【映画】パシフィックリム・アップライジング感想(ネタバレあり) 前編

こんにちは、クオンタムです。
勉強のため、賛否両論なパシリム2を観てまいりました。個人的には結構好きな映画だったのですが、これは確かに評価が分かれるな……という気持ちもあり、備忘録として感想を書いておこうと思います。

■総評

先に結論から書いてしまうと、

・エンタメ映画としては高得点。10点満点中8点はある
・パシフィックリム1と同じものを期待してはいけない

という感じですね。
僕は最初から『パシリムは1で完結し、2以降は外伝』というイメージで観にいったので、「前作の流れを汲んだ、良いハリウッドエンタメ映画だなあ」という感想だったのですが、1とまったく同じものを期待して観に行くとけっこう……いやかなり辛いかもしれません。

逆に言うと、ロボットがグリグリ動くエンタメ映画としては十分すぎるクオリティです。ここらへんは、パシフィックリムに何を期待するか? によるでしょう。


■良かった点(1) マコが死ぬ


前作でジプシー・デンジャーのパイロットを務めた森マコが死亡します。
本作のマコは新主人公・ジェイクの義理の姉という位置づけ。慕っていた姉が死ぬというのは、ジェイクに深い傷跡を残し、彼の行動を変えていきます。

死ぬ流れも在庫処理的なアッサリ演出ではなく、

・正体不明のイェーガー『オブシディアン・フューリー』襲来。
突如として海中から現れ、無言のままに破壊活動を繰り広げるその姿は、まさしく怪獣そのもの。

・防衛隊に復帰したばかりという事もあり、オブシディアンに圧倒される主人公機(ジプシー・アベンジャー)。健闘するもギリギリでマコを助ける事は出来ず、ヘリが墜落。マコが目の前で死亡。

・この事件を切っ掛けに、これまで任務に対して真剣に向き合ってこなかった主人公・ジェイクは変わっていく。マコの残したメッセージを元に話が進み、オブシディアンの正体に迫っていく……

という流れで、『前作の主人公を殺すならこれくらいやらないとな!』という監督の意気込みを感じました。

正直言って、『アップライジング』最初の20分くらいはかなり不安というか、期待していたのと違うな……という印象が拭えなかったのですが、このオブシディアンフューリー戦&マコの死亡によって『これは、前作とは方向性は違うけど良い映画だぞ!』と思えるようになりました。
それくらい、マコを殺すというのは素晴らしい判断・良い演出だったと思うのです。

■なぜ『マコを殺す=良い』なのか?
キャラクターには『物語力』があり、その物語力が話を盛り上げます。

例えば天空の城ラピュタ。
ラピュタを捜していた少年・パズーは、ラピュタに縁のあるシータとともに旅をして、最後にはラピュタを見つけ、再び地上へ戻ってくるわけです。

ラピュタはパズーとシータが地上に戻ってきてEDを迎えるわけですが、もしラピュタに続編があったら、パズーはどうなるのでしょう。
少なくとも、『ラピュタを探す』という目的はもう達成しているわけですから、パズーには新たな目的が必要になりますよね。

彼の人生の目的は一段落してしまったのですから、次の目的は『シータと一緒に幸せに暮らす』……といった、ラピュタ捜しと比べてはるかにスケールの小さいものになるかもしれません。
これでは話も盛り上げにくい。『ラピュタ』のエンディングでパズーの話は綺麗に完結しており、彼の物語力は尽きているのです。
そんな彼をラピュタの続編に出せば、色々と作劇上の弊害が出てくるでしょう。

パシフィックリムに話を戻すと、マコも同じです。
『アップライジング』のマコはかつて世界を救った英雄として防衛隊の幹部になっており、特にパイロットとして活躍するわけではありません。重要な決断を迫られる立場ではありますが、前作と比べてしまうとスケールはどうしても落ちる。
言ってしまえば、彼女の物語力はほぼ尽きているのです。

そんな、物語力の尽きたキャラクターを使って話を盛り上げるにはどうすればいいのか……。
どうもこうもなく、殺してしまえばいいわけですね。

なにせ前作の主人公です。これまで積み上げてきた思い入れがあり、過去の活躍があります。『アップライジング』を観に来た人の中には、マコやローリーが再び活躍する姿を楽しみにしていた人だって居る事でしょう。
マコの物語力は尽きた、と言いましたが、前作で積み上げてきたものがある以上、マコはまだまだ『使える』キャラクターだったはずなのです。

それを、あえて殺す!

