入った紙袋を片手にもってポカーンとするしかなかった。

今まで見たことない雰囲気の店構えだった。ブラウンを基調とした床。オレンジ色のお洒落な照明の店内。謎の女神のロゴがあって、壁はなんかよく分からないデザインの壁紙で、椅子もテーブルもお洒落だった。

そしてお客はみんな、仕事の書類とにらめっこか、テキストを開いて勉強か、読書をしていた。この時代の「意識高い系」の姿である。「意識高い系」なんて言葉はなかったが。

席は空いていた。少しだけ。が、席は先に取っていてもいいのか、すら分からなかった。もし、コーヒーを無事買えたとして、席が埋まっていたらコーヒーと荷物を持って、行き場のない状態になる。そうなったらどう体裁を繕えばいいのか分からない。

とりあえずスタバの前まで行った・・・

それでよしとしようじゃないか・・・

その日は家に帰った。

その2に続く

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