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ガードウーマン


QQ女には20代のころ東京でやったバイトでガードマン(警備員)の時代がある。

のほほんと生きてきてやりたい事がみつからない自分に不安を覚え、もっと世間に揉まれたい!芸人の下積み時代のような事をしたい!となんの芸もない自分がちょっとズレた方向に情熱を向ける。

なんのスキルもないため特技はないが、普通のアルバイトには興味がない。
中学高校とスポーツをやってきたから体力はある。
お金がないけど自由は欲しい。

そこで選ばれたのが、ガードマン(警備員)!

その日その日で違う現場に行き、仕事をして、お金がなければ日払いでその日の給料がもらえるというわかりやすくシンプルなお仕事。

基本9時間拘束8時労働で日給8000円。
(今なら東京都の最低賃金を割っている)
1時間で終わっても8000円というボーナス現場もあるというギャンブル性も良い。

入ってみると、それはそれはキャラの濃いいろんな人がたくさんいた。
バンドマンや役者のたまご、モデル、ダンサー、山好き、旅好き、ほんとは金持ち、日給を全て飲んじゃうおじさま、いつも便座カバーを持って移動してるおじさま、なんでもかばんから出てくる元薬剤師のおばさま、実は元社長などなど。
バラエティ豊かで面白かった。

その頃は(今もあまりいないけど)女性の警備員は少なかった。
私は女だということでナメられたくない!
そこらへんのオッサン(おじさま)より働きますぜ!
という思いで「そうっすねー」的な話口調でタバコをふかし、250ccのアメリカンタイプバイクでいろんな現場に行った。(ヤンキーではないよ)

よく行く現場などは、皆良くしてくれて、
お金がなくて食パン1枚お昼ごはんに持っていったら職人さんが色々恵んでくれていつもよりお昼ごはんが豪華になっちゃったなんてこともあった笑(皆だいたい優しい)

道路での工事や、建築現場などがあったのだが私はよく道路の工事に行く事が多かった。

仕事としては、通行止め(看板を立てて横に立ち、通りたい車に工事の説明、迂回の道の説明などをする)や、通行人の誘導と作業員への声がけ(工事で狭くなった道を通る人が安全に通れるよう作業員に聞こえるように「歩行者通りまーす」や「段差ありますー」と声をかけながら誘導する)、
そして片側交互通行、通称カタコウ。
ガードマンの中で1番花形のお仕事だ(と思っている)。
1車線の対面通行で片方を工事すると、片方だけであっちからくる車とこっちからくる車を順番に通さなければならない。
2人1組(長い距離の場合は真ん中に1人、交差点や路地がある場合は数人で)でコンビを組みタイミングを合わせながら車を止めたり進めたりするのだ。

初めて車を止めた時は「あ、とめれた〜!」と感動したものだが、慣れてくるとちょーうどいいところでいかに車をとめれるか(それは棚にジャストフィットの収納カゴを納められた時の快感)というセンスが問われるお仕事なのだー!
これはコンビを組んだ人との息が合うかどうかが大きな鍵となってくる。

これが信号や交差点によってはとてつもなく難しい。
以前自由が丘で、踏切があって普段でも混雑する道路で全ての路地から苦情がくるくらい渋滞させたことがある笑
(仲間が車にひかれたり私のガードマン時代最悪の現場だった笑)
巷では「おしゃれな街、自由が丘」というイメージだが私の自由が丘のイメージはもはや渋滞の道路。

警備員は現場ヒエラルキーの中では1番低い。
(強 近隣の人や通行人→工事親会社→工事請会社→ダンプ運転手→警備員 弱)
なのでお客さんは通行人だけではなく仕事を発注してくる業者さんたちもという事になる。(本来は同じチームとして対等であるべきだけど、実際はそういう訳にはいかない)

しかし今思うと工事現場の警備員って超接客業。
まず、たいがい怒られる。
「なんで工事やってんだ」
とか、
「うるさい!」
とか、
自分ちの水道管が綺麗になるというのに怒ってくることもある。1度なんか、迂回するからガソリン代払えと言ってきた高級車の運転手には驚いた。

道は誰もが通るところ。
そこで上手に丸く収めなければならないという大変なお仕事なのだ。

人は食べた物で出来ていると言うが、やってきた事でも出来ている。

この経験が何かしら今の自分に役立っているとしたら、工事現場を通る時、「もっとこうしたらいいのに〜とか、おー上手いねー」などと言いながらカタコウチェック評論家になれた事と、「お、これは仮舗装だからもう一回舗装工事があるねー」と工事の流れがわかるのと、暑い寒いや悪天候の中やる工事の大変さとか...そんなこともあるけれど、結局いろんな年代、おもしろい人と会うのが好きで、その時その時でいろんな人とチームになってその場を作っていったり、より安全に(みんなが楽しめるように)なることを考えるというのが楽しかったなー。

全く今の仕事と関係ないけどいろんな事が役にたっている。今の仕事は未来の自分に何の役に立っているかしら。

災害時などはインフラ工事の業者さんたちは現地に行ってボランティアで復興支援に行く事もある。東日本の震災に時は東京の業者さんは順番に行っていた。
我々の生活には大切な方々なのだ。

たまにずーっとぼんやりして何を聞いてもポカンとしている警備員さんもいるけど(笑)どうぞ寛大な心でやさしくしてあげてください。


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