前作を観た人にはショックを与えられますし、作中人物ももちろんショックを受けます。
そしてメタ的に言えば、物語力が尽きてしまったキャラクターを永久に排除することができる。一石二鳥どころか一石三鳥の策なのです。
僕が『おお、ここでマコを殺すのか!これは良い映画だな!』と思ったのは、まさにその部分ですね。主人公にモチベを与え、物語を動かし、観客に衝撃を与える……実にナイスな手だと思います。

もちろん、「殺すくらいなら出すなよ!」だとか、「新主人公なんか要らないよ! 前作と同じコンビでいいじゃん!」みたいな声もあるはず。
ここも『アップライジング』が賛否両論なポイントなのかな、と思いますね。

■良かった点(2) オブシディアン・フューリー


オブシディアン・フューリーがかっこいい。
オブシディアンと戦うジプシーがかっこいい。
これに尽きます。

前作・パシフィックリムでしばしば言われていた事は、「減点式なら50点くらいの作品だが、加点式なら出撃シーンで1億点・香港戦で2億点プラスなので最終的に3億点」というものでした。
『アップライジング』もこれと同じですね。気になる点は色々あるが、オブシディアンフューリー戦が3億点くらいのかっこよさなので最終評価は3億点……といった感じ。

とにかく格好良いのです。正体不明の漆黒のイェーガー(強い)という時点でオトコノコ魂が大盛り上がりなのですが、そのメカ・アクションのかっこいいことかっこいいこと。

作中のオブシディアン戦は二つ。
ひとつはシドニー。突如海中から出てきたオブシディアンに強襲され、ジプシーが健闘するもマコが死んでしまうわけですが、こちらはシドニーということで純然たる市街地戦になります。

前作『パシフィック・リム』は、戦闘シーンがどれも夜間だったり海底だったりして動きがわかりにくいという明確な欠点がありました。
今回は真っ昼間からの市街地戦なので、そこの欠点を克服してきたなーという印象を受けますね。

そして二回目はアラスカ。マコが死ぬ直前に残したメッセージを頼りに廃棄されたイェーガー関連施設に赴いたところで、またもオブシディアンの襲撃。
こちらも吹雪の中での戦闘なのですが、画面は比較的明るく、何もない雪原でスピーディに動くイェーガー二体のアクションが非常にかっこいいです。

『アップライジング』はラストバトルも日中の東京ですし、暗い場所での戦闘を徹底して排除してますね。
薄暗い海の中で巨大なイェーガーが動くのは、あれはあれで重量感があってよかったのですが、明るいなら明るいで純粋に動きがわかりやすいので、これもまた良いものです。

また、オブシディアンは両腕にジプシーと同じチェーンソードを装備しているのですが、これも『闇落ちライバル機』っぽくて最高にGoodですね!
ジプシー・アベンジャーが片腕のチェーンソードを構えると、オブシディアン・フューリーも両腕のチェーンソードを展開するんですが、その瞬間の「おいおいマジかよ」感ときたら!
主人公・ジェイクが思わず『……おいパクリかよ!』と言ってしまうのも頷けます。

そんな、圧倒的に強く、恐ろしく、正体不明なオブシディアン・フューリーを、主人公コンビが抜群のコンビネーションで倒す!
人によっては、このアラスカ戦こそ(ラストバトル以上の)『アップライジング』最大の見せ場だと思うかもしれません。それくらいの盛り上がりがあります。

逆に言うと、オブシディアンが目立ちすぎていて後半出てくる怪獣たちの影はかなり薄いです。これが『アップライジング』の明確な欠点にもつながっているのではないかな、と思います。

さて。じゃあ『アップライジング』のダメなところは何なのか?
これについては、次の記事で書くとしましょう(書くのに疲れた)。

それではまた。駆け出しラノベ作家・クオンタムでした。

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